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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
新世界と古き血脈編
526/781

新世界 約束を果たす時

 *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 


 未来を見た。


 自分が死んでいる未来をこの目で見た。

 未来では確かに自分の死が存在していた。


 そこで見た世界で知った。


 自分が死んだ後の世界に希望なんて何一つないということを。

 ただ、誰かの希望に上塗りされた現実だけがあって、その希望が他の誰かのましてや自分の絶望になることを知った。


 未来で、私の死体の傍で泣いてくれていた女の子が、目を腫らして泣きながらも無残にもひとりのエルフに殺されていた。

 彼女が死んだ時、私はこれが死後の結末なのかと思った。慈悲や救いは無いのか?それは正しいことなのか?


 これが定められた運命なのか?


 そして、さらに先の未来を見てしまった時、私は現実に失望した。


 その後から広場にやって来た大切な人たちの結末。また独りだった自分の元まで駆け付けてくれたみんなが殺される未来を見てしまった。

 たったひとりのエルフによって、無残にも抵抗する間もなく殺される光景だった。自分の親友が敵意に気付き大切な家族を庇って心臓を一突きされ、激怒した獣人が彼の仇を討つために大剣で襲い掛かる。だが、エルフに大剣もろとも、その素手に貫かれ殺される。それを見て絶叫した赤髪の少女も剣を抜くが、さらに早く唱えられた風の刃が彼女の体を通り抜けると四肢がバラバラにされ首を刎ね飛ばされていた。そして、最後に残った自分の愛する人は、ただその一瞬で起こった残酷な現実を受け止めきれず絶望してた。そこに無慈悲にも彼女の心臓に燃えさかる炎の槍が貫通し、そのまま炎は燃え上がり彼女は燃やし尽くされていた。


 燃えていく、自分の愛する人の姿を見た時、内に秘める闇が深まるのを感じた。


『そうか、これが俺が死んだ後の未来…そうか…そうなんだな……』


 未来にいた自分の足元で灰になった愛する人を見送った後ひとり呟いた。


『こんな未来なんていらない……』


 私は目の前の開かれた空間に自身の天性魔法を放った。制限の無くなった世界で振るわれた本気の天性魔法はこの世を簡単に終わらせた。その威力は一瞬で世界という存在や概念を丸ごと消し去った。すべてが一瞬で光になった未来で、私はその世界と共に消滅した。


 私が進むはずだったその未来の時間軸は、その時を持って終わりを告げた。


 そこには過去も現在も未来もなくなり、その世界にあったすべての可能性は無に還った。


 やがて無すらもなくなると、私は元の世界で目を覚ました。


 *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 


 空に亀裂が入るとその隙間から、光が差し込んで来た。その光はいくつもの筋となって街中に降り注いでいた。


「結界が…」


 空を見あげるルナ。

 すると星亡き闇の空が外の光に耐えられなくなったのか、結界の天井が勢いよく割れた。その見上げる奥にはどこまでも深い真冬の青空が広がっていた。


「ルナ」


 ルナの鼓膜にずっと聞きたくて堪らなかった声が響く。


 振り返るとすぐそこにハルが立っていた。


「ど、どうして…私、だってあれ……?」


 ルナが泣き崩れていた場所にあったはずのハルの死体は消えていた。


「コア、破壊してくれたんだね、ありがとう」


「ハル…どうして…だって、さっき…死んだんじゃ……」


 ハルはルナの傍まで行くとその頭を優しく撫でてあげた。


「俺が死んだ?フフッ…面白いこと言うね、夢でも見てた?」


 ルナが見上げるそこには真っ黒い闇のような瞳に夜を溶かし込んだような黒髪のハルが見つめてくれていた。その瞳を見たルナは思わずうっとりしてしまったが、それと同時に彼の目はまるで何も映していないかのようにどこか虚ろでもあった。

 しかし、ルナからすればそんなことどうでもよかった。


「よ、よかった…ハル…生きてて良かったよ…」


 ルナが涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながらもう離すまいと、ハルにしがみついて泣きわめていた。

