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神獣討伐 世界を巡って3

 シフィアム王国王都エンド・ドラ-ナ。ここは竜と人の国だ。龍舞う国などと呼ばれていたが、現在では国を揺るがすとある大事件によって、その翼竜の数は激減し、今では空を飛ぶ竜の姿はなかった。

 代わりに空を支配していたものは巨大な水球だった。王都エンド・ドラーナの街にある四つの大穴の上空に、四つほど浮いていた。

 街の人々はやはり、その水球に対して魔法を使って対処しようとしていた。そのため、水球は放たれた魔法をみるみる吸収し、さらに巨大化しては、ハルが見たなかで一番大きな水球として、成長していた。


 ハルはすぐさま、その四つを破壊しようと最初の水球に手を加えようとしたが、その時、水球から突然、水で出来た蛇が現れた。そして、水球を攻撃しようとしたハルに襲い掛かってきた。


『蛇?山蛇と姿が似てるけど別物か…』


 ハルが一瞬、頭の中に緑色の湖で見た山蛇を連想させたが、姿が似ているだけで、身体が水で出来ている時点で生物ではなく魔法に近いものだと考えることができた。水球の自動防御システムでもいえばいいのだろうか?だが、それはまだこのシフィアム王国にある水球だけが見せた特徴であり、他のところそんなことは一切無かった。


『まあ、なんでもないんだけど…』


 ハルが考えるよりも先に、空に浮いていた一つ目の水球を、その水球から現れた水状の蛇ごと断ち切ってしまう。ハルにとっては敵でもなんでもない。

 そのあと、その水球はどの水球とも同じように形を保てなくなり、ただの水へと戻っていった。

 水球が大穴の地下に流れ込む。ここの地下にはもともと雨の日には大量の水が流れ込むことからも、その量は問題なかった。


 ハルはすぐに残りの三つの水球を破壊した。大きく育った水球は立て続けにその水の蛇を出してきたが、ハルにそんな小細工では通用せず、あっけなく、王都エンド・ドラーナには一時の平穏が訪れた。


 ハルはすぐに、部隊を纏めている隊長のような人物を探した。すると、王城近くの高台から街を一望していた、シフィアムの騎士団が目に付いた。その騎士たちはハルがあっという間に水球を破壊しているところを観察していた。

 ハルがその騎士団たちがいた高台に降りると、ひとりの竜人の騎士が他の騎士たちを下がらせて前に出て来た。


「貴様、何者だ?」


 明るい薄緑色の髪に黄色い鱗と黄色瞳。力強く睨む彼の瞳にはまだどこか若々しさがあった。穢れなくその瞳はどこまでも純粋に見えた。

 そんな彼にハルが警戒されるのは、無理もないことだと思った。


「長く話し合っている暇はありません。皆さんも、先ほどの水球の破壊を手伝って欲しいのです」


「私は、ランジュ・バーキュリィー。このシフィアム王国の剣聖代理として女王陛下から拝命された。いいかい?貴様が、私に命令できる立場ではないことは明らかであり、名も名乗れないような輩に…」


 どこか堅苦しい言葉遣いに言いなれていないような感じであり、時間の無いハルにはどうでもいいことだったので、ハルは彼が喋っている最中に横から口を挟んでいた。


「良かった、あなた剣聖クラスの騎士なんですね、だったら今から言うことみんなに伝えて欲しいんです」


「な、なにを勝手な」


「時間が無いので、あの水球のことだけ簡単に説明します。あれは魔法を吸収します。だから、魔法じゃない手段で破壊し続けてください。あれは水の壁からマナの多いところに寄って来る習性があると思います。だから、ここも狙われ続けると思います。俺も何度かここに見回りに来るので、俺がいない間、みんなで力を合わせて持ちこたえてください」


 シフィアム王国の水球を破壊し終えたハルはすぐに次の場所に移ろうとしていたが、そこで剣聖代理のランジュが慌てた様子で尋ねる。


「ちょっと待ってくれ、急に現れて、まずは名前ぐらいでも教えてくれ。先ほどの水球の破壊は確かに見事だったから、それくらいいいだろ?」


「ハル・シアード・レイです。ああ、それと、キラメアにもよろしくって」


「え?」


 咄嗟のことで、剣聖代理のランジュは困惑していたが、その間にもうハルは次の場所へと飛んでいた。


「キラメアって…誰だ?俺は女王陛下のことしか、思い浮かばないのだが…?」


 ランジュが後ろにいた騎士たちの顔を見渡していたが、キラメアという女性が誰のことを指しているのか、理解が及ばないようだった。そこで誰もまさか先ほどの男が女王陛下と知り合いなど考えもしていなかった。

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