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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
新世界と古き血脈編
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古き血脈 彼の名はエルヴァイス

 会議室で暴動が起こった後、ベッケはひっそりと混乱に紛れて自室の宿に戻っていた。新しく造り直された部屋を見渡すと、改築された部屋は広々と前の部屋の二倍ほど広く壁を壊し拡張されていた。

 その部屋にはキッチンや浴場のほかに、書斎へと続く扉があり、その扉を開くと紙の匂いに包まれた。大量の資料と本の山が本棚に押し込まれていた。これは以前箱に入っていたものを開封したもので、改築した際、本棚を追加してもらったことで、ベッケの部屋は書斎となった。書斎のテーブルにある椅子に座る。傍にいある窓の外はまだ昼前で、日が高く昇っていた。

 テーブルに重なった紙に目を通す。まるで先ほどのごたごたした騒ぎなど無かったかのようにベッケはすっかり自分の世界に入り込んでいた。

 今朝、届いたその紙には、ベッケが率いる組織が集めた、このレゾフロン大陸で起きたことが大まかに記載された報告書が置いてあった。

 ベッケはこの中から特に重要そうな情報を送ってくれた者たちに対してだけ追って詳細を要求するように返事を書き始めていた。


 報告書のレゾフロン大陸の各地域の見出しはこうだった。

 北西部 落石により一部イゼキア王国内の村に被害。落石の原因を調査中。

 西部  新たな若き女王により、シフィアム王国復興に目覚ましい進展。

 北東部 大雪により一部地域の街道が通行止め。一部の国が孤立中。

 南部  危険視していた王国で革命の兆しあり、対応するか至急連絡されたし。


 ベッケは南部に置いている支部にだけ手紙を書こうとした時だった。


 部屋の扉が開き、何かを探すように慌ただしくドタバタとその足音はベッケのいた書斎にまで響いて来た。改築で部屋が広くなった分、収納スペースは増えたが、物を探す手間が増えたことだけは厄介なところだった。だが、その部屋に入って来た人が何を探していたかは明白だった。

 すぐに書斎の扉が開かれると、その部屋に入って来た彼女は言った。


「ベッケ、説明して」


 ベッケが手紙を書こうとしていた手を止めた。ペンを置いて彼女に向き直る。


「何をですか…?」


 彼らしくなかった。当たり前のことをしらばっくれようとしていた。


「何って、なんであんな面倒なことをしたのかってことよ、あなたが、あの場でフルブラットの人間だったってこと言う必要があったの?」


 レイチェルがそう言うと、ベッケは頭をもたげ視線を落とした。


「ないですよ、言う必要性はひとつもなかった…」


 ベッケが肩を落とす。レイチェルが彼の前でしゃがみ傍に寄って彼の手を取った。


「じゃあ、なんであんなこと言ったか私には教えてくれる?」


「もちろん、レイチェルにしか伝わらないとも思うので…」


 ベッケのその言葉で彼女はヒマワリが咲いたように笑った。冷えた書斎にも夏の暖かさが戻ったような気がした。


「あなたに信頼されてて、良かった」


「君と何百年一緒に居たと?」


「それもそうね、でも、やっぱり嬉しいよ、そういうのって」


 にっこりと笑うレイチェルを眺めているとベッケは遥か過去の記憶を見ているようだった。それは酷く懐かしく、気を緩めればその郷愁に囚われてしまいそうになった。

 思いとどまれるのは、ここにレイチェルがいるから、大切な人が傍にいるからこそ、道を踏み外さなかった。


『きっと、彼女にも誰かがいれば今この未来は違ったものになっていたんじゃないですか…』


 ベッケが古き友人のことを思った。道を踏み間違えた友人のことを。


『どうなんですか、ミルケー…』


 ベッケが思いを馳せていると、レイチェルが指を加えて待っていた。


「ねえ、ベッケ」


「ああ、すみません、なんで私があの場で過去蒸し返したかってことですよね?」


「うん」


「単純なことです。認めたくなかったんです。今のフルブラットを名乗る連中のことが…」


 子供じみた理由だった。けれど、そんな彼の言ったことに対して、レイチェルの顔が憂いを含んだ笑みを宿していた。


「フルブラットはもうとっくの昔に死んでいる。そんな墓を掘り返しては、我が物顔でその名を利用している彼女たちが許せなかったんです。だから、私は、本当のフルブラットというものを女王に知っておいてもらいたかったんです」


