【主婦と異世界】
【主婦と異世界】
気が付くと私は道端に立っていた。
「ここはどこだろう?家に帰らないと!・・・あ!そうだテント!」
買い物の帰り道いつものように家に帰る道を歩いていると目の前に紫のテントがあり、少し気になり中を覗いたことを思い出した。
「テントを見た後の記憶がなくなっている・・これは夢?」
頬をつねってみた。
「痛っ!夢じゃない現実!?家族のもとに帰らないと!」
そう思いあたりを見渡してみたが、辺りは知らない場所
「ここはどこ?誰かいないの?」
近くをうろうろと歩いて人を探します。
丁度その時一人の声が聞こえてきた。
「いやー誰か助けて~!! ・・・たすけてぇ~・・・ヒッ!!」
声のする方向へ走り出すと、すぐに倒れている馬車を見つけた。
声の主を探して馬車に近づくと・・
「おとなしくしやがれ!!ここで泣き喚いたって誰も来ないぜ!!あんたは奴隷なんだからな!」
「だれ・・か・・・たす・・て・・・」
熊みたいな体格で悪い顔の男が少女の腕を掴み乱暴に叩いて怒鳴っていた。
私は、いてもたってもいられず、男に殴りかかった。
すると男は馬車に背中からぶつかり気を失った。
「私ってこんなに力あったかな?さっき走ったときも早かったし・・」
そう言いながら泣いている少女に近づいた。
「大丈夫?痛くない?」
「ふぇ!?だ・・大丈夫です。助かりました・・」
「少し質問なんだけどいい?」
「・・はい。何ですか?」
「さっきの男が奴隷って言ってたんだけど、あなたはなぜこの男と一緒にいたの?」
「私はお母さんからのお遣いで市場に向かおうと歩いていた時にこの男につかまって気が付いたら馬車の中に居ました。」
「・・そうなの。こんな小さい子を誘拐するなんて、酷い!!」
私が少女と話していると、
「っいってーな!!」
さっきの男が意識を取り戻した。
「起きた!ひとまず逃げましょう!!」
「私も連れて行ってくれるの?」
「とりあえず一緒に行くわよ!」
私は少女を抱っこし、男から逃げるために全力で走った。
しばらくして気が付くと山の方へ走っていて、林の中に入った。
「ここまでくれば大丈夫かな?」
「お姉さんの名前はなんて言うの?私はアイラだよ。」
「そういえば名乗ってなかったね。大橋理子です。」
「オオハシ・・リコ?」
「大橋が家名で理子が名前だよ。」
「そうなんだぁ。リコさんと呼んでいい?」
「いいよ。これからしばらくよろしくね。」
「うん」
少女は安心したのか笑顔になった。
林の中をしばらく歩いていると、家らしき建物が見えてきた。
さらに近づくと人間より一回り小さい人たちが生活をしていた。
「人がいる。ここはどこなんだろう?」
「ドワーフ?」
「ドワーフ?って聞いたことないけど何か知っているの?」
「モノを作るのに懸けた人種だよ。」
「そうなんだ。話できるかな?」
そう言ってドワーフの人に近づいた。
「すいません。迷い込んでここまで来たんですが、話を聞いてもいいですか?」
「人間か・・物騒なもの持っていないだろうな?」
声をかけると一人の男性ドワーフが怖い顔で近づいてきて、下から上にかけて見られた。
アイラは怖くなり私の後ろに隠れた。
「私たちは何も持っていないし、被害を加えるつもりはありません。少し話をさせてください。」
「ふ~ん。ここは、わしらドワーフが暮らすハモシ村だ。人間は居ないぞ。」
「そうなんですね。私は大橋理子と言います。気が付いたらこの世界に居ました。多分ですが違う世界から来たと思います。」
「・・・私は、アイラ・・リコさんに助けてもらった。」
私が自己紹介した後、後ろに隠れていたアイラも小声で話した。
「助けてもらった?」
「アイラちゃんは奴隷になりかけていたんです。男に襲われているところを助けてここまで走って逃げてきました。」
「ここの近くにゃぁ人の住む場所なんてないぜ・・」
「そうなんですか?走りすぎたかな?ごめんね。アイラちゃん」
「いいえ、大丈夫です。」