 ハルも優しくそっと彼女を抱きしめては、子供をあやすように頭を撫で続けていた。


「ルナ、帰ろう」


「帰るって、どこにですか?」


「決まってるでしょ、お家だよ、レイドに帰ろう」


 ハルはそう言うと、ルナの顔を優しく自分に向けて、涙をぬぐてあげながら続けた。


「それとルナには帰ったら協力して欲しいことがあるんだけど、いいかな?」


 ハルのその問いにルナは涙と鼻水を流しながら何度もうなずき震える声で答えた。


「はい、私、ハルのためなら何でもやります。私のすべてはあなたのものでしゅからぁ!」


 涙声でとにかくルナはまたすぐにハルに抱き着くと彼の胸に顔をうずめていた。


「良かった、そう言ってくれるのは分かってた」


 ハルは彼女に笑顔を向ける。その笑顔は誰が見ても太陽を連想させるほど眩しくそして優しい笑顔だった。


 けれど、違和感を覚えた者がこの場にたったひとりいた。


「ハルさん、あんた何なんだ…これはどういうことだ…」


 ハルの視線の先にはエルヴァイスが立っていた。彼は酷く困惑した様子で再開を喜ぶ二人を凝視していた。


「どういうことかって?そんなの見れば分かるだろ?三つのコアを破壊したから結界が割れたんだ」


「違う、俺が言いたいのはそう言うことじゃなくて!」


 エルヴァイスの双眸が力強く、ハルを睨みつけた。


「なんで生きてるんだ、お前は今さっき死んだはずだろ!」


 必死な彼の表情を見てハルは可笑しそうに笑った。


「あははははははははははは!」


 そこにはもう狂気じみた感情は乗っていなかったが、普通である方が逆に不気味さを引き立たせていた。一度死んだはずの人間が、さも当たり前のように息をしては、余裕な顔で宿敵であったエルヴァイスの前に立っている。それもどうやって生き返ったのかわかりもしなかった。


「何がおかしい!!」


「ごめん、ごめん、何もおかしくないよね。まあ、ただ、あんなものをよくも俺に見せておいて、まだそこに立っていられるんだなぁと思っただけ」


 ハルが張り付いていたルナをゆっくりと身体から引き離す、彼女は離れて欲しいことを感じ取るとそっと彼から身を引いた。


「ハル?」


 ルナが不安げに見つめた先にいたハルの眉間にはしわが寄り、あからさまに怒っていた。


「エルヴァイスさん、俺はここであんたを殺さなくちゃならない…」


 ハルがエルヴァイスに歩み寄りながら言った。



「命乞いをしても許すつもりはない…」


 ハルが落ちていた自分の刀を拾った。



 ***



「……………」


 エルヴァイスはやがて何かを悟ったかのように、諦めた表情をすると、小さなため息を吐いた後言った。


「そうか、ならここは正々堂々一騎打ちと行こうじゃないか、ミルケー、俺を守らなくていい離れていてくれ」


 そういうとエルヴァイスの元に浮かんでいたミルケーが驚きのあまり固まっていた。結界が割れた今彼女の姿がハルにもはっきりと見えていた。


『エルヴァイス…あんた何考えてるの?私がいないとあんた死んじゃうんだよ!』


 ミルケーがエルヴァイスの前に立ち塞がるように移動するが、彼は彼女を通り抜けてハルの元へまっすぐ進んだ。


 ハルとエルヴァイスの距離が近づく。


『ねえ、聞いてるの?ダメだからね?私絶対に貴方を守るんだから』


 エルヴァイスの横でミルケーが説得しようと試みるが、彼は彼女を一瞥すると申し訳なさそうに笑った。


「ミルケーどうやら時間みたいなんだ…」


『時間ってなんの?』


「俺がこの世に居られる時間だ。約束の時が来ちまったんだ…」


 エルヴァイスとハルがお互いに間合いに入ると、その場で立ち止まった。


 霊体化したミルケーが二人の間に割って入る。


『ねえ、エルヴァイス、ダメ…本当に死んじゃうよ!!』


「悪いな、ミルケー…どうやら彼との約束は破れないらしい…」


『ダメだって!!私、貴方がいなくなったら…いったいどうすれば!?』


 エルヴァイスの目の前で、霊体化したミルケーが斬り刻まれる。彼女の身体は三等分にされていた。


『あっ…』


 ミルケーは、エルヴァイスの前で、光となって消えた。彼女がバラバラになって崩れ去った先にはハルが刀の刃先を見ていた。まるでつまらないものでも斬ってしまったかのような退屈そうな表情を浮かべていた。


「目障りなんだよ」


 その斬撃はハルがやったに違いなかった。全く見えない斬撃がミルケーを消滅させた。霊体化したミルケーを斬り刻んだこと、そして、霊体化した彼女が消えてしまったことに、エルヴァイスは現実を受け入れたくないほどの、苦痛を心に味わい、現状に理解が追い付いていなかった。


「ハルさん、あんた…」


 絶望に染まったエルヴァイスの前でハルは無慈悲にも彼に告げた。


「一騎打ち?腑抜けたことを抜かす、お前らは全員皆殺しだ…」


 ハルは大きなその刀を鞘に戻すように腰に戻すと、姿勢を前かがみにして抜刀体勢に入った。


「あんたはそれでいいのか!?あんたのその目は人殺しの目だ…そこに正義も何もありはしない…その目はあんたのような人間がしていい目じゃない…」


「喋るなよ、寿命が縮まるだけだぞ、もっとあんたは今の時間を大切だった人たちのことを思い出すことに使った方がいい、死の淵に自分が立っていることに気が付かないのか?」