「フルブラットはエルフ社会の裏組織。記録に残らないからね…」


「だけど、もっと別の場所、別のタイミングでも十分話し合う時間はありました。ただ、どうしてもあの場で、女王にまでフルブラットを利用されたことに、自分でも抑えの利かない感情が合ったのかもしれません。ですが、あの選択は自分でも愚かだと自覚しています…」


 レイチェルが「そっか」とだけ言うと、ベッケの頭を優しく撫でた。彼はそれに対して申し訳なさそうに目を閉じていた。


「ベッケはみんなの過去を守ってくれようとしていたんだね」


「今でも、時々思い出すんです。みんながいたあの日々のことを…」


 ベッケはそれから深呼吸をしては、続けて苦しそうに呟いた。


「忘れられないんです」


 エルフには特有の病があった。病名はノスタルジア。それは長寿であるが故に過去体験してきた強い思い出に飲み込まれてしまい、過去の記憶から抜け出せなくなるという病だった。

 過去と現在の区別がつかなくなり、症状はその人の思い出に強く左右されそれが忘れられない思い出ほど強くその人を過去に引っ張った。過去に引っ張られた人は、幻覚や記憶障害になり、行動も過去に準じたものになってしまう。具体的には、大切な人が亡くなり長い月日が経ったにも関わらず、レストランなどでその亡くなった人の分まで席を取り料理まで頼み、独り言のように誰もいない隣の空席に話しかけたり、ノスタルジアは人を過去に引きずりこんだ。これは一例であったが他にも、会話中に突然過去の出来事が出て来て齟齬が出たりと日常生活に支障をきたした。

 酷い時だと、過去を取り戻そうと犯罪に走ることもあり、エルフの中では厄介な病として知られていた。

 その症状が続くと、最終的にノスタルジアは、その人を過去にした。つまり、ノスタルジアは死の病でもあった。


「うん、分かる、分かるよ、辛いね。だけどほらベッケ、私たちは今を生きなきゃ…」


 ベッケが縋るように見つめる先には微笑むレイチェルがいた。


「生きるとはどうしてこうも辛いのでしょうか…」


「辛いよ、辛いけど生きている間じゃなきゃできないことがある。過去は美しくて楽しくて素敵だけど、それは今の私たちがあるから強く輝くってこと忘れちゃだめだよ」


「レイチェルは耐えられなくなることはないのですか?あの日々に戻りたいと過去を思うことはないのですか?」


 レイチェルは目を細めて、過去に対して思いを巡らせるように答えた。


「あるよ、あの頃に戻りたいってことは何度もね。もう一度みんなと一緒に居た時間を過ごしたいって、だけど、私はそれ以上に誰も過去には戻れないことを知ってる。それは残酷だけど、私たちは今を生きるしかない。どこにも行けない私たちが唯一存在できる場所がいまいるここだってこと」


