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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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見送り

 ハルが目を覚ますといつも通り自分のベットの上で目を覚ました。そのままベランダにでて外の空気を吸う。


「……………」


 辺りはまだ薄暗かったが空を見上げると浮かんでいる雲に朝日が辺り黄金に輝いていた。


「………!」


『みんな起きてるのか、早いな』


 ハルが服を着替えていると通路からは足音や話し声が聞こえてきた。この時間はみんなぐっすり眠っているのが普通だったがこの日はみんな起きているようだった。

 ハルが着替えて通路に出るとエウス、ライキル、が二人で話していた。


「おはよう二人とも」


「おはようございます、ハル」


「おはよう、今日はハルより早かったぜ」


 二人が元気にあいさつを返してくれた。ハルが二人の元に来て今日のことについて話していたリすると。


 ギイイ!


 ビナの部屋の扉が開いて、眠そうなボサボサの真っ赤な髪の女の子が出てきた。彼女の姿はまだ寝巻で開いたドアのドアノブを握ったまま、立って再び睡眠に入ろうとしていた。


「おい、こいつ立ったまま寝ようとしてるぞ」


 エウスが小さく笑って言った。


「ビナ、起きてください、今日は出発の日ですよ」


 ライキルがビナに駆け寄ってすべすべのほっぺたに触るとビナは眠たそうに眼をこすった。


「おはよーみんな…」


 それからライキルがビナの支度を手伝っている間、ハルも自分の身支度を整えた。

 四人の準備が終わったって集合場所に向かおうとしたが、誰もガルナの姿を見ていないことに気づいた四人は彼女の部屋がある二階に足を運んだ。

 ハルとエウスが部屋の外で待って、ライキルとビナが彼女の部屋に入っていった。


「いたか?」


 エウスが尋ねると


「二人は入ってきちゃだめです!」


 ライキルが部屋の中から叫んだ。

 しばらく部屋のなかで三人が仲よさそうに支度をしている声が聞こえてきた。

 その間ハルとエウスが今日のことについて話していると、ガルナを連れたライキルとビナが部屋から出てきた。


「おはよう!ハル!エウス!」


 ガルナが元気にあいさつをした。


「おはよう!ガルナ」


「おはようさん、よし、それじゃあ集合場所に向かうぞ」


 四人は東館から中庭を抜けて城の裏の広場まで来た。

 昨日のパーティーのテーブルなどは全て片づけられており、広場には何もなかった。


 広場には大勢の人が集まっていた。

 今回一緒に出発する、アスラ帝国のルルク、フォルテ、ベルドナなどのエルガー騎士団の精鋭騎士たちや、一部の実力のある冒険者に、白魔導協会のクロル率いる白魔導士たちもすでに広場に待機していた。


 そして、そんな彼らを見送りに来てくれた人たちが大勢集まっていた。

 デイラスにエリザ騎士団の騎士やアストル、ウィリアム、フィルなど新兵のみんなや、フルミーナもすでに来ていた。さらにこの城の使用人たちも見送りのために集まってくれていた。

 他にも大勢の関係者が見送りに来てくれて、辺りに早朝の静けさは全く感じられなかった。


「おお、ハル剣聖!」


 デイラスがハル達に気づいて手を挙げて呼びかけた。

 するとそこにいた大勢の人がハル達に注目して拍手や歓声が上がっていた。


「ハル剣聖!頑張って!」


「みんなを頼むぞ!」


 大勢の群衆の中に人が避けて大きな道ができ、ハル達はそこを通ってデイラスのもとまで進んだ。


「おはようございます」


 ハルが言った。


「おはよう!いい朝だね、今日は素晴らしい日だ!」


 デイラスは少し興奮気味だった。


「ハル剣聖それにみんな、見送りに来てくれた人たちと話すといい、時間はまだある」


「はい、ありがとうございます」


 それからハル達はそれぞれ見送りに来てくれた人たちに会いに行った。

 エウスとライキルは新兵たちに囲まれて声援をもらっていた。アストル、ウィリアム、フィルを中心に二人と話していた。

 ビナはフルミーナと親し気に話していた。

 ガルナはデイラスと久しぶりに二人だけで話し合っていた。


 ハルは見送りに来てくれたみんなに感謝の言葉を述べていた。その間ハルを応援する声は止まなかった。そのようにハルがみんなの歓声の中にいるとハルは少し昔のことを思い出した。