「俺は…」


 エルヴァイスはその時、見てしまう。真っ赤に染まった穢れた大地の先に、ひとりのドワーフが立っていることに気付いてしまう。それは幻覚なのかエルヴァイスはその遠くに映る彼女から目が離せなかった。


「マロン……」


 そこでエルヴァイスは自分の長い長い人生の走馬灯を見た。

 生まれてから今ここに至るまで出会って人々、自分がいた大切な居場所、幸せだった出来事、悲しい出来事、ありきたりな日常の中の平凡な会話、記憶に残った戦い、大切な過去の友人たち、エルヴァイスが思い出したいことはそこにあった。記憶の劣化は治まり思い出せずにいたことも今ここですべてエルヴァイスは思い出していた。


『そうだ、俺は………ただ、君に……』


 気が付けば世界にはエルヴァイスとマロンの二人だけしかいない場所にいた。

 そこはどこまでも青空が広がるまるで雲の上のような神々しく明るい場所だった。


『エルヴァイス』


『マロン…』


 エルヴァイスはしゃがみこむと彼女と視線を合わせた。小さな体だ。エルフとドワーフでは視線の高さが全然違う。ただそれはとても懐かしいことだった。彼女と目を合わせるためだけに何度エルヴァイスはその膝を折ったことか、そのたびに君は背伸びをするんだ。


『本当に君なのか…』


『うん、なんていうか、久しぶりだね?』


 若い頃の姿のマロンが照れくさそうに笑っていた。それは錆びついた記憶の中で見た笑顔よりも何十倍も何百倍もエルヴァイスの心を揺り動かす魅力的な笑顔だった。


『ああ、久しぶり本当に、本当に長かった…』


 エルヴァイスの瞳からは自然と涙が零れ落ちていた。彼女を抱きしめる。そこには確かに彼女がいた。これほど嬉しいことはなかった。


『夢じゃないんだな…』


『うん、私はちゃんとここにいるよ』


 マロンもエルヴァイスを抱きしめると彼の頭を優しく撫でる。


『君が居なくなってから、ずっと、君のことを考えていた…忘れられなかった……』


 彼女を抱きしめる力が強くなる。もう離しはしないと、どこにも行かないでくれと願いながら。


『ヴァイス、私が死んだ後もちゃんと生活できた?』


 エルヴァイスはそんな当たり前のことを話し合えることすら嬉しかった。


『ああ、君がいなくなってからも俺は生きたよ…君との約束はちゃんと果たした…果たしたんだ…』


 エルヴァイスの震える声にマロンは穏やかな表情を浮かべた。


『そっか、それなら良かった、あのね、私も死んだ後ずっとあなたのことを想っていたよ…』


『あぁ、そうか…そうだったんだな……』


 エルヴァイスはそこで彼女の顔を改めて見た。


『ありがとう、マロン』


 エルヴァイスは彼女に口付けをした。


 やがて二人の頭上の青空から神々しい光が降り注いだ。


『時間だ、一緒に行こう』


 エルヴァイスが彼女の手を取ろうとしたところで、遠くに誰かいることに気付いた。


『………』


 その視線の先にいたのは、ミルケーだった。彼女は三人のエルフたちと共に楽しそうに話していた。その三人は、キリヤ、ピクシア、ブロッサーだった。


『ヴァイス?』


『ああ、そうだな、行こう。これからはずっと一緒だ』


 エルヴァイスが彼女を見下ろすと、彼女が顔を上げて微笑んだ。


『うん、ずっと、ずーっと一緒だ!!』


 エルヴァイスとマロンの目の前に光の扉が現れる。二人は手を繋ぎ歩くペースを合わせてその光の扉に向かって歩き始めた。


『ヴァイス、もうちょっとしゃがんでよ』


『やだね、お前が背伸びしろよ』


『もう、バカ、最低、意地悪!』


 そう言って二人は顔を見合わせると幸せそうに笑っていた。


『じゃあ、こうしよう!!』


『うわわわ!!』


 エルヴァイスがマロンを抱きかかえると、走って二人は光の扉をくぐって行った。


 やがてそこには温かい光が雲の大地に降り注ぎ、青空だけがどこまでも深く深く広がっていた。


 *** *** ***


 走る荒い息を弾ませて、隣にいるレイチェルの肩を借りて走り続ける。視界はぼやけ意識も朦朧としている。それでも、少しでも後悔を和らげることができるなら、ベッケはその足が動かなくなっても、這ってでも前に進む意思があった。


 エルヴァイス、親友の彼に逃がしてもらった分際でありながら、再び彼の元に戻るのはさっきすれ違った謎のエルフが原因だった。

 結界の出口の間際で出会ったそのエルフは、二人に助言めいたことを言った。


『エルヴァイスの元に、戻りなさい。あなた達は戻って彼の最後を見届けなければならない、たとえそれが悲劇であったとしても、あなた達はその運命を受け入れて、前に進まなければならない』


