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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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禁書庫

 ハルは屋上で瞑想するのも悪くないと考えていたが、図書館で白虎たちが住む霧の森に関する情報をもっと知っておく必要があるとも考えていた。

 霧の森について、数日前に図書館に通い続けた際に調べたがあまり詳しい情報などは載っていなかった。

 しかし、フォルテとの試合で実際に似たような環境の体験ができて、いろいろ思うところがあり霧の森についてさらに詳しく知りたくなっていた。


 午後の風にあおられ、ハルがそのように考えていると、ビナが彼の背中を叩いた。


「ハル団長、その…、これから暇だったら一緒に図書館行きませんか?」


『…まだまだ、探せばあるかもしれないし、フルミーナさんにも聞いてみるか』


 ハルは一旦考えるのをやめて、ビナと図書館に行くことを決めた。


「いいよ、行こう、俺も図書館に行こうか考えていたんだ」


 ビナはうれしそうに小さく拳を握った。


「私、準備してきますね!」


「ああ、噴水の前で待ってるよ」


「はーい」


 ビナは東館の自分の部屋に走って行った。


 ハルは噴水の前でビナを待った。

 暖かい午後の日差しに、噴水のそばにいると、それだけで心地よく感じることができた。

 ハルがふと空を眺めると、雲が日の光を反射させながら、ゆっくりと流れていた。

 古城アイビーの敷地内の正面の鉄門から、多少の坂道の上にある、この噴水の広場は、遠くにある大きな城壁門に続く城壁内の街の中央の道を見通すことができた。

 相変わらず人が多く、商人や御者の馬車が大通りを行きかっていた。

 そこで視線を下げて、ふと庭園の方に視線をやると、敷地内の中にある花園が目に入った。

 花園は、茶色いレンガの壁で仕切られており、その壁には緑の植物が伸びて壁を覆っていた。


『そういえばあそこ入ったことないんだよな、花園って聞いたけど中はどんな感じなんだろう…』


 ハルが花園に気を取られていると、そこにビナがやってきた。


「お待たせしました」


 そこには私服姿のビナの姿があった。

 綺麗な赤い髪を後ろで一本にまとめて、白い透明感のある長袖に、ビナの髪と同じ色の真っ赤なフリルのスカートをはいていた。

 そして彼女からは香水のいい匂いがした。


「私服、似合ってるね」


「えへへへ、ありがとうございます」


 二人はそのまま図書館に向かった。

 図書館に向かう途中ずっとビナの顔は緩みっぱなしだった。


 図書館に着いて、中に入る、大量の本と静かな空間はやはり落ち着くものがあった。


「ハル団長、今日はなにを調べるんですか?」


「霧の森についてもっと調べたかったんだけど、フルミーナさんはいないかな…」


 ハルが辺りを見回すと図書館のカウンターにフルミーナの姿があった。

 二人はカウンターに足を運んで彼女に挨拶をした。

 フルミーナは優しい笑顔で二人にあいさつを返した。

 そしてハルが今回の本題にさっそく入った。


「フルミーナさん、霧の森についてもっと深く知りたいのですが、良い本はありませんか?」


「そうね、あそこの情報はただでさえ少ないからね」


 フルミーナも頭を悩ませた。


「すみません、軍の仕事でどうしても必要なんです」


「前に聞いた、あの話ね」


「そうです」


 フルミーナがしばらくの間考えていると、何かひらめいたように目を大きく開いた。


「そうだわ、だったら禁書庫に行ってみない?」


「禁書庫ですか?」


「そう、国や教会、冒険者ギルドなんかのトップの偉い人達が、閲覧を禁止させた本をしまっておくところよ、要するに禁書がたくさん置いてある場所ね」


「それを俺たちに見せてもいいんですか?」


「ええ、図書館の館長や国から許可をもらった人なら閲覧ができるの」


「すごいですね」


「そうよ、図書館の館長は結構すごいのよ」


 フルミーナは嬉しそうに笑った。

 そのあと、彼女が少しの間、準備のために席を空けた。


「ハル団長!禁書庫なんて滅多に入れる場所じゃありませんよ、というか普通なら絶対に入れてもらえませんよ!」


 ビナが興奮気味に言っていた。


 少し待つとすぐにフルミーナが戻ってきた。


「さあ、行きましょう」


 彼女は二人を禁書庫に連れて行くため、カウンターの中に入れた。

 カウンターの奥にある扉を開けると、長い通路に出た。

 そこには多くの図書館で働く人たちが、本や資料を持って歩いていた。

 三人が歩いて行くと、通路の終わりに大きく頑丈な鉄の扉があった。

 その扉の前でフルミーナがカギの束を取り出し、その一つを迷わず選び出し、鍵穴に合わせると扉が開いた。

 そして、扉の先には階段があり、奥は真っ暗で何も見えなかった。


「…優しき炎よ」


 フルミーナがそう小さく呟くと、小さな光の塊が出てきてそれが彼女の周りを漂い始めた。


「光の魔法だ」


ビナがつぶやいた。


「この魔法は昔、私の友人に教えてもらったのです、私はこの小さな光しか出せませんが…」


 フルミーナは懐かしそうに、そのぼんやり光る、小さな光の塊を見ながら言った。


「お二人はこのランタンをお持ちになって、それとも光魔法を?」


「いえ、俺はランタンを借ります」


ハルが言った。


「私も光魔法は練習してないから、ランタン借りたいです」


ビナもハルに続いて言った。


 フルミーナが持っていた二つのランタンを二人に渡した。

 ビナが炎魔法でランタンに火をつけ、ハルのランタンにもつけてあげた。


「それでは行きましょうか」


 三人は明かりを持って暗い階段を下りて行った。













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