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「なろうラジオ大賞3」のための物語

密室ならざる殺人 ―迷宮探偵・驚天動地郞のミラクル推理―

作者: ヤギマルケイト

「──つまりこの部屋は、密室なんかじゃなかった、ということですよ」

 探偵は高らかに言い放った。

 探偵・超次元ヶ原(ちょうじげんがはら)驚天動地郞(きょうてんどうちろう)。常人の想像を遥かに超えた超絶推理で謎に挑む。

 誰が呼んだか、その名も“迷宮探偵”。

「密室じゃない?そんなバカな」

 地下5階の小さな部屋。重く閉ざされた扉を除いて、出入口はひとつもない。

 男は、この部屋で殺されていた。

「ところが違うのです。ある条件を満たした者にとって、これは密室でも何でもなくなってしまう」

「条件?」

「例えば真穂塚まほづかさん。あなた──」

 探偵は男を指さした。

「魔法使いでしょう?」

「なっ」

 ぎょっとする男。

「何を根拠にそんな……」

「とぼけても無駄です。その真っ黒なローブに三角帽。何やら宝石のついた怪しげな杖に指輪に魔方陣のような首飾り。一目見た時から、僕にはピンときていたのです」

「くっ……」

 真穂塚はあわてて杖を放り捨てるがもはや手遅れだ。

「あなたには鍵なんて必要なかった」

「じゃあ、こいつが犯人なのか」

「いいえ江洲波(えすなみ)さん。これはあくまで可能性の話です。だって」

 探偵は江洲波を指さす。

「あなただって、超能力者ですからね」

「な、何故それに!」

「簡単なことです。そのやたら逆立った髪に全身からゆらゆら出ているオーラみたいな変なもの。そして何かと光る目。僕に気づかれないとでも?」

「ソレデハ……」

「あなたもですよ?宇中(うなか)さん。そう、あなたは宇宙人だ」

「ナ、ナンダト!」

「その頭から生えた触手に8本ある腕。何よりそのしゃべり方。僕の目はごまかせませんよ」

 正体を鮮やかに見抜かれ、絶句する男たち。探偵は残る二人に目を向けた。

「というわけで田中さんに山田さん。関係のないお二人はもうお帰りになって結構です。あぁ念のため、捜査一課の本骨(ほんこつ)警部に連絡を」

「ま、待て探偵。そいつらはいいのか?そいつらだって──」

「ええ分かっています。田中も山田も偽名でしょう。山田さんに至っては明らかに人間じゃない。多分ロボットでしょう」

「だったら」

「ですが──」

 不敵に微笑む。

「ロボットには、密室を破る能力などないんですよ」

 改めて二人を促す探偵。

 山田は頷くと、腹部についたポケットから何やら竹トンボのようなものを取り出し、頭に乗せると田中と共に部屋から出て行った。

「問題は、誰が犯人なのか」

 探偵は残る一同を見回した。

「さて──」



 迷宮探偵・超次元ヶ原驚天動地郞。

 今日もまた、ひとつの謎が迷宮の奥底へと消えていく。



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