『あなたは一体…』


 その謎のエルフは続けた。


『二人にとって彼はとても大切な人なんでしょ?』


 その言葉がベッケの頭の中にずっと残って渦を巻いていた。


「すみません、レイチェル、あなたまで巻き込んでしまって…」


 彼女は首を横に振った。


「ううん、巻き込まれてなんか無いよ、ベッケについて行くのはいつだって私の意思だ」


「それでも、あなたまでついて来る必要はない、あんな誰だか分からないエルフの戯言に踊らされるのは私だけでいいんです…」


「だったら私も付き合わせて、一緒に踊らせてよ」


 レイチェルはベッケに笑顔を向ける。


 その彼女の笑顔と言葉にベッケは驚いたように目を見開いた後、すぐに微笑んだ。


「レイチェル、あなたが私のパートナーで良かった…」


「それは私も同じよ、ベッケがパートナーで良かった」


 ベッケとレイチェルが進む道には、このスフィア王国の国民である光の人間たちが闇の中光源となって揺らめいていた。

 通り過ぎていく彼が目に入るたびにベッケは彼らの存在を考えられずにはいられなかった。

 ベッケですら説明できない光となった人たち、彼等が何のために光に変えられたのか、それは管理のしやすさだったのか、はたまた何かの材料なのか、それは術者本人であるミルケーにしか分からなかった。しかし、彼らが犠牲者であることに変わりはなかった。


『彼らをどう利用するのでしょうか…ミルケーは……』


 ベッケがそう辺りを見渡している時だった。


 空を追っていた闇の結界が突如はじけて崩れ去った。


「ベッケ、結界が…」


「三つのコアを破壊した…まずいです…急ぎましょう!!!」


 ベッケはレイチェルの肩を借りるのを止めると最後の力を振り絞って走り出した。


『何か…嫌な予感がする……何か………』


 ベッケの胸の内に不安が広がる。その重い感情を抱えながら、ベッケは身体を前へ前へと進めた。

 そして、ベッケとレイチェルはまたあの忌まわしき広場に戻って来てしまった。あたりには鼻を曲げるほどの死臭が漂い、大勢の人々の死肉がぐちゃぐちゃにかき混ぜられては、最悪の光景が広がっていた。


 そんな地獄のような大地とは反対に、結界が崩壊していき、透き通った青空が広がって行く。


 そして、その広場の中央で二人は目撃してしまう。


 ハルとエルヴァイスが一騎打ちをする瞬間を。


「ヴァイス!!!!」


 ベッケが手を伸ばして彼の名前を呼ぶ。


 最後にエルヴァイスと目が合った。彼は最後の最後まで幸せそうに笑っていた。


 それは一瞬の出来事だった。


 次に瞬きをした時には、もうエルヴァイスの心臓は巨大な一振りの刀によって一突きにされ、彼の胸には虚空が開いていた。


「————————————————————————」


 その光景を受け入れられなかったベッケは声にならない声で絶叫していた。


 ***


 同時刻。

 王都エアロの中心街その破壊しつくされた広場に足を踏み入れた時、視界いっぱいに惨たらしい死体の山と血の海が広がっていた。ライキルはそれを見た時吐きそうになるのを何とか堪えていた。激しい戦闘があったことを物語るこの広場で、ライキルはひとつの不安を抱えていた。


「酷いありさまだな…」


 隣にいたエウスが周囲を見渡しながら言った。


「そうね…」


 この死体の山の先にハルがいるのかと、そう思っただけでライキルは彼に最初にどんな言葉をかければいいか分からなかった。こんな悲惨な戦場を目の当たりにして大丈夫なわけがなかった。