近くに人の住む村が無いことを聞き、アイラと一緒に笑っていると。
「村長に話してくる。待っとれ。」
話してくれたドワーフの人が村の方へ戻っていく。
そしてすぐに別のドワーフを連れてきた。
「わしがこの村の村長のダグじゃよ。お主ら本当にこの村に被害を加えたりせんやろな?」
「しません。」
「・・しません。」
「よろしい。しばらくこの村でゆっくり過ごすとよい。」
何とか許可をもらい村にお邪魔させてもらうことになった。
「住んでもらう場所は・・確か一つ空き家があったはずじゃよ。そこをつかうがよい。」
空き家を案内してもらい中に入った。
少し埃があったが、テーブルやベッドなど生活に欠かせないものはすべてそろってあった。
「少し綺麗にすると住めそうないいところだね。」
ドワーフに合わせた家だが、人間の女性には丁度良い大きさだった。
アイラとしばらくこの村で過ごした。村のドワーフたちとも仲良くなることが出来た。
ドワーフは物創りに秀でており、沢山のことを教わりながら楽しく過ごしている。
今日は素材集めのため近くの山まで行く日だ。
私とアイラとドワーフの人4人含めた6人で行く。
村を出てしばらく行くと山があり、山の麓にある湖にたどり着いた。
「ここの水は良いんだよ。神に感謝して使わせてもらっているんだよ。」
ドワーフの1人がそう言って水を持ってきた筒の中に入れた。
「ここの湖の近くには沢山の素材があり、定期的に取りに来ている。神への感謝をして素材をもらうんだよ。」
もう一人のドワーフの人が教えてくれました。
私とアイラはドワーフの人達に協力して素材を集めた。
その後、少し休憩していると、馬車の走る音が聞こえてきた。
「ここら辺は人が来ないはずなんだが・・」
ドワーフの人が不思議そうな顔をしていた。
「私が様子を見に行ってきます。」
「気を付けて行くんじゃよ。」
「アイラは皆と一緒に居てね。」
「分かった。リコさん気を付けてね。」
皆と別れ、馬車の音がする方へ走りました。
馬車が見えてくると、黒いフードを被った人が馬車を走らせていました。
近づいてみると、何やらとても焦っているようです。
とりあえず気になったので馬車の前まで行き止めて見ることにしました。
「止まってください。」
ヒヒィィン!と馬が鳴き馬車が止まりました。
「何をするんだ。そこの女!」
「ここら辺に人が来るのは珍しいと聞きました。あなたはどこから来たんですか?」
「ハァ?別にどこだっていいじゃねーか!俺は頼まれてやってるだけなんだからさ!」
「なるほど、誰に頼まれたか知りませんが、これからどこに向かうのです?」
「それは言えねぇ・・」
「馬車の中に何が入っているんですか?」
「この中にはなぁ。傷つけてはならないものが入っているんだよ。だから急いで届けないといけないんだ!そこをどけ!」
そう言って男は馬車から降り、私に向かって殴りかかってきた。
私はそれをひらりとかわし、男の顔面を殴った。すると男は近くの木まで飛んでいき気絶した。
「やっぱり私の力凄いなぁ。これが馬鹿力とか言うのかなぁ?」
男が気絶しているうちに馬車の中を確認した。
そこにいたのは、緑の髪で白い服を着た少女が縄で縛られて入っていました。
私はすぐに縄を解き、抱っこしてアイラ達の居る場所まで帰った。
「帰ってきたわよ。」
「リコさんお帰りなさい。その女の子は誰ですか?」
リコはすぐに寄って来てくれた。
「馬車の中で縄に縛られて寝ていたの。」
「誘拐か、奴隷かだな。」
ドワーフたちも近くに来てくれた。
「その少女が起きるまではここでゆっくりしようか。ここの湖は悪い奴には見えないようになっているから安心したまえ。」
しばらく少女を寝かせていると意識を取り戻した。
「・・・ここはどこですか?」
「気が付いたのね。ここはドワーフの村近くの湖よ。ここが安全って教えてもらったから大丈夫よ。」
「そうですか・・助けていただきありがとうございました。あなたの名前は?」
