悪役っぽいです。
ちょっと悪役っぽいです。
「ジルコン公爵令息」
「気が付いている。数が多いな」
武官では無いユリアス様を巻き込んでしまったのが申し訳ないですが、これは不可抗力です。
「タガー子爵令息。破落戸達に囲まれました」
「なんなんだ?」
本当に、なんなんでしょうね。私も知りたいです。
「殺さないで捕まえて下さい」
「ひっ」
騎士団に入団したのに、怯えないで下さい。
「騎士団に入団して、その覚悟なしに剣を握るな。戦場は訓練場では無い」
文官のユリアス様に武官の貴方が説教されてどうします。
ですが、ユリアス様はほぼ丸腰ですね。
「ジルコン公爵令息。どの剣なら使えそうですか?」
寂れた建物から現れ、私達を囲む破落戸達に目を向けると、ユリアス様が
「あの大柄の奴のが使えそうだ」
と、答えてくれました。
流石、剣聖と呼ばれたユーリファス様の子孫です。文官なのに剣が使えるようで助かります。
「お、俺が囮になるからガーネット子爵令嬢達は……」
唯一剣を持っているハモンドが腰の剣を抜いた。
「数が多いので、その策は無理です。時間稼ぎをして救援を待ちます」
タガー子爵令息のなけなしの勇気、生かして踏ん張りましょう。
「こんな街外れになんか警備の巡回は来ないぞ」
ユリアス様。来ないなら呼べばいいのです。
「救援弾を撃ちます」
「そんな高価なもの、俺、持ってないよ」
タガー子爵令息がアワアワしてますが、誰が騎士団の備品の、と言いました?
髪に戻していた水晶の簪を抜き、上空に向け救援弾を放った。
当然、破落戸達がざわついてますが、打ったらこっちの勝ちです。
「えっと、あの大柄の人の剣でしたっけ?」
「……そうだ」
ユリアスが一瞬眉を顰めたが、マリアーナの問いに頷いた。
囲まれているとはいえ、距離があるのに、とユリアスは思っていたが、マリアーナは手にした水晶の簪をヒュン、と振り下ろした。
水晶の簪から白い稲妻が走り、ニヤついている大柄の男が担いでいた剣に絡み付くとあっさり奪い取り、ユリアスの手に剣が渡った。
「マリアーナ!」
思わずユリアスがマリアーナの名前を呼び捨てにしていたが、マリアーナは視線を外している。
「後できっちり説明しろよ」
ユリアスは奪い取った剣を構えながら、マリアーナに釘を刺す。
「……はい」
剣を奪われた男が真っ赤な顔で何かを喚いているが、格の違いを見せ付けられ破落戸達の腰が引けている。
それはそうでしょうね。
実力がある騎士だけが使える、妖精が鍛えた剣、イーリスほどでは無いですが水晶鞭なんてレアな武器を使う相手とまともに戦いたく無いはずです。
「すごい」
ハモンドが目をキラキラさせてマリアーナを凝視している。
「ジルコン公爵令息、右側をお任せします」
「右側?なるほど、其方は建物がないな」
腰が引けた破落戸達の攻撃なんてあっさり駆逐出来ますが、首謀者を確定するには逮捕しないと、取り調べができません。
さっさと駆逐します。
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