『こんな死体の山を見たらハルは…よし、早く見つけて私が一緒に居てあげなくちゃ、そして、大丈夫だよって慰めてあげるんだ』


 ハルのことが心配だった。とてもやさしい心を持った彼にこの光景は酷だと思っていた。その痛みを少しでも自分も分け与えてもらいたかった。


「血の匂いで鼻が利かん、ハルの場所も分からん…」


 ガルナは鼻を摘まみながら、顔を歪めていた。


「手あたり次第探すしかないですね…」


 さすがは精鋭騎士のビナは一切動じずに、警戒をしながら周囲を丁寧に探索していた。


 ライキルたちが死体の山をかき分け進んで行くと、やがてその真実にたどり着いてしまうことになった。そして、その真実はその場にいたみんなに衝撃を与えることとなった。


 屍の山をいくつか超えると、ライキルの視線の先に、まだ生きている生存者たちが映る。


「ハル…ハルだ!」


「おい、ちょっと待て、まだここは戦場なんだぞ!」


 そう言って走り出したライキルをエウスが呼び止めるが、止まるわけにはいかなかった。一刻でも早く、ライキルはハルの顔を見て安心したかったし、安心させてあげたかった。


『辛いことばかり、ハルに押し付けてごめんなさい…こんな酷い場所でハルは戦ってたんだ、私がハルを救ってあげるんだ…』


「ハル!!!!」


 その姿がはっきりと見えた時には、もう、すでに遅かった。いや、それを言うならもうとっくの前から彼は終わってしまっていた。


 ライキルは目撃してしまう。


 ハルが持っていた刀でエルフの心臓を貫く瞬間を、一切容赦のない一突きは一撃でそのエルフを絶命させていた。


「あ………」


 全身真っ赤に染まったハルがそこにはいた。彼のその血がすべて返り血だと分かると、この広場に広がる死体の山々を築き上げたのが誰なのか一瞬で理解してしまった。


「そんな…」


 ハルが刀を引き抜くと、そのエルフは地面に倒れた。そして、彼は続けて持っていた刀を振り上げて、そのエルフの頭に刀を突き刺しとどめを刺す。


 そこにいるのがライキルの知っているハルではないことなどすぐにわかった。けれどそれがハル以外の何者でもないことも同時に理解しなければならないことにショックを受ける。そこにはもう彼の優しかった面影などどこにも残っていなかった。黒い瞳は転がる死体をただ虚ろに眺めていた。


 ***


「…は……あ…ああ………」


 ベッケの視界がその光景を受け入れられずに歪む。

 エルヴァイスの胴体が力を失ったように地面に倒れ、そこらに広がる死肉同然の存在になる。

 ハルがその死体を虚ろな目で眺めては、最後のとどめに頭部に刀を突き立てた。それを見たベッケは疲れ切った身体に全力でマナを取り込み魔力に変換した。


「き、貴様ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


「ベッケ、ダメよ!!!」


 レイチェルがとっさにベッケの身体を羽交い締めにするが、ベッケはもがき叫ぶことを止めなかった。


「許さない!!俺たちの王を、俺の親友を!!殺したな!!!!」


 ベッケはまるで知性の無い獣のように、目を爛々と光らせ、魔法を放つ。


 特殊魔法【針魔】。


 ベッケが羽交い締めになりながらも、両手の間の空間に銀色の針を形成し、ハルめがけて放った。


 その魔法攻撃は、凄まじい速度でハルへと直進していった。


「死ねえええ!!!」


 だが、ベッケの死に物狂いの魔法も、ハルが片手を翳すだけで簡単に受け止められてしまい、しまいにはその魔法は素手で握りつぶされて砕かれてしまった。


「ベッケと、レイチェルか、お前ら裏切り者もここで死ぬんだから、動くな楽に殺してやる」


 ハルが二人の方に刀を持ってゆっくりと近づいて来る。


「お前ええ、許さない…レイチェル!離してくれ!!!」


 ベッケの威勢の良さは完全に狂化による狂気に染まったものだった。


「もう無理よ、私たちじゃ、勝てない…降伏しなきゃ殺されるよ、そうしないとエルヴァイスが死んだ意味がなくなっちゃうよ…」


「知るかああああああああああ!!!」


 だがそこで限界が来たベッケが絶叫した後大量の血を吐くと、その場に膝をついた。


「ベッケ!?」


 レイチェルが苦しむベッケの肩を支えた時だった。視界に血に染まった靴が見えた。二人のすぐ目の前にはもうハルがいた。


「私たちを殺すの?」


「当たり前だろ、裏切り者を生かす価値は無いからな。…それに俺は決めたんだ。お前らのような人間を掃除して、この世界をもっと安全に過ごしやすい世界を創るって…それは魔法なんかじゃなく、ひとつひとつこの手で少しずつ、確実にな…」


 ハルはそういうとレイチェルの隣にいたベッケの首に刀の先を当て、そのまま振り下ろそうとした。


「させるわけないでしょ!」


 当然のようにレイチェルが魔法で即座に全身を強化し、ハルに襲い掛かった。


 しかし、レイチェルがハルにとびかかるも、あっさりと薙ぎ払うような横からの蹴りを彼女の脇腹に入り、骨という骨は砕かれ、死体で溢れる血の海に死体と一緒に転がった。


「うっ……うう………」


 すぐには動けないレイチェルを一瞥すると、ハルは足元にいたベッケの襟元を掴んで無理やり起き上がらせた。

 そして、彼の首に刀の刃を合わせる。ベッケの首がその刃に軽く触れただけで血が一筋流れた。


「ハルさん、あなた……」


 ただその時だった。狂化を保てなくなったベッケが正気の状態でハルの異変に気付いた。


「泣いてるんですか?」


「………」


 ハルの頬には気が付けば涙がこぼれていた。


「あれ…」


『なんで俺は泣いているんだ?』


 ハルはそこでエルヴァイスの死体に目をやった。それはもう他の死体と何も変わらなかった。それは何の可能性も無いただの死体だった。死はあらゆる可能性を無に還すことと同義であった。けれど、だからこそ、そこにあった可能性に目を向けると無限の可能性があったことが分かる。

