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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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禁書 霧の森

 暗い階段を降りて行くと、さらに鉄の扉があった。

 フルミーナは迷わず、鍵束からその扉に合うカギを取り出し、鍵穴に差し込んだ。

 それから、ガチャっと音がしてぶ厚く重い鉄の扉が開いた。

 中は真っ暗だが、ビナとフルミーナが禁書庫内のシャンデリアやランプに魔法で火をつけていく。

 そうすると暗闇に隠れていた、禁書庫の全貌が見えてきた。

 部屋の真ん中には円形のスペースがあり、そこに丸いテーブルと椅子がおいてあった。

 そのスペースから中心に放射状に本棚が規則正しく並べられていた。

 ハルとビナが椅子に座ると、フルミーナが本を持ってきてくれた。


「これらが霧の森について書かれている本だと思うわ」


 数十冊の本がテーブルの上に置かれた。

 表紙には、『霧の森に関する調査報告書』『四大神獣白虎』『霧の悪魔』『消えない濃霧』など書かれていた。


 ハルとビナはそれぞれ本を取るとページをめくり始めた。


「こんなに、あるんですね」


 ハルが言った。


「そうね、危険区域には、あまりみんなに興味を持って欲しくはないのよ」


「…危険区域は各国が共同で管理してる場所もありますからね」


「ええ、興味半分で入られたりしたら多くの場所に危険が及ぶ可能性があるからね、それに、この図書館は一般の方にも公開もしてるから、禁書が多いの」


 フルミーナも本を取りページをめくりながら言った。


「そうでしたか」


 ハルは自分が持っている本に視線を落とした。


 最初に取った本は『霧の森に関する調査報告書』だった。


『…霧の森は、霧の無い場所、薄い霧がかかった場所、濃霧の場所と三つの段階に分かれた場所がある。霧が濃くなるほど霧の森の中心に位置する…』


 ハルはページをめくった。


『…第一回、レイド王国軍の霧の森の調査。飛行魔法を習得した精鋭騎士十名が森を調査、濃霧のある手前に到着、そこで飛行魔法を行使、濃霧付近にはマナがあり、飛行魔法の使用が可能。霧は森の中心から広がっており、中心に近いほど高くまで霧が立ち昇り、濃くなっていた。そのため、霧の森の木は中心に向かっていくにつれて大きく高くなっていた。

 三人の精鋭騎士が飛行魔法で森の中心に向かった。しかし、途中まで行くと霧が不自然に三人の精鋭騎士に向かって伸びた。さらに彼らが奥に進むと、霧が一気に三人を包み込み、濃霧の外にいた精鋭騎士七人たちからは姿が見えなくなった。その直後、大きな音が響き渡り、二人の精鋭騎士が勢いよく、こちらの濃霧の範囲外まで逃げてきた。彼らの証言によると突然の視界不良と大きな音がしたので一時撤退を指示したと述べ、もう一人は返事もなくいなくなってしまったと発言し、その日はあえなく撤退した。行方不明者一名…』


『…第二回、レイド王国軍百三名からなる中隊と、冒険者と学者の協力者十名の、計百十三名を霧の森の調査に派遣した。詳細は精鋭騎士二十名、騎士七十名、従者十三名、冒険者七名、魔法学者二名、学者一名…先日の一人の精鋭騎士の捜索を兼ねた調査を開始…』


 ハルがページをめくっていく。


『濃霧の場所に行くまでに多くの白虎の魔獣と遭遇これを撃退被害はゼロ。濃霧の前に到着。

 霧に関する学者たちの証言、霧の森の濃霧は、自然ではできないほど濃く、風もないのに一定の速さで渦を巻くように動いており、これが魔法で作られた霧であることが非常に高いと述べた。

 冒険者の一人が風魔法を行使し霧をどけるが、霧が動き続けているためすぐに霧で塞がってしまった…』


 ハルが次のページをめくった。


『…部隊はとても長いロープを使い、霧の外と霧の中をつなぐための命綱を持ち、精鋭騎士十名、騎士三十名、冒険者七名、魔法学者一名、計四十八名が濃霧の中に向かった。冒険者たちが風の魔法を使用し続け、周囲の霧を払いながら進んだ。

 濃霧の中の地面には植物や雑草を確認した。マナの影響か、それとも霧が晴れる瞬間が存在しているのか、その両方の可能性は十分にあり。

 濃霧の中を進むと、騎士の鎧らしきものを発見、その鎧はつぶれていて、大量の血が付着、本人はそこにおらず、そのことから魔獣がいることを確信、撤退を開始した時、大きな音がしたと同時に、冒険者の四人が突然倒れた。これにより、霧が迫り視界が狭まる。濃霧にいた部隊は緊急脱出を開始、その最中何度も大きな音を確認、濃い霧を抜けれたのは、精鋭騎士七名、騎士十名、冒険者三名、魔法学者一名の計二十一名、犠牲者は二十七名。これにより、霧の森の調査は中止された…』


 ハルはページをめくる。


『…生き残った魔法学者の証言から、大きな音が雷魔法の発生時の音に似ていることから、霧の中の生き物が雷魔法を使うことができる可能性があることを述べた。

 姿は見えなかったが、小型の神獣だった可能性が高いとも述べていた…』


 ハルがそれから気になったところだけを重点的に見てあとは飛ばして読んだ。

 それから『四大神獣白虎』の本を読んだが、『濃霧で大きな白虎らしき影を目撃…』などあいまいな情報しか出てこなかった。

 他の本も目新しい情報は載っていなかった。


『晴れない霧と雷…神獣……』


 ハルは目を閉じて少し考え事をした。


『誰も近寄らせるわけにはいかないな…』




















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