【女子高生と異世界】
【女子高生と異世界】
「ここはどこなの~? 誰かいないの?」
気が付くと私、森川亜久里は森の中にいた。
日々の学校生活に疲れて、ストレスの発散で友達と遊んだ帰りにはぐれ、友達を探しながら歩いていた。
しばらく探したが、友達の姿は見えず会うことが出来なかった。
もう家に帰ろうとしたときに紫の怪しいテントが目に入った。
私はテントの前に居たことは覚えている。
そして気が付いたらこの森の中にいたというわけだ。
「分けわからん・・・」
はやく元の場所に戻りたいなぁ。
そう思いながら森の中をさまよっていると近くの木々が、ガサガサと揺れた。
「キャーッ何! 虫!? 虫は無理だよぉ・・・」
私は怖くなりその場に座り込んだ。
「誰かいるの?」
すると揺れた木々の間から綺麗な声が聞こえてきて、揺らしていた本人が出てきた。
「あらぁ怖がらせてしまったみたいね。ごめんなさいね。」
優しく微笑みながら謝ってくれていたが、その綺麗さに見惚れてしまった。
「大丈夫かしら?」
「だ、大丈夫です。とても美しい人だなと思いまして」
「あらぁ。ありがとう。私は若くはないのよ。300年ぐらい生きているから」
「さ、300年!?」
「私たちエルフという種族でとても長生きなのよ。」
「そうなんですね。」
「ところでどうしてこの森にいたのかしら?」
「私も分からないんです。あ、申し遅れました森川亜久里と言います。亜久里が名前です。気が付いたらここにいたので・・・」
私はその人にどうやってここに来たのか聞かれ、素直にすべて話してしまった。すると、優しく話を聞いてくれて、エルフのことについて教えてもらった。人間をあまり好ましく思っていないこと、精霊の力を使って魔法を使い生活していることを聞き、エルフ村のことを聞いて、注意事項などを教えてもらった。そのあと彼女についても教えてもらった。彼女の名前はピュリエで、300年以上生きているが、エルフの中では若い方だと教えてくれた。
話をしている間にエルフの村の前までやってきた。
「ちょっと待っててね。今村長さんのところに行ってくるから。」
そういってピュリエは村の中に入っていった。
しばらくして、少し年を取った男のエルフがやってきた。
「この方が村長さんですよ。」
「わしは、このエルフ村の村長をしている。そなたは違う世界から来たと聞いたが、そうじゃのぅ。間違ってはいないみたいじゃ。ピュリエからエルフについて聞いていると思うが、くれぐれも悪意を持たぬようにな。エルフは敏感なんじゃそれと優しく仲良くしてやっておくれ。アグリを歓迎しましょう。ピュリエ、くれぐれもしっかり世話をするんじゃぞ。」
「分かりました。村長さん。ではアグリ、私の家に来てちょうだい。」
村長さんから許可をもらいエルフの村に入った。入った途端見たこともない植物と家でとても神秘的な雰囲気を出していた。それは異世界に来たという実感がわくほど現実の世界と違っていたのだ。
家の中の家具も見たことないもので、布団もとても気持ち良かった。
「しばらくこの家で生活してもいいからね。何かしたいことがあれば協力するから気軽に言ってね。」
こうしてしばらくピュリエさんの家で一緒に暮らすことになった。
なれない環境で戸惑うことも多かったが、エルフ村の皆が優しく教えてくれ、思いのほか楽しく生活することができた。
エルフ村での生活が3か月過ぎたころの朝、急に村の皆がそわそわしだした。
なにが起きているのか分からなかったのでピュリエに聞いた。
「この村の結界が揺れたんだわ。外から人が近くの森に入ってきたみたい。」
「ピュリエが森に行くなら一緒に行ってもいい?」
「ええ、いいわよ。でも気を付けてね。何があるか分からないから」
そうして二人で出かける準備をし、エルフの森へ入った。
しばらく歩いていると、少年が一人倒れていた。
近づき体を見ると、ものすごく痩せており、打撲の跡が体中にあった。
「どうしたのかしら?とりあえず保護した方がよさそうね。この子の目が覚めたらいろいろ聞いてみることにしましょうか。」
ピュリエが少年を抱っこして、一緒に村へ戻りました。村の前には村長さんが待ち構えており、
「結界が触れたのはその少年が森へ入ったからか?」
「たぶんそうだと思うわ。ただ、この子あまりにも痩せていてかわいそうなのよ。」