 ハルが瞳を閉じれば、あったかもしれない、彼との未来がそこにはあった。


 もっと違う時間軸の違う場所で、立場を分かつ必要のない、飲み屋なんかで出会っていれば、二人は友人にだってなっていたかもしれなかった。


 そんな分かり合えた未来を潰してまで選んだ選択が彼の死だった。


『そうか、俺は彼の死を選んでそれが悲しくて泣いているのか…俺と彼は分かり合うことだってできた。それでも俺は彼の死を選んだ』


 ハルは未来で見て来た光景を思い出す。それだけでハルは自分が何も選択を間違っていないと断言できた。そして、その未来がもう二度と来ないようにその時間軸から先の世界を、その時間軸ごと消し去り、新たな未来が来るように強制的に改変した。


『後からじゃ遅いんだ…後からじゃ誰も救えないんだ…』


 エルヴァイスを殺すことでさらにあの最悪の未来への因果を断ち切ることができた。


『俺は何も間違っていない、それに間違ったこところでそれでもいい、ライキルたちが幸せに暮らせる世界が来ればそれでいい、良いんだ。そこに俺がいる必要もない』


 冷酷さを取り戻したハルが、裏切り者の首を斬り飛ばそうと、刀の柄を引こうとした時だった。


「ハルってば!!!」


 その声の主を見るまでも無かった。ハルはここに来ることをあらかじめ知っていた。ただ、それでも手は止まってしまった。


「ライキル…」


 血に染まったハルの後ろには息を切らしたライキルが立っていた。そして、彼女はハルを後ろから抱きしめていた。


「もういいよ、ハル、どうしてベッケさんと戦ってるんですか?」


 ハルはベッケを血の海に突き飛ばすと、ライキルに向き直った。


「彼らは俺たちを裏切ったんだ、もう、二人は敵なんだ。だから、殺さなくちゃいけない」


 ハルがそう告げるとライキルは首を横に振った。


「そんなことないです…殺す必要はもうないです。それはハルが一番よく分かってるはずです!」


「ライキル…ダメなんだ、彼らが生きてるだけでライキルたちに危険が及ぶ、俺はそれを見過ごすことはできない」


「私は自分の身ぐらい自分で守れます!だから…」


 ハルは刀を置いて泣きじゃくるライキルを改めて強く抱きしめた。そして、言った。


「守れなかったでしょ?」


「………」


 ライキルはその言葉の意味など嫌というほど分かっていた。自分の弱さをライキルは知っていた。


「ここにこれたのも俺がいるから…もし、ここに俺が居なかったら?ライキルは自分の身を自分で守れてた?」


「…そ、それは………」


 ライキルはついさっきも自分がハルに救われていたことを思い出した。どこからともなく現れて、自分のことを救い出してくれたことを。


「俺はライキルを失いたくない、君に危険が及ぶものすべてを殺しつくすまで俺はもう止まらない、分かって欲しい、俺は君が大切なんだ…」


 ハルはそう言うとライキルの元から離れた。


「ハ、ハル…」


 もう一度彼に手を伸ばそうとした。けれどそこから先、ライキルは一歩も進めなかった。殺意を纏ったハルを見たライキルはその場から身動き一つできなかった。


『動けない…だけどこのままじゃ…ハルが戻ってこれなくなる…どうしよう、どうすれば…』


 もうすでに彼は戻って来るきも無いのかもしれない。分かってもらう気も無いのかもしれない。だけど、それでも。


『私はハルを救いたい…たくさん、救ってもらったから!ここで動けなくてどうするのよ、ライキル!!』


 ライキルは自分を奮い立たせる。ハルの殺意は今まで感じたもののどれよりも恐ろしいものだったが、ライキルにはその殺意が深い優しさから来ているものだからと知っていた。


 手を伸ばすもう一度、届けと願って。


 ハルが倒れているベッケの前に立って、刀を振り上げる。


『言葉が通じないのなら…』


 ライキルは自分の懐から短剣を取り出した。


「ハル、これならどう?」


 我ながらあまりにも危険な賭けだった。だけど、彼を止めるならこれしかないと思った。あの日か見た、絶望をハルにも知ってもらいたかった。愛する人を失う気持ちを少しでも、それを自分という存在で補えるかは少し自信が無かったけど、そこはハルのことを信じたかった。それにどれくらい愛されているのかという根拠も欲しかったのもあったのかもしれない。