「君はやっぱり強い人ですね」


「私はきっとベッケのように深く考えられない質の人間だから、ほら、私って結構この拳で解決してきたことの方が多いでしょ?」


 レイチェルが首を横に振りながら答えた。


「そんなことない、君は私なんかより、思慮深く、思いやりのある人だ。そんな優しい君に私は惹かれたんです」


「そんなこと言ってくれるのはベッケ、あなただけ…」


 ベッケとレイチェルは互いに信頼しきった瞳でお互いを見つめた。目を閉じ深い闇が広がって相手の感触と体温だけを感じる、短い口づけをした。


「ベッケ、安心してあなたが何度過去に囚われようと、私があなたより一分一秒でも長く生きるから、不安になったら私の傍に来て、今の私がちゃんと連れ戻すから」


「ありがとう、だけど、君を最後に看取るのは私でありたい。そこは譲りたくないんです」


「そしたら、ベッケは過去に囚われて戻ってこれなくなるよ」


「君のいない現実なら、夢の方がいい。レイチェル、君になら私は生涯囚われていたいんです。ダメですか?」


「それがあなたの幸せなら、私は止めないかもしれないなぁ…」


 レイチェルが顔を赤くしながら俯く。ベッケはそんな彼女を愛おしそうに見つめていた。


 最高の沈黙が続いた時、書斎の隣にあるリビングの玄関の扉からノックの音が鳴った。


「誰かな?」


「きっと、衛兵だ。私から詳しく事情を聴きだしたいのでしょうね」


 ベッケがレイチェルと一緒に書斎を出て、扉を開けるとそこには。


「ごきげんよう、ベッケさん、少しお話をしたいのですがよろしいでしょうか?」


 スフィア王国の女王ジェニメアがそこには立っていた。


 ***


 ベッケとレイチェルの部屋のリビングのソファーには、女王様が座っていた。金髪で灰色の瞳をした彼女は、レイチェルが出した紅茶を嗜んでいた。


「ありがとうございます。おいしい紅茶ですね。これもレイドの皆さんが物資を運んできてくれたおかげですね」


 彼女の落ち着いた佇まいとは別に、レイチェルはそわそわと常に体のどこかを動かしていた。ベッケは、女王とテーブルを挟んだ向こうのソファーに座っており、隣に落ち着かないレイチェルが腰を下ろしていた。


「陛下…」


「ジェニメアでいいわ、今の私は女王なんかじゃなくて、ただの学者といったところかしら」


 ジェニメアが紅茶のカップをテーブルに置くと、背伸びをして体をほぐしていた。


「最近は疲れが溜まっていてダメね」


 緊張をほぐすような仕草から、確かにここにいる彼女はいまのこの時間だけはどこにでもいるひとりのエルフの女性なのだと感じられた。それでも優雅さや圧倒的な王家の気質だけは残っていた。そのため、レイチェルはベッケの横で置物のように固まっていた。


「護衛の者はお連れではないのですか?」


「連れて来てないわ、ここには人目を盗んでお忍びで来たの」


「それは大胆なことを、みんなが心配します」


「そうでしょうね」


 ベッケの心配をよそにジェニメアは続けた。


「だけど、今はあなたと腹を割って話すことの方が重要だと思ったの。それも立場を捨て去ってね。教えて欲しいのあなたのこと、フルブラットがどんな組織だったかってことを、そして、今のフルブラットとどういう繋がりがあるのかしら?私は報告者たちからはフルブラットという裏社会の凶悪な組織による反逆だという認識しか持ち合わせていなくて、だから、あの場では私はフルブラットの名前を使って人々をまとめようとした。だけどあなたは言った。自分は元フルブラットの人間だって、元ってどういうことなのかしら?今の彼らとは何が違うの?」


 彼女の目は知識欲に取りつかれたように質問を重ねた。ベッケはそんな彼女に対していつも通り落ち着いて対処した。


「最初にはっきりさせておきたいのは、もう、フルブラットという組織は何百年も前に解体されています」


「では、どうして、王都にフルブラットを名乗る者たちが蔓延っているのかしら?」


「彼らの中に、一人だけ、私たちと同じように元フルブラットの人間がいます」


「それは今回の事件の首謀者のミルケーというエルフでいいのかしら?」


 女王にもミルケーという名前は浸透していた。ベッケはあらかじめスフィアの上層部の連中にもある程度情報が行くように根回しはしていた。相手が誰だかも分からず、スフィアの上層部側が無謀な策を打ち立てないように、釘を刺しておいた。フルブラットは名前だけが独り歩きした現代にも通じる四大犯罪組織であった。それは知る人ぞ知るものであり、特にお国の上層部は彼らの動きには気を遣っていたためよい抑止力となった。