「魂を少し見たが、その子は酷い生き方をしていたようだな。分かったその子が目覚めたらわしも話を聞きたいからのぅ、わしの家に来てくれ。それまでは少年を頼むぞ。」
村長から許可があり、家に帰ってきて、少年を布団に寝かせた。
しばらくすると少年が少し目を覚ました。
「・・? ここはどこですか?」
「あ、目が覚めた? 森で倒れていたけど大丈夫?栄養がある食べ物持ってくるから少し待ってて。」
私は少年が起きたことを確認した後、ピュリエのところへ行き栄養のあるご飯を頼んだ。
すぐに用意してもらい。一緒に少年のところに戻った。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます。」
少年は食べ始めてあっという間に完食した。
「ここはエルフの村です。君は森の中で倒れていたんだけど何があったのか教えてくれるかい?」
「はい、僕は人族のサチと言います。一応家は子爵なのですが、側室が産んだ子供みたいで父からは好かれていたみたいなのですが、義兄と義母から疎まれてしつけと称して叩かれたり、ご飯を抜かれたりして、使用人までもが敵に見えて居場所がなくなっていました。そのとき義母から妹が誕生したと聞き、家から出れるチャンスだと思って家出してきました。この森に迷い込んだのは逃げている最中何か光るものがある気がして森に入りました。そこからは記憶はありません。」
「なるほど、今まで辛い思いをしたのね。ところで聞いては良いのか分からなかったから聞くけど、あなたの母はどこにいるのか分かるかしら?」
「すいません。僕が産まれたときに亡くなったと聞いています。」
「なるほど辛い話をさせてごめんなさいね。元気になったら村長さんのところへ行くから同じ話をしてもらってもいいかしら、辛い思いをさせるのは分かっているのだけど、エルフは人間を警戒しているからね。理解してくれると嬉しいわ。」
「分かりました。ところで僕はお金を持っていません・・・」
「そんなの気にしなくていいのよ。元気になってくれたらそれで、出来れば元気になった後手伝いとかをしてくれたらうれしいなぁ。」
「ありがとうございます。精一杯手伝います。」
そうして2週間ぐらいでサチは元気になり村長のところへ行き、ピュリエに話したことをそのまま話した。
すると村長は優しい顔になり、「この村でゆっくりしていくとよい。ただ他のエルフに対しての接し方には気を付けるんじゃぞ。」と言ってくれた。
その後2年ほど3人はエルフの村で過ごした。過ごしている中でサチは「将来冒険者になりたい」と言い。私は、サチが暮らしていた場所の話を聞いたり、冒険者になるために鍛えたりしているサチを見ながら過ごした。
そんなある日、
「サチの母の居場所が分かったかもしれないわ。」
急に家の扉が開いたかと思うとピュリエが入ってきた。
「母上の居場所ですか?本当に?」
「ええ、まだ生きているわ。死んだってことは嘘よ。サチの話少し興味があったので探してみたの。」
「母上が生きている・・・良かったぁ~~~(涙)」
サチはピュリエに抱き着きながら泣きだした。
「まだ、泣くには早いわよ。どうする?会いに行く?」
「うっ・・っ・・会いに行きたいです。」
「私も会ってみたい。一緒に行ってもいい?」
「ええ、3人で行きましょ。では行く準備をしなくてはね。」
サチの母のもとへ行くと決まってからは早かった。すぐに長期旅行に行くための荷物を3人で協力して準備をした。
そして行くと決めてから2日後私たちは、エルフ村の出口に村長さんと一緒にいた。
「気を付けて行ってくるんじゃぞ。人間は悪い人が多いと聞くからほんとうに気をつけてな。そしてサチ、お主がこの村に来てくれたことは運命の導きに違いない。人間界でもし辛いことがあればまた来るがよい。じゃがエルフを裏切ったと思った時は容赦しないぞ。ピュリエとアグリも気を付けてな。」
村長は優しく3人を見送ってくれた。
「サチの母は冒険者ギルドで働いているみたいなの。だけど、サチが住んでいた国ではなく別のところなの。だけど安心して、その国は優しい人が多いっていう情報をもらったわ。だから安心していくわよ。」
「そうなんだぁ。人族の国って国によって全然違うんだぁ。私の居た世界と同じかぁ。」