 それでもその行動はあまりにも致命的だった。


 ライキルは持っていた短剣を思いっきり自分の首に、突き刺さした。ハルが見る間もなく感知する間もなく一瞬のためらいもなく、即死する勢いでライキルは自分の首に短剣を突き刺した。

 手が赤く染まりそれが自分の血だということを知った。

 かなりの量が溢れだす。

 するとすぐに死という感覚が徐々にライキルに迫っていることを告げるように、身体が少しずつ熱を失い始める。


『私が居なくても、大丈夫、ハルにはガルナもビナもいる。ルナさんはちょっと腹立たしいけど、それでもいい、彼女もハルを愛してくれてることに変わりはないから…だけど、三人だと上手くいかなそうだな…フフッ、考えすぎかな………』


 視界がぼやけ始める。首回りが熱くなり、身体の感覚と、意識が遠のいていく。


 そのまま、傷口を開くように横に短剣を引き抜こうとした。

 だが、ライキルがそのまま短剣を引くことは無かった。

 気が付けばハルがライキルが引こうとしていた短剣の手を止めていた。


「ライキル!!!!!!」


 眼前には泣いているハルの顔があった。それはとても人間らしい表情だった。


『それでいい、それでいいんだよ、ハル…』


「ライキル…ダメだ、ダメだ…ダメなんだ…それだけは…それだけはダメなんだ……待ってくれ、君だけはダメなんだ………」


 ハルの大粒の涙がライキルに次々と雨のように降り注ぐ。


『あなたは誰よりも優しい人だよ…私はそれを知ってる…』


 力なく笑うライキルの視線の先ではハルが周りに呼びかけていた。


「誰か、誰か、彼女をライキルを救ってくれ!!!!」


 ハルの腕の中でぐったりと彼女が力なく倒れる。一緒に崩れ落ちるようにハルはその場に座り込んで血が溢れないように短剣が突き刺さった傷口を押さえていた。しかし、もう即死と言ってもいいほどの傷口を押さえようにも手遅れだった。

 ライキルの口から大量の血が吹きこぼれた。


「ああ……」


 ハルの中でマグマのように力強い絶対的な闇が吹き上がって来るのを感じた。


「ここも失うのか…」


 彼女の失われていく命の灯が消える前に、ハルは前に手を翳した。それは世界に向けられたものだった。


『そうだ、さあ、この世界も終わらせよう』


 聞き覚えのあるおぞましい声が響いた。けれどハルにはそんなことどうでも良かった。


「せめてもう苦しまないように、終わらせるよ……」


 天性魔法。誰にでも備わっていると言われているマナやエーテルに一切頼らない自分だけの魔法。

 結界が壊れ一切の制限がなくなった世界で、ハルは最大出力の天性魔法を放とうとした。

 それが意味するのは紛れもなく、世界の消滅だった。時間軸や概念すら破壊する世界終焉の天性魔法。


「ハル!!!」


 ハルの元に三人の揃った声が届く。そこにはエウス、ガルナ、ビナの三人がいた。

 手に抱えられたライキルの姿を見た三人の顔色が一瞬で絶望に変わる。

 赤く染まった大地を駆けて三人はハルの元に辿り着いた。

 エウスがすぐさまライキルの手のひらを翻して脈を取る。


「まだ、死んでない」


 エウスが身に着けていたポーチから包帯を取り出すとすぐに傷口を強く押さえつけて止血にかかった。


「短剣は絶対に抜くな、出血が酷くなる。ハル、そのまま傷口を押さえて頭を下げさせるな!!」


「わかった」


 ハルは震える手でそれでもこれ以上彼女の命が擦り減らないように止血を続けた。


「ガルナ、ビナ、二人とも白魔法使える奴を呼んできてくれ!!」


 二人はすぐに広場から駆け出すと、街の方に駆け出していった。


 その時だった。


 街全体から、ざわざわと喧騒が聞こえて来た。


「なんだ…」


 エウスが周囲を見渡すと、広場の外周の建物の路地からここで暮らしていた人々が次々と鮮血に染まった広場を見ては驚愕していた。


「光になって人たちが戻ったのか…」


 エウスはそこですぐに立ち上がり、ハルに言った。


「もしかしたら、戻った人たちの中に白魔法を使える奴がいるかもしれない、探してくる。ハルはそのままライキルの傍にいてくれ」


 そう言うと、エウスは全速力ですぐに街の中に走っていった。


「ライキル、今、みんなが白魔導士を呼びにいったから、もう大丈夫だから、だから…死なないでくれ…」


 ハルが死にゆくライキルに言葉をかけていると、そこにルナが現れた。


「ルナ…」


「—ごめんなさい」


 そう言うとルナは、ライキルの首元に手を当て白魔法を発動させた。しかし、彼女の手からは微弱な光が漏れるだけで、ライキルの傷がいえることはなかった。


「私に白魔法を使えるだけの体力が残っていれば…ごめんなさい……」


「いい、良いんだ…もし助からなければここも終わりにするだけだ…」


「終わりにする?」


「なんでもない…」


 ハルは冷たくなっていくライキルに視線を落とした。この世界の今の時間軸を消し飛ばしこの結果を無かったことにすれば、ライキルが自殺する前の世界線に戻れるハルはそう考えていた。

