屑籠へどうぞ。
クズは屑籠へ
錯乱して暴れているデブリ男爵令嬢を衛兵が連れて行くのを冷ややかに見ていたルシルが、人混みに紛れコソコソ逃げようとする男の姿に目をすがめた。
「何処に行くつもりだ」
ルシル達が会場から出ようとしていたトーマスの肩を掴み、声を掛けると、トーマスがビクッと震えた。
「お前、自分もアイテムに操られたから悪くない、とでも言うつもりか?」
肩を掴まれたトーマスは、顔を引き攣らせ怯えた目でルシルを見るが、すぐに視線を逸らし俯いた。
「今まで努力もしないくせして嫉妬から蔑み、マリを傷付けてきたのに自分は悪くないから許せとでも言うつもりか?」
ミカリスがクスクス笑いながらトーマスの前に立ち、俯いた顔を掴みその目を覗き込んだ。
「あの子の優しさにつけ込もうとしてるんだよ。自分も被害者だから助けろって」
ラファエルが楽しげに、トーマスのピンクのクラバットをヒラヒラさせる。
「こんなモン着けておいて。マリとの婚約は既に解消されている。お前はあの女狐と一緒に社交界から追放される運命なんだよ」
ルシルの言葉に、トーマスがビクッと震えた。
「ぼ、僕は……僕はマリアーナを……」
泣きそうな顔で反論しようとしているが
「大切にしてた、なんて嘘つくなよ」
「そうだ。私達はお前がマリを野暮ったい石のような女だって言ってるの知ってんだ」
ラファエルとミカリスがクスクス笑いながらトーマスを睨む。
「ただ眩し過ぎたんだ。何でも1人で出来てしまうあいつが」
「あいつ?そう言ってる時点でお前はマリを自分の下に抑え付けたがっているのが分かるぞ」
「眩し過ぎた?当然だよね。勉強もしない、レベルを上げる鍛錬もしない奴から見れば、努力を続けるマリが眩しいのは当然だ」
ミカリスやラファエルの辛辣な言葉に言い返せなくなったトーマスは、ガタガタ震え、膝から崩れそうになるのを必死に耐えていた。
「本当に、本当に眩し過ぎたんだ。大切にしたかったのに、優しくする方法が分からなかっただけだ」
トーマスは震えながらも自分の気持ちを初めて口にした。
魔力のレベルは勿論、その量も圧倒的でありながら努力家のマリアーナと言う存在がすご過ぎて、愛よりも自尊心を守る事を優先してしまった。
「はっ、寝言は寝てる時に言えよ。マリの信頼を踏み躙ってたくせに」
だが、ルシル達はトーマスの思いを鼻で笑う。
「クズが。二度とマリに近づくな。マリの視界を彷徨いたら容赦はしない」
ラリマー公爵家嫡男のミカリスの言葉に、トーマスはとうとう膝から崩れ落ちてしまった。
アクセス数が休みだと増えるんだ。