「私は大橋理子よ。よろしくね。この子はアイラよ。」
「そうですか。リコさん助けていただきありがとうございました。アイラさんも心配してくれてありがとう。」
そう言って2人に頭を下げた。
その後湖のところまで行き、中に入っていった。腰までの高さまで入ると止まった。
次の瞬間、緑色の髪の色が黄緑色に光り輝き着ている服も綺麗な白になった。
「っ!!!精霊様でしたか!!」
ドワーフたちは驚きのあまり、祈りだした。
私たちは少女のことをじっと見て綺麗さのあまり動けずにいた。
少女から出ていた光が落ち着くと、私たちの方へ戻ってきた。
「助けていただきありがとうございました。改めて、私は精霊族のリーフェです。」
「精霊族?初めて聞きました。どういった人達なんですか?」
「そうですね。この世界には魔力があり、人間は魔法を使います。ですが、人間は適正に合わせて精霊の力を借り魔法を使っているのです。精霊族は、神様が作り出した種族で、私たち自身が世界を変えるぐらいの魔法を使うことが出来ます。なので人間は私たちを狙います。さっきもたまたま私が捕まってしまって、助けていただき本当にありがとうございました。普段私たちは、人が来ない場所で過ごしています。ですが、精霊の流れが悪い場合は、その場所に行き様子を見たりして、世界の安定を保っています。それが私たち精霊族の役目なのです。」
「なるほど、よくわかりましたよ。少し様子を見に行っているときに見つかり捕まったんですね。」
「・・・はい。」
「無事で何よりです。」
「・・・お礼と言っては何ですが・・・リコさんを元の世界に戻すこともできますが、戻りますか?」
「・・・はい? 家族のもとに戻れるんですか?もしかして魔法で?」
「そうです。」
「なるほど、戻してもらうのはありがたいですが、アイラちゃんを先に家族のもとに戻してあげれる?」
「大丈夫ですよ。分かりました。アイラさんを戻してからリコさんを戻すということで。」
リーフェを助けたことにより、家族のもとへ帰ることが出来るようになった。
「ドワーフの人にも心配かけたみたいなので、私から少しながら祝福を掛けさせてもらいますね。」
「・・・わしらにも力を使って下さるのですか?」
それを聞いたドワーフの人達は感動のあまり泣き出した。
「精霊族の力って本当に凄いみたいね。」
「凄いですよ。なので、小さいときに使い方をしっかり学ぶのです。」
「あれ?リーフェも小さいじゃないですか?」
「小さいとは失礼ですね。ですが、精霊族ではまだ若い方なので子供に見えるかもしれませんね。あなたよりは年上だと思いますよ。うふふ。」
「そうなんですね。すいません。」
うっかり、リーフェの地雷らしきものを踏んでしまったので、すぐに謝った。
「では、順番に魔法を使いますね。アイラさんいいですか?」
「うん!ありがとうリーフェお姉ちゃん!」
リーフェに魔法をかけてもらい光に包まれながら笑顔で姿が消えた。
「無事送りましたよ。次はリコさんですね。」
「お願いします。」
リーフェに魔法をかけてもらった。自分が光に包まれいるという不思議な感覚と共に目の前の景色が変わった。
着いた場所は、スーパーから家までの帰り道、紫テントを見つけた場所だった。買い物していた荷物は、手の中にあった。
「夢でも見ていたのかな?」
私はいつものように家に帰った。
帰ると子供たちがテレビゲームをして遊んでいるいつもの風景がそこにあった。
買い物の荷物を片付けていると、カバンの奥にリーフェの髪の色と同じ黄緑色をした蝶のキーホルダーが入っていた。それを手に取ると異世界での思い出が頭の中に流れた。
「リーフェありがとう。家族のもとに戻してくれて。アイラありがとう。沢山元気をもらえたよ。」
私は蝶のキーホルダーをカバンに付けて、いつものように晩御飯の準備を始めた。
その後、蝶が一瞬光ったが誰も気づくことはなかった。
更新が遅くてすいません。
来月も1話しか更新できないと思います。