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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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雨の日 出会い

「おー、やってる!やってる!」


 勢いよく扉を開けたのはガルナだった。

 その後ろから、ハルとライキルが慌ててガルナに駆け寄っていた。


「ガルナ、ここ土足禁止なんだ、靴を脱いでくれ」


 ハルがガルナに呼びかけた。


「え?」


「なぜ、知らない」


「ああ、悪い、悪い、そういえばそうだったね」


 ガルナがその場で靴を脱ぐと、ライキルが持ってきた袋にガルナの靴を入れてあげた。

 ハルたちが歩いて試合をしている方に足を運んだ。

 そこにはビナと帝国の騎士が立っており、周りを多くの騎士たちが囲んでいた。

 周囲は声援などで騒がしかった。


「あれ!ビナちゃんがいるよ、おーいビナちゃん!!」


 ガルナはそんな騒がしさにも負けずに、大きな声でビナに手を振った。

 ビナもガルナたちに気づくと、ぴょんぴょん飛び跳ねて大きく手を振ってくれた。

 そのとき、ビナはガルナの後ろで、笑顔で手を振っているハルの姿も確認した。


『わああ、そっか、ハル団長も来るよね、ここで無様な姿は見せれないな…』


 ビナはそう意気込みを入れて再び気合を入れ直し集中した。



 ハルたちがそのまま立って試合を見ようとしていたら。


「ハル、こっち来いよ!」


 そう言って、二階から手を振るエウスの姿があった。


「そっちか、二人ともあっちに行こう」


 二階の階段を上がって行った。

 ハルたちが二階に着くと、デイラスやルルク、フォルテやベルドナたちに挨拶をした。

 そしてハルたちはエウスの座ってる方に行くと見かけない三人が椅子に座っていた。


「やっと来たな、部屋の掃除は終わったのか?」


「ああ、使用人さんたちにも手伝ってもらってなんとかな」


「私もちゃんと手伝ったんだぞ」


 ガルナが自慢げに言った。


「そうだな、ありがとな」


 ハルは苦笑いしながらガルナに言うと、彼女は嬉しそうにハルにウィンクした。


「ところで彼らは?」


「そうだ紹介するよ、彼らが新兵のアストル、ウィリアム、フィルだ」


 三人は紹介されると立ち上がりお辞儀をした。

 紹介された時にハルは全てを理解した。


「え!ああ、そうか、ごめん、団長なのにみんなの顔と名前覚えてなくて」


 ハルは慌てて彼らに謝罪して頭を下げた。

 団長としてあまり新兵たちの相手をしていないことに後ろめたさを感じていた。


 しかし、その様子を見たアストルたちも慌てふためいた。

 団長である前に彼らにとってハルは国の英雄的存在だった。

 そんな人に自分たちが頭を下げさせるわけにはいかないと思った。


「とんでもないです、頭を上げてくださいハル団長」


 ハルはアストルたちに懸命に止められ、やっと頭を上げた。


「本当か、ありがとう、エウスから、君たちのことはよく聞かされてたんだ」


 アストルたちに、実際に出会って、本の物語の登場人物にあったような奇妙な嬉しさに包まれて、自然と笑顔になった。


「会えてうれしいよ」


「ありがとうございます」


 新兵の三人は、あこがれの人にそのような言葉を告げられて、緊張が少しずつほぐれていった。

 そして、ハルは、アストルたちに挨拶を終えると、エウスのテーブルの席に向かった、ガルナも後ろをついて行った。

 ハルとエウスとガルナが三人で話し始めていた。



 新兵の三人が席に着こうとしたら、誰かが一人の名前を呼んだ。


「フィル」


 そこで新兵の三人が残っていたひとりの女性に注目した。


「あ、はい!ライキルさん!」


 そこにいたのは、もちろん、ライキルだった。

 フィルがライキルから名前を呼ばれているのを見たアストルとウィリアムは、本当にフィルが彼女と知り合いだったのかと改めて驚いていた。


『本当にフィルはライキルさんと知り合いだったのかよ』


 ウィリアムが心の中で悔しそうにフィルの顔をちらっと見たが、彼は少し緊張した様子だった。


「今日のメニューは終わらせたのですか?」


「はい、もちろんです、早朝にしっかりこなしました!」


「それならいいんです、続けられるようにしてください、あなたの力になってくれます」


 ライキルは優しく微笑んで言った。


「はい!」


 フィルは元気よく返事をした。

 ウィリアムは彼女の落ち着いた佇まいや丁寧な言葉遣い、そして素敵な笑顔に完全に魅かれてしまった。


「あ、あの!」


 ウィリアムがライキルに言った。

 ここでタイミングを逃しては次にいつ知り合えるかわからなかったため勝負に出た。

 ライキルは急に声を掛けられて少し驚いてウィリアムの方を向いた。


「はい」


 彼女の金色の瞳がウィリアムを捉えた。


「あ、その、ウィリアムって言います、新兵の…」


 ウィリアムは、緊張から突発的に口を動かしてしまったので、声が上ずってしまった。


「ん!それではあなた達が、エウスやフィルが言っていた、ウィリアムさんとアストルさんなのですね」


 ライキルは二人の顔を交互に見た。

 ウィリアムは顔を見られるたびに緊張して固まっていた。

 アストルは自分の名前を知ってもらえてたことが嬉しかった。


「はい、自分がアストルで、フィルとウィリアムの同期です」


「そうでしたか、これからよろしくお願いしますね」


 そうライキルが言って、ニコッと笑って会釈をすると行ってしまった。


「まさか知ってもらえてるとは思わなかったね」


「そ、そうだな」


 ウィリアムは体の力が抜けて椅子に座り込んだ。


 一階から大きな歓声が上がり、九試合目の試合が始まった。












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