 消耗している時に間違った判断で、無駄な犠牲が増えることは得策ではないのだ。特に今回は王都が丸々奪われるという、異例中の異例だったのもあり、ことは慎重を極めていた。


「はい、彼女も元フルブラットの人間です」


「あなたは彼女のことをよく知っているということね?ん?まって私たちってどういうこと?」


 そこでベッケが少し緊張しているレイチェルを紹介した。


「ここにいる彼女は、私の妻であり、元フルブラットの一員でもありました」


「本当にそうなの?」


 気後れしたレイチェルが、小さく頷いた。


「そう、他にはもういないの?その元フルブラットの人間は」


「ひとりはジェニメア様もご存知の通り、王都襲撃時我々を街から脱出させてくれたエルヴァイスという男がそうです。あともう一人いるんですが、そうですね…いまその人は消息不明で生死も不明です。なんせ五百年以上も前の話ですからね。はぐれてしまっていても無理はないです」


「五百年…ちなみに、あなた方のご年齢は?」


 恐る恐るジェニメアが尋ねるとベッケが気兼ねなく答えた。


「私と彼女はもう六百歳を超えています」


「そうだったのね…」


 エルフという種族は、自分より年上の長寿のエルフを見て初めて自分たちも彼らと同じなんだと気づき驚くのだった。彼女もいまそんな状態だった。しかし、エルフにとってそれは当然子供の頃から言い聞かされてくるものであり、取り乱すことなどなかった。それにジェニメアだってもう他種族の年齢でいったらとっくに死んでいてもおかしくない歳ではあった。


「それで話を戻すけれど、今のフルブラットと昔のフルブラットは何がどう違うの?そもそも私、城にあった資料を読んだだけでそれ以外の知識がないのよ」


 ベッケはそこですぐさま何から話すか頭を整理した。


「何もかもですが、今のフルブラットはミルケーが私利私欲のためだけに使っている事だけは確かです。本来、フルブラットはエルフの故郷【エルド】の王家に仕えていた特殊部隊でした。任務は主に国の防衛を任されていました」


「通りであなたは結界魔法に強いってわけなのね」


「当時は他種族の間で、エルフ狩りが流行っており、エルドは窮地に追いやれていました。そこで台頭してきたのが、我々フルブラットの当時の総帥であるエルヴァイスでした。私たちはみんな彼の元に集い、エルフの故郷であるエルドのために戦いました」


 熱心に聞いていたジェニメアがそこで顔をしかめベッケに質問をした。


「あの、私が読んだ資料には、フルブラットは四大犯罪組織だって書いてあったのだけれど、これはどういうことなのかしら?」


 その質問にベッケはためらうことなくすぐに答えを出した。


「エルフの故郷とスフィア王国、そもそもこの二つのエルフの国が存在しているのはどういう意味なのか、ジェニメア様はご存知でしょうか?」


「ええ、それはもちろん。私が知らないはずないわ。スフィア王国はエルフが他種族と交流を図り、彼らと共存をするために立ち上げた国で、エルフの故郷はエルフだけしか入国を許可しないエルフだけの国。正反対の思想による意見の相違ね。それは分かり合えるはずが無かった。そうやって争っているうちにエルフたちは己で選択肢を増やし、結果、故郷とスフィアに分かれた。根本的に同じ人間でも思想が違うだけで、相手を受け入れられなくなる。残念だけどそれが私たち人間という生き物なのよね」


