幸せな夢 気持ちのいい朝
ハルが目を覚ますと、木のいい匂いがする部屋で目が覚めた。
ベットの上にいたハルは、あくびを一つするとベットを見回して、自分がどこにいるのか確認する。ハルのいるベットの毛布は少し乱れており、誰かがもうそこから出て行ったことがわかる。
ハルがベットの上に座りながら、足だけベットの外に放り出して、辺りを見回す。ハルの目にパッと映るのは、多くの本と植物に囲まれた空間だった。部屋の真ん中にはテーブルと椅子が二つあり、テーブルの上には白い花が花瓶に飾られていた。そして、部屋には何やら散らかっている研究机のようなものもあり、大量の本と植物が置いてあった。
そして、ハルがその座ったまま、真正面を見るとそこは小さなキッチンがあり、そこに誰かが立って何かをしていた。
ハルが立ち上がるとその誰かがこちらを向いた。
「あ、おはよう、ハル!」
そのようにあいさつしてくれたのは、若い女性で年齢はだいたい十代後半ぐらいに見えた。
しかし、その女の子の顔がハルにはなぜか見えなかった。
それでも違和感なくハルも挨拶した。
顔の見えない彼女は、綺麗なサラサラの白い髪を肩のあたりまで伸ばしており、健康そうな小麦色の肌をしていた。服装はへその見える短い白のタンクトップを着ていて、下は青のショートパンツを履いていた。彼女の服はどちらもよれよれで少しだらしなく見えた。
ハルが顔の見えない女の子がいるキッチンに歩いていく。
「今、朝食にするね、あとハルが気に入ってくれた紅茶もあるから、座っててくれたまえ!」
ハルは彼女の言ったことを聞かないで彼女のもとまで行き、後ろから抱きしめた。
「おいおい、どうした?寂しがり屋さんめ!そんなことしてるとハルのぶんの目玉焼きが焦げちまうぜ!」
そう言われるとハルは彼女から離れて、出来上がった料理をテーブルに運んでいった。
「ハル、ちょっと部屋の窓開けてくれないか?換気しよう!」
料理を運び終わったハルは彼女に言われた通り、部屋の窓を開けていく、外は木々に囲まれた森であり、外から新鮮な空気と気持ちのいい風が入ってきた。
「ありがとう!さあ、できた、食べようか!」
彼女が焼き立ての肉や卵をさらに載せて持ってきた。
ハルと彼女が向かい合って席に着く、ハルはベット側の席に着き、彼女はキッチン側の席に座った。
「いただきまーす!」
彼女の元気な声に続いてハルも続けて言った。
二人は他愛もない話をしながら朝食を食べ進めていった。
顔の見えない彼女とハルが、朝食を食べ終わり、二人で料理のお皿を片付けると、彼女が紅茶を入れた。
紅茶を入れてくれている間に、ハルは部屋を歩き回りベットの近くにある窓から外の様子を見た。
外は太陽の暖かい日差しが降り注ぎ、涼しい風が吹いていた。
家の前には、木のない広いスペースがぽっかり空いており、緑の絨毯が広がっていた。そして、家の前にはいくつか花壇があり、白い花が咲き乱れていた。
「ハル、できたよー!」
ハルが再びテーブルに戻り、椅子に座った。彼女がティーポットを傾け、紅茶を二つのカップに注ぎ一つをハルに渡した。ハルは彼女に礼を言って、紅茶を飲んだ。そのおいしい紅茶はハル自身も気づかないうちに、彼を笑顔にしていた。そんなハルの顔を嬉しそうに彼女は見つめていた。
ハルがその彼女の視線に気づくと彼女は笑った。顔は見えないがハルには彼女が笑っていることが分かった。というよりも前から知っていた気がした。
「ねえ、ハル、明日もここにいてくれるんでしょ?」
ハルが答える。
「えへへ、やったー」
彼女が嬉しそうに笑う。
「そうだハル、私が花の水やり終わらせたら、一緒に散歩に行こうよ」
ハルが笑顔で答える。
「決まりだね!」
彼女が言った。
紅茶を飲み終わり二人は席を立った。
