暇なんですか?
忙しい部署の筈なのに。
王宮で仕事をしていた私に、また呼び出しの手紙です。
最近、私を呼び出す事が攻略対象者達で流行っているのでしょうか?
少々面倒ですが、アイテムの影響や精神干渉魔法の事が聞ければラッキーです。
今回の相手はハモンド・タガー子爵令息ですね。
確か、学園を卒業してから騎士団へ見習いとして入団された筈です。
騎士団……。あそこもおいそれと近づくのは不味いのですが。
まぁ、呼び出された場所は騎士団の関係箇所では無いので、大丈夫かな。
呼び出された場所に向かおうと廊下を小走りで歩いていると
「おい、何処に行くんだ?」
ユリアス様がもの凄い目で睨んでます。
誤魔化しは……。無理ですね。
「ハモンド・タガー子爵令息が会いたい、と」
「そんな奴、会う必要なんか無いだろ」
必要は無いですが、アイテムの影響や精神干渉魔法の事が聞ければラッキーですよ、多分。
「無いですが」
「どうせ君の事だ、アイテムの影響や精神干渉魔法の事が聞ければラッキー、と思ってんだろ」
鋭いな。あれだけ仲が悪かったのに、私の考えを正確に把握してますね。
「はい」
「まったく。君みたいな奴を無鉄砲と言うんだ」
心外です。ちゃんと勝算はあります。
無駄な事はしたく無いですから。
「俺も行く」
どうしてそうなるんですか?
仕事はどうしました?そんなに宰相補佐って暇なんですか。
断る事も出来ないまま、指定された場所に向かった。
街外れの寂れた建物が疎に点在している様な広間にハモンド・タガーは居た。
「お前、何様のつもりで俺を呼び出した」
はい?呼び出したのはそちらでは?
口から泡を飛ばして叫ぶハモンドにマリアーナは呆れていたが、ユリアスはこめかみをひくつかせ、マリアーナの前に出た。
「呼び出したのはそちらでは?」
「なんで俺が!」
これって……。
「解除」
精神干渉魔法解除の魔法陣を水晶の簪で描くと発動させた。
「えっ?俺……なんで、此処に?」
「やはりそうでしたか。タガー子爵令息、貴方は精神干渉魔法に掛かっていたようです」
マリアーナの言葉に、ハモンドは呆然とした。
「精神干渉魔法……」
「頭の芯の痺れは取れましたか?」
「えっ、如何してそれを。ほ、本当に俺は……」
「はい。同じ様に攻撃的になっていた方を知ってますので、もしかしたら、と思いました」
フローラさんの時に使った魔法陣ですから、同じ術者が掛けていたと見て正解でしょう。
精神干渉魔法が解けたハモンドがオロオロしながらマリアーナ達に目を向けた。
「俺は……。俺はなんて事を。タガー家の恩人であるクリスタル子爵夫人の縁者である貴女に……」
おや?お祖母様に恩が?初めて聞きました。
それよりも……。
ブックマークを付けてくださる方に感謝。
明日も頑張ります。