「母上が安全な国にいると聞いて安心しました。案内よろしくお願いします。」
3人で仲良く話しながら3日間ぐらい歩き、途中中型モンスターが現れたが、サチが素早く退治してくれて、無事ファモロ国へたどり着いた。
門番へ入国のためのお金を払い中に入ると歩く人が全員優しそうな顔をしていた。
「確かサチのお母さんがいる場所は、王都だったと思うからあと2日間かかるわね。」
ピュリエは馬車を借りてきてくれて、馬車に乗り2日間かけて王都へ向かった。
王都へ入ると、さっき通ってきた場所よりも賑わっており人も多くいた。
「王都ってこんなに人がいるんだね。迷子になりそうだよ。」
「なら3人で手を繋いで歩いたらいいじゃないかしら。」
そういってピュリエはサチと私の手を握ってきて、しばらく手を繋いで冒険者ギルドを目指した。
しばらく歩くと大きな建物があり、その周りには冒険者らしき人たちが出入りしていた。
ギルドに入ると、見慣れない3人が入ってきたからか周りがざわついた。奥で酒を飲んでいたごつい男性が3人の前に現れた。
「てめーら何しに冒険者ギルドへ来た?」
「ひっ!」
サチはすぐピュリエの後ろに隠れた。
「サチってこの母親がここにいるって聞いてきたの。」
私は怖かったが、頑張って答えた。
「サチだってぇ?聞いてきてやるから待っとれ」
そういって男性はギルドの奥へ入っていった。
しばらくすると奥が騒がしくなり、先ほどの男性と一緒に一人の女性が出てきた。
「サチ?本当にサチなの?」
女性はサチの前に来て目線を合わせて尋ねた。
サチは緊張で答えられていない。するとピュリエが言った。
「あなたがサチのお母さまなのですか?」
「そうです。申し遅れました。サチの産みの母のサヤと申します。サチを産んでから父である子爵様に取り上げられ、領地に入るなと言われ近くにいては、心配で私が耐えられなかった為この国に来たのです。サチごめんなさいね。あなたに母として見てもらえるとは思っていないよ。ただもし一緒に暮らしてくれるのならあなたに罪滅ぼしをさせてください。」
そういってサチの前で頭を下げた。
「そうだったんですね。母上。僕は幼い頃より、母上が死んだといわれて生きてきました。なので生きていて嬉しいと思いました。僕のことを父上は可愛がってはくれていましたが、そのせいで父上以外の人から嫌がらせを受けて逃げてきました。母上のところはそんなことありませんか?僕も楽しく暮らせるところですか?母上と家族をやり直せますか?」
「ええ、絶対にあなたを不幸にしないと約束するわ。もう一度やり直しましょう。よろしくね。」
「はい母上!」
と言ってサチは笑顔で母上とハグをしました。
「本当の親子の絆は良いですね。」
私はこう言いながら、ピュリエと一緒にギルドを出て歩きながら自分の居た世界のことを考えていた。私も家族仲良く、友達もいた。皆と過ごすことがとても大好きで、大切な毎日だった。やっぱり元の世界へ戻りたいなぁと強く思った。その時!
体から白い光が出てきた!
「何?どうなるのこれ?」
「初めて見たわ。こんな現象」
「もしかして・・元の世界に戻れるのかな?」
「かもしれないわね。アグリ楽しいひと時をありがとうね。村の皆にも元の世界に戻ったことを伝えとくわ。」
「私の方こそ、この世界に来てピュリエに会ったおかげで様々なことが知れたし、成長した。感謝をしてもしたりないけど、あなた達この世界であった人たちのことは忘れないと誓う!本当にありがとう。さようなら。」
「私も忘れないわ。元気でね。アグリ」
こうして光と共にアグリは元の世界へ戻っていった。
気が付くとそこは自分の布団の上で朝を知らせる目覚まし時計の音で目が覚めた。
異世界での思い出は、夢かと思ったが、3人で過ごした思い出は確かに心の中にあった。
「今日も一日楽しく過ごそう!」
こうして玄関のドアを開け学校へと向かう。
「行ってきます!」
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白い光が消えて、アグリが異世界へ行ったあと、
「アグリが帰っていったのね。私も村へ戻り村長に報告した後、旅にでも出てみるかな?また異世界人が迷い込んでたりして・・・ウフフ楽しみだわ。」
こうして一人残ったピュリエは村へ戻り、しばらくしてから冒険者として旅立つのはまた別のお話です。