「え、ああ、そうだね、ありがとう!」
彼女はハルにそう言うと、テーブルの近くにある家のドアを開けて庭に飛び出して行った。
ハルはその様子を微笑ましく見たあと、使い終わった紅茶セットを一式持ってキッチンに向かって、さっきの朝食の食器と一緒に洗い始めた。
ハルは体にマナを流して、手から水を作り出して、食器の汚れを落としていく。植物から作り出された洗剤と綿から作られた布で、食器の汚れをさらに落としていった。そして、ハルが再び水魔法で水を作り、食器についた洗剤を落として、かごに綺麗になった皿を並べていった。
ハルが食器を洗い終わって、キッチンの近くにある窓から外を見た。
外では彼女が花壇に咲く白い花に水をやっていた。
ハルがしばらくその光景を窓から見ていると、彼女がそれに気づいて彼に手を振った。ハルもそれに笑顔で手を振り返した。
それを見た彼女が嬉しそうに笑った。
「よし、終わったよハル!」
彼女が家の中に飛び込んできた。
それから二人は散歩に出かけるために準備を進めた。彼女が研究机の周辺にある戸棚から何やらいろいろ瓶を取り出していた。
「じゃじゃーん!」
彼女が一つの瓶を取り出してハルに見せた。
「これかい?これは、虫よけ日焼け止めクリームです!すごいっしょ!」
ハルが興味深そうに彼女からその瓶を受け取ると彼女が腕を広げた。
「さあ、ハル、それを私に塗ってくれたまえ!」
それから、ハルはそのクリームを手に取って、手のひらで薄く延ばし彼女に塗る準備をした。彼女はその間に椅子に座って塗られるのを待った。
ハルが彼女の顔からクリームを塗っていく。顔は見えないがハルは何の違和感もなく彼女の顔にクリームを塗っていく。
「ハル、なかなかうまいじゃないか、気持ちいいぞ…え?喋ると口に入るって?」
次の瞬間ハルの指に変な感触が伝わった。
「こへわな、くひにいれへもだいひょうふなやつなんふぁ」
ハルは彼女に指をかまれて離そうと手を後ろに引くが、彼女がなかなか指から離れてくれなかった。
彼女は悪戯に笑って、ハルは呆れながらも一緒に笑った。
それから、虫よけ日焼け止めクリームを彼女の腕に塗り終わって、足に塗る順番が来てハルはクリームを手に補充した。
ハルは何のためらいもなしに彼女の足にクリームを塗っていく、彼女も気持ちよさそうにそれを受け入れるが、ももの辺りになって来ると急にくすぐったくなった彼女が笑い始めた。
「ククッ、アハハハハ、ちょっと、ハル、くすぐったいよ…」
彼女がそう言うと、ハルは謝りながらも、わざとくすぐったくなるように彼女の足にクリームを塗った。
「ギャハハハハハハハハハハハ、き、きさまー、ゆるさんぞ!」
それからハルが、彼女に虫よけ日焼け止めクリームを塗り終わると、今度は彼女がハルにクリームを塗ると言って、彼を椅子に座らせた。
「目をちゃんと瞑っていろよハル」
そう言うと彼女の手がハルの顔に触れる。
「ハルの肌ってすべすべで気持ちいいな…」
ハルが彼女のその発言に答える。
「え、何?私の肌もすべすべだって?嬉しいこと言ってくれるじゃん、お礼にたくさん塗ってあげよう」
さっきのお返しとばかりに彼女は、たくさんクリームを取ってハルの顔に塗りたくっていった。
「アハハハハハハハハ!クククッ、ハル、顔がクリームまみれだぞ!」
無邪気に笑う彼女に、ハルは怒って彼女を抱き上げると、そのままハルはグルグルと自分を軸に回りだした。
「ハギャアアアアアアアアア!」
彼女の悲鳴が朝の森に響き渡る。
そのまま、二人はベットに倒れて、お互いの顔を見て再び笑った。
その後、ちゃんとハルにもクリームを塗り終わると、二人は必要なものを持って、ちゃんと戸締りをしたあと外に出た。
気持ちのいい朝の中、二人は森へ散歩に歩き出した。