お人好しでは無いので
やばいと分かってて助ける訳無いです。
「力を貸す?冗談を言わないでください。国を傾ける片棒なんて担ぐ気はありません」
マリアーナの赤紫に輝く瞳が真っ直ぐ、床に押し付けられている男を見ている。
「お前は我輩の下僕に……」
「5つのうち3つは解きましたが、残りは放置してあります」
キュビックが叫ぼうとしたが、指を3本立てたマリアーナの言葉に青褪めた。
「なんの話かな?」
ウィリアム陛下がゆっくりと壇上から降り、マリアーナに説明を求めた。
「魔法陣は、基本である五角形の星を描かなければ、如何なる強力な魔法陣も発動しません」
マリアーナが指先で簡単な五芒星を描くと、小さな光が灯った。
「この男は私に5人の人間に掛けた精神干渉魔法を解除させ、その反動を使い私を奴隷にしようとしていました」
魔術返しを使った呪詛の一つだ。
「3人の干渉魔法は解除しましたが、後の2人は放置してあります」
マリアーナの言葉にユリアスがはっ、と息を呑む。
「1人の女性と2人の男性はこれからも国の為になる人達ですが、残りの2人に関しては私では判断出来ません」
マリアーナは判断出来ない、と言ったが既にその2人は、マリアーナの知らないところでクリスタルの手のものによって監視されている。
1人は学園でマリアーナが相手にしなかった伯爵令嬢。
残りの1人はマリアーナの元婚約者。
どちらも干渉魔法の所為で攻撃的になっているとは言えないほど、マリアーナに対して敵愾心を持っていた。
だからマリアーナは初めは見過ごし、気が付いた後は放置していた。
わざわざ精神干渉魔法を解いてやる程お人好しでは無い。
「私が精神干渉魔法を解除した後、証拠隠滅の為、媒体となった方達の殺害も狙っていた様ですが」
フローラさんはラリマー家で保護されて居るし、タガー子爵令息とニクラスさんは第二騎士団長のジェイド家が身辺護衛に動いています。
そして、媒体となった事は魔術院の方で既に確認済みです。
まだまだ罪はありそうですが、これだけでも一生牢獄生活は決定ですよ。
次はちょっと残酷なシーンなので、苦手な方は飛ばして下さい。