 そう考えている時だった。


「それは無理だよ」


 ハルが顔を上げると、そこには鮮やかな金髪を流す、女性にも男性にも見える、翡翠色の瞳をしたエルフが立っていた。


「未来を消せば今に干渉することはできる。だけど、今を消し去って未来が来るわけがない。それは死だよ、今だけは絶対に終わらせてはいけない」


「レキさん…」


 ハルの前にはレキがいた。


「だから、君は今を懸命に生きなくちゃいけない。それだけは絶対にあきらめちゃいけない。例え未来を消そうが、過去を失おうが、今ここにいる君は望む未来に向かって走り続けなくちゃいけない」


 レキがライキルの首元に手を翳すと、そこから白い光が大量に溢れ出した。それは奇跡の光とまで呼ばれた白魔法の光だった。


「今を生きていればこうして幸運にだって見舞われることはある。ハルくん、君は生きなくちゃならない、どれだけ悲しい現実が目の前に訪れたとしても、君はね、君だけはね、最後までこの世界を生きぬかなくちゃいけない。だってそれは約束だったはずだ。君とあの子が交わした最後の約束だったはずだろ?」


 レキがライキルの首元から短剣を抜き取る。しかし、血が溢れることなく白魔法でみるみる傷が癒えていく。ハルはその光景をまるで奇跡を目撃した人のように、まじまじと見つめていた。

 ハルが触れるライキルの手には温かさが戻っていた。


「あ、ありが…ありがとうございます…あなたは命の恩人です……」


「ハルくん、僕に恩なんて感じなくていい、これは当たり前の施しだ」


「いいえ、あなたはライキルを助けてくれました、何がどうであれ、あなたは私の一生の恩人です」


「僕はね…本当は、君にそんなことを言われる資格だって、無いんだよ…」


「ありがとうございます、ありがとうございます」


 ハルは涙を流しながら、レキに何度もお礼を言った。


 するとハルは、ライキルが安全だと分かるとすぐに彼女をその場に残して、立ち上がった。それはまるで人格が入れ替わったかのように、その表情は冷酷非情な闇に戻っていた。


「レキさん」


「何かな?」


「ライキルのこと頼んでもいいですか…じきにみんなも戻って来るはずなので」


「構いませんよ」


 ハルはそう言うと刀を握った。


「彼らのこと殺すのですか?」


「レキさん、あなたにはこれから先がどうなるか、見えているんですよね?」


 その質問に彼は何も答えなかった。

 しかし、その沈黙だけでハルが彼の答えを知るには十分だった。


「だったら聞かなくても分かるんじゃないですか?」


「ハルさん、どうか僕の言葉忘れないでください。今という時間は今しかない、だから、あなたは何が大事なのか選択しなくちゃいけない、それはライキルさんたちとの時間なのか、それとも…」


「未来の俺は笑っていますか?」


「………」


 レキは何も答えなかった。ただそれこそ、その沈黙だけでハルが得る答えは十分だった。


「そうですか…ありがとうございます。それじゃあ、ライキルのことよろしくお願いしますね」


 ハルの真っ暗な闇で出来た水晶ような底知れない瞳がレキを映した。その眼差しはレキが身震いするほどの底の見えなさだった。


「ルナ、行くよ」


「え、あぁ、ハイ!!!」


 ハルの後ろをフラフラのルナがついて行く。彼女は嬉しそうにハルの手に抱き着くと、彼はそれを邪険に扱わなかった。


 ハルは一切ライキルのことを振り返ることなく、王都エアロの街の中に消えていった。


 レキは最後までハルがこの血塗られた広場からいなくなるのをずっと見つめていた。


 やがて視線をすぐ傍にいたライキルに落とすと、すやすやと整った呼吸を繰り返す彼女がそこにはいた。容態もすっかり安定し眠り続ける彼女にレキは静かに告げた。


「ライキルさん、あなたは彼にとっての希望です。最後まで見捨てないで上げてください…」


 レキのその言葉がライキルに届くことは無かった。


 ただ、それでも、愛する人を求めるような声で眠っていたライキルは寝言を呟いていた。


「ハル」


 

ここまで読んでいただきありがとうございました。ここで第五章《新世界と古き血脈編》は終わりですが、物語は続きます。次章は終章。舞台は光と影の国【レイド】と欲望の国【イゼキア】になります。

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