表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
614/781

神獣襲撃 天空・黒点・騎士

 王城ノヴァ・グローリア上空。


 風に運ばれ流れる雲の海を突き抜けた先には、深い青空が広がっていた。そして、その空のさらに先、星々の住処、深みの極致である宇宙に繋がっていた。


 空へ舞い上がったハルが真っ先にとった行動は、地上から跳ねた勢いのままの有無を言わさない刺突であった。数十体の黒龍たちが互いの身体をねじりくねらせる一つの球体となっている黒点めがけて、ハルの愛刀『皮剥ぎ』が空間もろとも貫く一撃は、その球体を一瞬で爆ぜさせた。


 肉塊となった黒龍たちがバラバラに崩壊し、地上へと落下していく。


「次…」


 落ちていく黒龍の残骸を蹴り、続けてそこからすぐ近くにあった二個目の黒点へと一直線に飛んだ。

 飛んでいる間、周りの状況を確認する。

 ハルの目からもあと数個の黒点が目視できたが、この上空に存在しているすべての数を把握することは難しかった。

 天空には大小さまざまな大きさの白い綿雲がそこかしこにあり、視界の妨げになっていた。


『雲ごと吹き飛ばすか…』


 一番手っ取り早い方法はハルが刀を全力で一振りするそれだけで良かった。龍の山脈で見せたハルの一振りの衝撃は一国どころか大陸を更地に還す力を秘めていた。それは嘘でもなんでもなく、龍の山脈を無に還したもので、考えられる限り最高効率の神獣討伐方法でもあった。


 しかし、そんなことは下に街があること思えばできるはずもなく、それだけじゃない。もしも、黒龍討伐の後に起きた【神威の暴走(キルゾーン)】が始まれば、ハルが街に戻った時点で街の人々は全滅。黒龍討伐の時のようにお膳立てされた舞台以外で振るっていいような力ではない。


 だからこそ、なるべく最短で被害が広がる前に片を付けることを重視したハルは、【静止した世界】の中の移動も利用することで、目視できる範囲にあった二つ目の黒点、前に最速最短で現れる。


 ハルの接近に、黒龍たちが慌てて戦闘態勢を取ろうと蛇のような体をくねらせ球体からほどけ始める。黒点状態の黒龍たちは体力の消耗を防ぐという意味も込められており、いわゆる休息と防御の底上げ状態でもあり、彼等が戦う時はいつだって黒点から解けては離れ波のように広がり空を黒く染めるように自由に空を翔け戦うことが常だった。だからこそ、ハルの高速移動に対して黒龍たちの対応は、すでに遅いと言えた。


 振るった刀の一撃が黒点を両断したかと思うと次の瞬間には細切れにされバラバラと肉塊となり、地上に落下していく。止まった時間の中で放たれた斬撃の軌跡は、現実では決して見えず結果だけが残った。


 二つ目を破壊したところでハルは視界不良を起こしていた雲を散らすために、力を加減して刀を振るった。下界にある街に影響が及ばない程度の風圧。その一振りは周囲の雲たちを一瞬にして吹き飛ばし、ハルが見据える宇宙へと続く先まで雲で塞がっていた視界を良好にした。空の上層で放たれたその風圧が低層の街に掛る雲たちまでは届くことはなかった。


 開けた視界。空の中、ハルがさらに宇宙へと続く空を見上げた。


『あれは…』


 晴れ渡る上空、そこで目にしたのは、蒼天に浮かぶ七つの黒点だった。小型、中型、大型それぞれ大きさ別に黒点は空に形成され、小さいものから順に低い高度に浮かんでいた。そして、小型の黒点が二つ、中型が四つ、大型がひとつの計七個の黒点が空に浮かんでハルを待ち構えていた。


