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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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神獣討伐 本当の彼

 小さなテントの中でエウスは目を覚ました、テントの薄い生地から光が透けて今が朝だということが分かった。


「朝か…」


 テントから出て空を見上げると気持ちよく晴れた青空にバハム竜騎士団の翼竜たちが飛んでいた。

 エウスはそんな朝の空の下、最初に会議室のある建物に向かった。会議室には作戦中の情報が集まって来るのでハルが戻って来ていないかを確認することができた。

 会議室にはすでにルルクがおり、エウスはハルが戻って来てないか尋ねたが、予想していた通りまだ戻ってきては無かった。

 エウスが礼を言って出て行こうとするとルルクが呼び止めた。


「エウスさん、明日、霧周辺を偵察に行くかもしれないので準備しておいてください」


「分かりました、ところでルルクさん、今日は?」


「ああ、今日はここで待機でお願いします。他の砦や監視塔の情報を集めてから動きたいので」


「了解です、ライキルたちにも伝えておきます」


「お願いします」


 エウスがルルクと別れて会議室を後にして建物の外に出た。

 監視塔内は、清々しい朝の空気に満ち溢れており、周辺の森の木々からいい匂いが漂ってきて、エウスの気分を落ち着かせてくれた。

 それから朝食を一人で取ったあと、人の邪魔にならない広場の端で地べたに座って、いつでも出撃できるように武器や防具の手入れなどをして時間を潰した。

 広場の中央では朝食が振舞われて、起きてきた騎士たちが集まってきていた。エウスはそれを遠くから見て、ライキルなどが起きて来ないか待った。


「ハルを見つける…」


 エウスは懐に装備しておくための短剣をみがきながらひとり呟いた。


『どういう意味でキャミルは手紙の裏にあんなことを書いたんだろうか?』


 短剣を磨く手が止まった。


『本当のハルを見つけてあげて…』


 エウスは手紙の裏に書かれていた言葉を頭の中で再び思い出した。そしてエウスはそのことについて深く考えたを巡らせた。


『ハルが無理してるってことを伝えたかったのか?』


 キャミルが送ってくれたメッセージを何とか解釈しようとした結果、エウスはなんとなくそのあたりが彼女の伝えたいことなんじゃないかという結論に至った。


『わからないが、キャミルもハルが心配なのは俺たちと一緒、当たり前だな…』


 エウスは再び剣を磨き始めた。


『無事に戻って来てくれよ、ハル…』


 エウスは心の中でハルの無事を願うと、広場の中央を見た。


「あいつら、起きて来ないな…」



 それから、武器や防具の手入れを終わらせたエウスは、広場でビナの姿を見つけた。

 彼女は寝ぼけまなこをこすって朝食のある広場に吸い寄せられていた。

 エウスは立ち上がってビナの方に歩いて行き声をかけた。


「よう、ビナ、やっと起きてきたな」


「ああ、おはようございます、エウス…」


「全く、ちゃんと起きて朝飯食ってこい、いつ食えなくなるか分からないんだぞ」


「うん」


 ビナが小さく頷いたあと走っていこうとした時にエウスはひとつ尋ねた。


「あ、ビナちょっと待ってくれ、ライキルとガルナは?一緒じゃないのか?」


 そのエウスの質問にビナは首を横に振った。


「そうか、それだけだ、食ってきな」


 エウスがそう言うとビナは朝食を配っている広場の中央に駆けて行った。


「まだ、起きてきて無いのか?」


 エウスはそれから監視塔内を少し歩いて探し回ってみたが見当たらなかったので、ライキルのいるテントを訪ねてみた。エウスが外から見ると、少しテントが揺れ動いていたので人がいることは分かった。


「おい、ライキルいるか?もう朝だぞ!起きろ!」


 するとテントの入り口の布が開いて眠たそうなライキルが顔をだした。


「朝だぞ、飯がなくなるぞ?」


「おはようございます、エウス、今起きるところでした」


「そうかい…って…」


 エウスが狭いライキルのテントの中にガルナが寝ているのを見つけた。


「お前らなんで一緒にいるんだ?」


「ああ、昨日いろいろあって、ガルナが自分のテントが分からないっていうから、私のテントに泊めてあげたんです。ガルナ起きてください、朝ですよ」


 ライキルがガルナを揺すり起こしながら言った。


「んああ…」


 ガルナがよだれをたらしながら上半身を起こしていた。


「そうか、まあ、起きたならいいんだ」


「ガルナ、よだれ出てます」


 ライキルがガルナのよだれをふき取ってあげた。


「広場の中央で朝食配ってるからあとから来いよ、ビナもいるから」


「わかりました、先に行ってください」


「はいよ」


 エウスがビナのもとに戻り、木の椅子に座って二人で話していると、ライキルとガルナが遅れてやって来た。

 木の椅子を持ってきて円を作るように並べて、テーブルも無しに四人は、外の広場で朝食を食べたり会話を楽しんだ。

 広場の片隅で小さな輪になって、みんなでいっときの楽しく穏やかな時間を過ごした。


 ただ、ひとつだけいつもと違うのは、そこにひとり足りないだけだった。


 ただ、それだけだった。






















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