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神獣討伐 作戦内容

 翌日。

 昼間に本部の前で狼煙が焚かれた。巨岩は空から絶え間なく降って来るが、一定数の巨岩を処理したハルが、すき間の時間に、本部のテントにやって来る。


 二回目の神獣討伐の作戦会議が行われた。


 今度の会議は人数を絞られて行われた。

 出席者は、ハル、エルノクス、エンキウ、アシュカ、数人のドミナスの兵士だけで、他の者たちはその会議に参加することはできなかった。というより参加する必要がなかった。

 作戦の実行部隊は、ハルを中心としたドミナスの部隊で構成されており、そこにレイド王国のライキルたちや、ホーテン家のルナたち、イゼキア王国のゼリセなどの騎士たち、バーストのエレメも当然部外者として、今回の作戦から外されていた。


 エルノクスによる統率の取れたドミナスの精鋭たちだけの方が、効率的に動けるため、他の者たちは予備隊として、当日は安全な場所での待機が言い渡されていた。言ってしまえば戦力外であるための厄介払いに近かった。


 今、こうして、空から降る巨岩の恐怖に耐えながら王都のこの本部の近くのテントで寝泊まりしていたが、本来はその意味すらない。

 この王都にいた国民たちのように、街を捨てて出て行く方が賢明な判断なのである。しかし、ここに留まっている者たちの中には、覚悟を持ってここにいた。イゼキアの騎士たちは自分たちで故郷の街を守りたい、レイドのライキルやルナたちも、ハルが戦っているという理由で自分たちにもできることがあると信じて残っていた。


 だからこそ、こうして蚊帳の外に放り出されるのは心外だと、特にイゼキアの騎士たちなどが抗議していた。ドミナスの兵士たちとイゼキアの騎士たちの間で、対立が生まれつつあった。

 だが、翌々日、三回目の会議が終わり、本部から出て来たハルがゼリセに声を掛けていた。ゼリセがハルに説得されると、その対立はイゼキアの騎士たちにも広がりやがて抗議の声も小さくなっていった。


 それからさらに数日後、四回目の会議は狼煙が上がってから四十分ほど経つと、本部のテントからすぐにハルが空へと飛び立っていく姿が見られた。

 それは行われた会議の中で一番長かった。そして、その四回目の会議で、今回の最後の神獣討伐の会議が、すべて終わりを告げたことを意味していた。


 ライキルたちが少し開けた瓦礫の少ない場所で固まって暖を取っていた。ライキルの隣にはビナとガルナがおり、向かいにはエウスが焚火に瓦礫からかき集めた燃えるカーテンの燃え残りや、木のテーブルの脚などを炎にくべていた。

 少し離れた場所では、ルナ、フレイがおり、何人かの兵士たちと会話をしていた。おそらく、ホーテン家の兵士たちだと思われた。

 そして、さらに遠くには、ゼリセが、エレメイと二人で暖を取っていた。


 それぞれ三グループの塊に別れて、内容を聞かされるまで待っていた。それまでは各自寝泊りしていたテントに戻ることもできなかった。


 会議が終わったのか、数人のドミナスの兵士たちがテントから出てくると外で待機していた者たちに概要を伝えた。

 作戦内容は他の者たちにも共有される。ただ、口出しはして欲しくないため、作戦会議に参加はできないといった形だった。そして、選ばれたものしか参加もできない。


 ドミナスの兵士がそれぞれ暖をとっていた者たちの場所に来ると、彼等は丁寧に作戦の内容を説明し始めていた。


「明日、我々ドミナスの特殊部隊が、湖の地下に攻撃を仕掛けます」


「明日って言ったか!?」


 エウスが驚いた様子で兵士に言った。


「ええ、明朝、緑死の湖で作戦は遂行されます。正午までには、エンキウ様とアシュカ様のお二人が、湖を攻撃し、地下に存在を確認されている世界亀を地上に誘い出します。シアード様にはこちらの空を防衛しつつ、湖で地上に出て来た四大神獣とも交戦をしてもらいます。その際、シアード様の傍にはドミナスの兵士を付き添わせ、常にこの街と湖を行き来してもらうつもりです。流れは以下の通りです。この作戦の要は素早く世界亀を地上に引きずり出し、そして、シアード様がその世界亀をいかに早く討伐できるかにかかっています。以上、会議で決定した作戦内容をお伝えしました。質問などありますか?」


 そこでビナが手を上げた。


「その、私たちは、この作戦で何かお手伝い出来ることはありますか?」


「現状、予定通り作戦が遂行されれば、ありません。ただ、皆様には待機部隊として、事前にお伝えしてある通り、ここを離れ、別の安全な場所で待機していてもらいたいと思います」


 ここにいるわずかな戦力では、できることなど、何一つとしてなかった。ドミナスの兵士はその現実を嫌でも突きつけてくれた。


「その安全な場所ってどこなんですか?」


 空から巨岩が降っている以上近場に安全な場所などなかった。イゼキアからの脱出も考えられた。

 しかし、ドミナスの答えは違った。


「ここの地下です」


「地下?」


「王都シーウェーブの地下にあるドミナスのイゼキア支部【ザ・ワン】になります。特殊な地下施設なので地上でどんな被害が出てもその施設は絶対に安全です」


 ルナたちの方で、ドミナスの兵士が説明をしていた。


「『ザ・ワン』はこの王都の地下にあります」


「そんな施設があるなんて聞いたことないわ…」


 ルナがそういうと、ドミナスの兵士が淡々と答えた。


「我々の極秘の施設です。今回、エルノクス様が特別に皆様を保護するために立ち入りを許すとおっしゃってくださいました」


「そう…ねえ、もしかしてなんだけれど、そのザ・ワンって施設、レイドの地下にもあったりするの?」


「ありません、ここだけです」


 その兵士はその質問にも淡々と答えていた。


 その傍では、エレメイが兵士に詰め寄っていた。


「地下組織っていいました?それもザ・ワンですって?」


「はい、皆様を今夜中に招待いたします」


「信じられない…」


 驚愕していたエレメイの隣で、ゼリセが何のことかさっぱり分からない様子でいた。


「何が信じられないんだ?」


「だって、じゃあ、ずっとあなた達は地下に潜伏していたの?」


 ドミナスの兵士は何も答えなかった。


「今日の深夜、皆様をお迎えに上がります。各自テントでお待ちください」


 ドミナスの兵士たちは、伝言を終わると、各グループの元から去っていった。

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