『そういえば、始めて剣聖になったときもこんな感じだったな…』


 そこでハルは使用人のヒルデとマリーを見つけて群衆をかき分けて二人に会いに行った。

 周りのみんなが驚くなか、ハルが二人に挨拶して彼女たちも返してくれた。


「ハルさんごめんなさい、あなたが剣聖だったとは知らずに無礼なことをいくつも!」


 マリーが慌ててハルに謝った。


「全然いいよマリーさん、俺もちゃんと名乗らなくてごめんなさい」


「いえ、ハルさんは悪くないですう!!」


「そうです、ハルさんは悪くないですよ。ハルさんがちゃんと名乗ってもマリーは気付かなかったかもしれませんから」


「ヒルデちゃん私そんな世間知らずじゃないよ!」


「どうでしょうね!」


 そのやり取りにハルは本当に二人は仲が良さそうだと思った。

 その後ハルは二人を連れてクロルの元に連れて行った。


「わあ、本当に知り合いだったのですね!すごいです!」


 クロルが手を合わせて嬉しそうに三人の顔を見た。


「信じてなかったんですか、クロル姉は」


 ヒルデが呆れて言った。


「ちょっとだけね、フフ」


「フフ、じゃないですよ、ハルさんに失礼です」


「そうですよ、クロル姉!」


 マリーもヒルデに加勢していた。

 ハルはそのやり取りを微笑ましく見守っていた。

 それからしばらく話した後ハルはヒルデ、マリー、クロルの三人と別れた。


「ハル剣聖必ず帰ってきてください!」


「どうかご無事で…!」


 ヒルデとマリーがハルに別れの挨拶を告げた。


「ありがとう…」


 ハルがデイラスがいた場所に戻るとエウス、ライキル、ガルナ、ルルク、フォルテがいて、近くではベルドナとアストルたちが喋っていた。


「ハル、もうそろそろだとよ」


 エウスがハルに言った。


「ああ、大丈夫だ」


 そこにビナとフルミーナも来た。


「皆さんどうか無事に帰ってきてくださいね」


 フルミーナが心配そうにみんなに言った。


「無事でいますよ!」


「大丈夫です!」


「まかせろ!」


「安心してください」


「俺がいる」


「任せて!」


 みんながフルミーナに声をかけた時だった。


 グオオオオ!


 遠くの北の空から聞きなれない音が響き渡ったってきた。


 グオオオオオオオオオオオオ!


 その音はだんだんこの古城アイビーの方に近づいて来た。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


 そして、その轟音がすぐ近くの空で聞こえた時、集まっていた人々に大きな影が落ちた。


「すごい!竜だ!!」

「竜だ!!」

「初めて見たぞ!!」


 見送りに来ていた人たちが声を上げた。


 そこには巨大な翼を持った【翼竜】(よくりゅう)と呼ばれる生き物が咆哮している姿があった。

 翼竜は四本の足と大きな翼を持った生き物であり、翼竜の体は鱗でおおわれているのが基本である。さらに鋭い爪や牙を持ち、体の後ろには尻尾もある。



 ハルたちの上にはそんな茶色い翼竜が何十匹も渦を巻いて飛び回っており、その群れの渦の一番上に一匹だけひときわ大きい赤い翼竜が飛んでいた。

 そして、最初にその一匹だけ大きな赤い翼竜が、渦の中心からゆっくりハルたちの元に羽ばたいて降りてきた。




















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