 ジェニメアが紅茶に映る自分の顔を見つめていた。


「失礼しました。つまり、ジェニメア様が仰ったことに沿えば、エルフの故郷とスフィアの仲は良くない。これは当然ですよね」


「あら、それは昔のことじゃなくて?」


「ええ、今はエルフの故郷も随分と衰えて、とてもじゃありませんが、スフィアのような大国となった相手に歯向かったり、喧嘩できるほどの体力は残っていません。もともと、人を受け入れなかったのですから、朽ちていくのは当然の結果なのかもしれません。ですが、それでも、やはり古くから生きるエルフたちはまだ故郷に残っています。そこには他種族をよく思っていない者たちも大勢います」


「牙をむかないだけで、ちゃんと生えていたってことね…」


「あくまで私の憶測で真実ではないのですが、それが今回王都襲撃という形で現れたということも考えられます。ただ、今回はミルケーの単独犯行という線が一番強いのですが、この件に故郷が絡んでいるのだとしたら、ことは根深いものであると考えなければなりません。そうなれば故郷はスフィアの敵となり、またエルフ同士で殺し合う最悪の時代が訪れることになります。そうなった時、ジェニメア様、あなたはどうなさいますか?」


 外の外気が窓の隙間から流れ込んで来た。ぱちぱちと部屋の隅で燃えている暖炉の音がやけに大きく聞こえた気がした。

 覗き込んでいた紅茶をジェニメアは一気に飲み干し、空になったコップをテーブルに置いたあと、ベッケを真正面から見据えた。


「そうなった時、私はスフィア王国の国民を守るために故郷と戦います。私にとってここが私の還る故郷ですから」


 彼女の灰色の瞳が鋭くなり、ベッケに対して脅迫めいた力強さを与えていた。


「その選択は正しいと思います」


 ただ、ベッケが穏やかに返すと、彼女も睨みつけるのを止めた。


「あなたはどっちの味方なのかしら?元フルブラットのベッケさん」


 その挑発じみた言葉にすらベッケは冷静だった。


「私はきっといまはその質問に答えられないでしょう…」


「どうして?やっぱり、故郷が恋しいからそっちの味方につきたいのかしら?」


「それもありますが、残念なことに私が恋しい故郷はもうとっくにこの世にはありません。私が知っているエルフの故郷はもう終わってしまいましたから」


 そう言うと、隣にいたレイチェルがベッケの手を握った。それだけでベッケは前を向くことができた。重く引きずっているものにも足を取られずに済んだ。


「私は、きっと、彼について行くでしょう」


「彼?」


「ええ、残念なことに私はただの一般人のベッケ・ベートレルでしかありません。こんな迷える子羊を導く、羊飼い…いいえ、狼がいるんです。心優しく人のために戦う狼がいるんです」


「その人の名前は?」


「もちろん、もうあなたもご存知のはずですよ」


 ベッケがジェニメアにそう言うと、隣のレイチェルを見た。彼女もベッケが考えていることは分かっているという風にこっちを見て嬉しそうに頷いてくれていた。


「彼の名はエルヴァイス」


 ベッケは嬉しそうに今日一番の笑顔を見せた。


「私は、彼と共にあります」



 これだけはベッケにとって何よりも譲れないものだった。例え彼が世界を敵に回すと言っても、ベッケは意見はするものの最後には折れて彼に着いて行くのだろう。だってそれはきっとやっぱり、みんなのためになるはずで、どこまでもお人好しな彼が望む世界を語った時、とてもバカげていたけどそれは魅力的なものだった。ベッケはそんな彼の心の奥にある魂の穢れの無さを信じていた。自分よりもずっと強く。


『ヴァイス、君は今どこにいるんだ?早く戻ってきてくれよ…』



 *** *** ***



 エルヴァイスは、スフィア王国王都エアロ、その王城の廊下を駆けまわっていた。


「ハハッ!俺の足かせを解いたお前らのバカ主の失態だ!俺はこのままここをおさらばさせてもらうぜ!!」

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