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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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ビスラ砦

 ビスラ砦は町の中心からそれた場所に建っていた。そのため、砦の近くには広い牧場があり、厩舎があった。


 ビスラ砦の中は、想像以上に広い構造だった。その広さは、一国の城とも引けを取らないほどだった。


 ハルたちは、レイゼン卿から指示を受けた使用人たちに馬と荷馬車を預け、エントランスに案内された。


 エントランスに入る、中は豪華というより、機能美にあふれた建築をしており、貴族の屋敷に置いてあるような、高価な壺や絵画などは飾っておらず、その代わりに、多くの武器が飾られていた。


 二階に続く、階段があり、広間の左右には通路が横に続いていて、縦長の四角形の構造上、曲がり角にも通路が縦方向に続いているようだった。


「騎士の皆様、お食事の用意がしてあります。正面奥の扉へ、お進みください」


 ビスラの使用人が先導しながら言った。


 エントランスをまっすぐ歩いていき、横に大きい扉を開けると、そこにはひらけた中庭があり、テーブルの上には豪華なごちそうが並べられていた。


 地面には芝が敷き詰められており、四方はもちろん壁しかなかったが、夜空の月はそこからでも綺麗に見ることができた。


 兵士たちは旅の疲れからか、一斉に馳走に飛びついた。


「おい、お前ら、あんまり飲みすぎるなよ」


 エウスがすれ違う兵士たちに、忠告する姿が見られる。


 それに陽気に答える兵士たちは、飯と酒に駆け出していた。


「レイゼン卿、金銭はエリー商会がお支払いします」


 そう、エウスがレイゼン卿に言うと。


「ん?いやいや、いいんだ、これは私からの気持ちだからな」


「しかし」


 エウスは困った顔をしてしまう。


「気にするな、わが砦は最近、来客が多くてな、こういうことにはなれているのだ、よく来てくれたというものだ」


「分かりました、それでは、私からもこの騎士団のお礼を代表して、恐縮ですがこれを」


 エウスが差し出したカードはエリー商会の発行している金色のカードだった。


「エリー商会のお店に立ち寄ることがあった際、これをお見せください」


「これは、ということはあなた、エリー商会の幹部なのですか!?」


 レイゼン卿の言葉は、丁寧な言葉使いになってしまう。


「正直に申し上げますと幹部ではなく、エリー商会の会長をやらせてもらってます」


レイゼン卿は腰を抜かしそうになった。


 エリー商会とは、ここ数年で急激に王都に広まった商会で、その商売の手の広さと巧みな戦略は、従来の商会を駆逐と吸収を繰り返し、巨大な組織になっていた。


 そのエリー商会の成功は、会長の功績が大きいと商売をするものたちの間でも、噂になっていた。


「まさか、あなたが、噂は聞いておりましたが、まさか騎士団に所属していたとは」


 レイゼン卿のダナフィルク地方は、エリー商会ができてから、商人の行き来が増え、多くの恩恵を受けていた。


 レイゼン卿は、そんなどこの誰かも知らない、商会を作った人に前から感謝していた。


「レイゼン卿にお会いになれなかったことを、どうかお許しください」


「いやいやいや、こちらこそ、私は君に感謝しているくらいだよ」


「ありがとうございます」


 エウスの目上の人に見せる、完璧な微笑は、人の心を揺り動かす。


「あのカード、商会が運営するお店に見せれば、特別待遇を受けれるのでどうか、ご活用ください」


「ああ、ありがたく頂戴させてもらうよ」


 そしたら厩舎に行ってしまった荷馬車に、荷物を取りに行っていた、ハルとライキルとビナがエントランスに入ってきた。


「すごい、武器がいっぱいです」


 目をキラキラさせるビナが言う。


「王都の武器庫の中みたいですね」


 ライキルもその武器の種類の多さに驚く。


「これすべて、手入れもされてる、すごい」


「ハハハすごいだろ、昔はここの武器を実際にとって、騎士たちが戦争に出陣したんだ」


「今はここの武器は、使わないのですか?」


「今はここから取ることは、ほとんどないな」


「でも、どれも手入れが行き届いています」


「ああ、それは私の日課みたいなものになってしまってな、空いた時間を武器の手入れなどに費やいしているのだよ」


「素晴らしいです、武器は手入れをすれば、その寿命も延びます、武器の手入れは、言ってしまえば命の管理です」


「なるほど、面白いことを言うね、私の趣味を高尚なものにしてくれるとはな」


 レイゼン卿も嬉しそうに言う。


「趣味とは思えないほど、一つの武器に時間をかけていることは分かります」


「君は武器に詳しいのだね」


「いえ、小さいころから触っているだけです」


そこでレイゼン卿はライキルの持っている二つの長い剣に目がいく。


「ところで君の持っているのは、ハル剣聖の剣だね」


「そうです、どこか置く場所はありますか、かなり大きいのですけど」


「ああ、そしてたら、この砦の武器庫にいったん預けよう、君すまない」


そういうと使用人が駆けつけてきた。


「この剣を武器庫に預けておいてくれ」


「かしこまりました」


使用人が返事をする。


「かなり重いので、もう一人いた方が安定します」


「そうか、それではもう一人呼んできて、武器庫に移動、頼むぞ」


ライキルがエントランスにある武器を置く台に、二つの剣をのせる。


使用人は、もう一度返事をして、人を呼びに行った。


「よし、ここで話すのもなんだ、我々も食事にしよう」


 そう言われ、ハルたちは、二階の中庭の方に突き出るバルコニーに招待された。


 中庭を見下ろすと、兵士たちが楽しそうに食事を進めているのが見られた。


「ここは、もとは入ってきた敵を迎撃するために作られたのだが、すこし手を加えて、食事をとれるように改良したのだ、さあ、座ってくれ」


 数十人がゆったりとできるスペースに、細工がほどこされた大きな長テーブルがあり、その上には下と同じメニューのごちそうが並べられていた。


「さあ、ハル剣聖の皆さんはそちらの席に」


 ハルたちは中庭を背にする形で、ハル、エウス、ライキル、ビナの順番で座った。


 レイゼン卿はテーブルに座るみんなの顔が見渡せる、上座に座った。


「さあ、宴をはじめよう!」


レイゼン卿が高らかに言うのだった。















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