「纏まってくれていると助かるな…」


 ハルがそう呟き、刀を構え、落ちていく黒龍の肉塊を蹴りさらに上に飛び立つ。その際、静止した世界の中を移動し少しでも時間を短縮し距離を縮めた。


 最初の二つの小型の黒点を真っ二つに切り裂く、大量の黒龍たちも静止した時間の中では、ただの肉に過ぎない。止まった時間の中、ハルが二つの黒点の処理をする。首を落とすことで無力化していく、もはや黒龍など敵ではないハルからすれば彼等は他の魔獣となんら変わらない。ただ空に浮いている肉塊にすぎなかった。


 次に待っていたのは中型の四つの黒点だった。


 黒点から黒龍たちがほどけ、襲い掛かって来るが、ハルは糸を縫うようにその黒龍たちの首を落としては、彼等の死体を蹴り勢いを付けると、次の黒龍たちに斬りかかった。空には黒龍の肉と血が飛び散り、ものの数秒でハルはその空に浮かんでいた四つの中型の黒点を処理しきった。


 黒龍の血肉が街へと落ちていく。


 なるべく細かく刻んではいるつもりではあったが、下にも黒龍の死体の落下による被害はおそらくでていることだろうと思った。

 しかし、それでも、この状況無傷で乗り切ろうなどと思ってはいけない。

 まずこの黒龍の数が空に集結している時点で、下は火の海になっていてもおかしくはないのに、こうして今も熱線を吐かれることがないことは奇跡に近かった。


 何か、違和感。


「最後…」


 最後に残った大型の黒点もハルという脅威を目の前にしても、相変わらず動きが鈍く、ハルはその大きな黒龍で形成された球体になんなく接近することができた。


 間近で見るとその黒点は確かに黒龍たちが絡み合ってできた黒い球体だったが、彼等にはどこか戦う意思が乏しいというよりかは、どこか黒龍とは別の生き物のように見えた。まるで側だけ用意したような、そんな覇気のない黒龍たちがこの大きな黒点を創り上げていた。


「なんだ…」


 おかしいと思ったハルはその黒点を触手を使って探り始めようとした時だった。

 ハルの目の前にまるで道ができるかのように、黒龍たちがほどけていった。

 完全にハルは誘われていた。


 しかし、この違和感の正体を知るためにはその新しい道の黒点の中に進んで行くしかなかった。


 このまるで誰かによって操られているような黒龍たちの中をハルは進んでいった。


 黒点の中にできた道をしばらく進んで行く。黒龍たちの背中で出来た道に、周囲の壁には黒龍たちの瞳がジッと歩いて行くハルのことを睨みつけていた。君の悪いこの現象をそれでもハルはその奥にある何かを探り当てるために先へと慎重に足を進めた。


『何がどうなってる…』


 混乱の中、それでも足を止めずに進んで行くと、黒点の中心部に出た。


 辺り一面ドーム状の天井も壁も黒龍たちで構成されているのは、黒点なのだから当然として、その中心にひとりの黒騎士の姿があることを認めると、ハルのなかで混乱はさらにぐっと広がった。

 黒点の中というまず意味が分からない状況にさらにその中に立ちすくむ黒い騎士。頭部を黒い兜で完全に隠し、まるで身体に張り付いたような黒い鎧は生きているかのように表面が脈動し、それは黒い生物を纏っているかのような偽装したなんらかの鎧であった。剣もまたそうだった。彼のもっていたロングソードは、剣身の中心に血のような赤い筋が真っすぐ伸びている黒剣だった。禍々しい雰囲気とともにどこか人間味を感じさせないたたずまい。


 ハルは何もかもが混乱を呼ぶこの中で、彼に問いかけた。


「お前がこの黒龍たちをけしかけたのか?」


 ハルが尋ねるが黒騎士は無言だった。

 黒龍たちの監獄の中静寂が広がる。


「おい、なんとか言ったらどう…」


 耐えかねたハルがその黒騎士にもう一度声かけようとした時だった。


 黒騎士の姿がハルの眼前から消える。


「!?」


 そして。


 目の前に剣を振りかぶった黒騎士が再度現れる。


 突然の出来事に呆然としていたハルに黒剣が迫る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