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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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神獣討伐 不穏な予感

 オウドの監視塔の会議室にはエウス、ルルク、ヨルムの三人の代表が集まって、情報の共有をしていた。そして、その彼らの後ろにはフォルテ、ナターシャの姿もあった。

 エウスはハルの代理としてレイドの代表として参加していた。レイドの人員は少数だったが、ガルナやビナといった強力な戦闘員がいるため、彼女らをまとめて指示を出す者が必要だった。


「さっき伝鳥が運んできた情報によりますと各砦で神獣がいち、に体、出て、各剣聖が神獣を討伐したその後は全く何の問題もないそうです」


 ルルクが送られてきた資料に目を通しながら言った。


「本当にそれだけか?」


 後ろにいたフォルテが尋ねた。


「今の状況は変わってると思うが、昨日起こったことはこれだけらしい」


 ルルクがフォルテに向かっていった。


「ということは、他の場所でもこっちと状況はあんまり変わらないってことですね?」


 エウスがルルクの見ている資料を横から見ながら言った。


「そう言うことになります、援軍を送らなくていいようです、なので明日の偵察も予定通り実行します」


「ルルクさん、空からの偵察だけじゃダメなのかい?」


 ヨルムが疑問に思っていることを口にした。


「ああ、そうでした、偵察の内容を言ってませんでしたね、今回の偵察の内容は霧の中の調査になります。フォルテに天性魔法を使ってもらって霧の中を探索してもらいます。みなさんには彼のサポートをして欲しいのです」


「なるほどな、確かに俺たちは霧の中に対して無知すぎるから、それはありだな」


 フォルテも納得した様子だった。


「ええ、そして、ハルさんが通ったあとなので、強力な魔獣が出るとは考えにくいのです。だから今が霧の中を偵察するには絶好の機会なんです」


 ルルクは地図の特別危険区域の範囲を指でなぞりながら言葉を続けた。


「ですが、霧に近づくので移動は使役魔獣を使います」


「そしたら、我々はまた、途中で待機ということですかな?」


 ヨルムがルルクに尋ねた。


「すみませんが、そうなります」


「いや、構わないんだが、我々も何か役に立ちたくてな…」


「いえ、バハム竜騎士団のみなさんは十分役に立ってくれてますよ」


「そうだといいんだがな…」


 ヨルムが悩ましそうに言った。

 会議室でそのように明日のことについて話していると。


 カンカンカンカン!


「!?」


 監視塔の鐘が何度も鳴り響き、会議室に緊張が走った。


 カンカンカンカン!


「警鐘だ…」


 ルルクが冷静に呟いた。

 すると会議室に一人のバハム竜騎士団の騎士が走って来た。


「お伝えします、特別危険区域のある、南の方角から魔獣の群れを確認しました、東西に広がってこちらに向かって来ています!」


「神獣の姿は?」


 ルルクはその騎士に一番重要なことを聞いた。魔獣と神獣で対処の仕方が変わって来るからだった。


「いえ、確認できませんでした!」


「本当ですか!?」


「はい、我々が確認した範囲では準中型などの個体は見当たりませんでした。しかし小型は群れに紛れている可能性もあるかもしれません」


「確かに小型は空からじゃ見つけずらい…」


 ルルクは少し悩んだがすぐに判断を下さなくてはならなかったので必要最低限の情報を聞き出すことにした。


「数はどれくらいですか?」


「数百といったところでしょうか、すみません、どうにも横に広がっているので全体の正確な数は把握できませんでした、ですが、ひとつの群れのまとまりは数十匹程度でした」


「そうか、よし、今から全員に指示を出します…」


 ルルクが全員に指示を出した。広がって向かってくる魔獣たちを狩るためにこちらも戦力を分散して対処するしかなかった。


 ナターシャと赤い翼竜が監視塔から東側の森を担当し、フォルテとヨルムは、西側の森を担当することになった。

エウスたちはエルガー騎士団と監視塔周辺の魔獣の討伐を任された。

そして、空からはバハム竜騎士団がサポートするという形で指示が出された。


 指示を出されたあと、会議室にいた全員が作戦を実行するため一斉に建物の外に出ると、監視塔の広場の真ん中には大勢の騎士たちがすでに準備を完了して待機していた。


「皆さんこれから魔獣狩りを始めます!」


 ルルクの掛け声でその場の全員が彼に視線を向けた。


 その後ルルクは後ろを振り向いてエウスとヨルムに言う。


「エウスさんはレイドの皆さんに、ヨルムさんはバハムの皆さんに説明をお願いします」


 ルルクはそう言うとエルガー騎士団のもとに走って行った。




「エウス、どういう状況ですか!?」


 ライキルがエウスのもとに駆け寄って来た。

 後ろには、ビナ、ガルナの姿もあった。


「魔獣の群れが接近してるって」


「神獣はいるんですか?」


 誰もが心配するところはやはりそこだった。


「いや、神獣の姿は確認できなかったそうだ、でも小型がいるかもしれないから注意しろってルルクさんが言ってたから気は抜くな」


「はい、では、私たちはどうすればいいですか?」


「俺たちはルルクさんたちと一緒にこの監視塔付近で魔獣を迎え撃つ」


「分かりました」


 それからエウスたちもすぐに出発の準備をした。




 監視塔からはまずフォルテとヨルムが西側の森に小型の茶色い翼竜でいち早く飛んでいき、それから、ナターシャを乗せた赤い翼竜が東側の森に飛んでいった。


エウスたちとエルガー騎士団は表門から監視塔の外に出て、その周辺を東と西の二つの部隊に分かれて待機した。


翼竜に乗ったバハム竜騎士団が西と東と南に分かれて再び偵察を始めた。

 監視塔内には、監視塔の騎士と冒険者で守りを固め、クロル率いる白魔導士たちが負傷者に備えて準備を進めた。

 オウドの監視塔は魔獣たちの迎撃態勢を整えたのだった。





 再び森の南に向かったバハム竜騎士団の数人の騎士たちが翼竜で飛んで空から偵察していると、十から二十のまとまりの魔獣の群れをいくつも見つけた。その魔獣たちは森の中を東西にどこまでも横に広がって走っていた。


「やはり、神獣のような個体はいないな」


 ひとりの騎士が近くにいた仲間に言った。


「そうだな、小型もいやしないな…」


 二人が下の白虎を警戒しながら見ていると、もう一人飛んできて、二人の会話に加わった。


「なあ、少し変じゃないか?」


「何がだ?」


「この規模の魔獣の群れが動き出したのに神獣が一体もいないってことだよ」


「確かにそうだな、この規模になると普通なら何頭かいて指揮を執ったりするもんな、魔獣は頭がいいからな」


「だろ、でも、どこにもいないだろ、それが少し気になってさ…」


「でも、いない方が楽だろ、気することはねえよ」


 それを聞いたひとりの騎士が前向きに言った。


「まあ、そうなんだけどさ…」



 三人はそれから神獣がいないか探して飛び回った。


「いねえな…」


「おい!」


 その時一人の騎士が叫んだ。


「なんだ?」


「あれ、神獣じゃないか!?」


 ひとりの騎士が指さす方向には特別危険区域の濃霧があり、そこから一匹の中型の白虎が姿を現していた。


「本当だすぐに報告しろ!」


「待て、見ろ!」


 ひとりの騎士がそう言うと、その霧から姿を現した白虎は全身血まみれで、そのまま霧の近くで倒れてしまった。


「………!」


 すると深い霧がその白虎の姿を包み込み再びその姿を隠してしまった。


「なんだよ今の…」


 その場にいた騎士たちはその光景に啞然としていた。


















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