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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
新世界と古き血脈編
438/781

寂れた食堂にて

 女王との謁見が打ち切られたためハルたちは一度謁見の間であるホールから外に追い出された。

 サムは内に宿る憤怒を押し殺して、ズカズカと廊下を進んでいく。

 ハルたちも彼の後をついていくことしかできなかった。


「サムさんどこに行くんですか?」


 ハルが彼を呼び止めると、サムが立ち止まり振り向いた。そこには冷静さを保とうと努力している彼の賢明な姿があった。


「皆さんには、ひとまずは食事をとってもらおうと思います。ここ最近ようやく食料だけは安定して入って来るようになったんでマシなものが食べられると思います。案内します。あ、そうだ、その前にルナさんは医務室に運んでおきましょうか」


 それから、サムと砦内を歩き回り、医務室にルナを預け、ハルたちは食堂を目指すことにした。

 砦の中はのっぺりとした石の壁、高い天井、石畳の廊下で構成されており、ハルたちはただひたすらにコツコツと軽快な足音を立てて目的地へ歩いていた。

 すれ違う背の高いエルフたちは誰も彼も忙しそうだった。まるで新しい国を立ち上げたかのようにみんなが自分の役割に追われていた。


「あなたの名前を出しても、彼女はためらっていた。これがどういうことだかはもう分かっていますね?」


 サムが歩きながら、ハルに語り掛けた。


「ええ、まあ、みんなから大体のことは聞きましたから、俺の存在がみんなの中から消えてしまったというのは知ってます」


「あなたのことを覚えている人はいます。私、みたいに」


「それはサムさんも神威が使えるからだと思います」


「カムイ?」


「まあ、強い意志や自我とでもいえばいいんでしょうか?要するに干渉されない強い存在力がサムさんにはあるみたいです。それが俺を忘れてくれなかったひとつの要因みたいです。レキさんって人が教えてくれたんです」


「そうですか、まあ、何にせよ、私はあなたを覚えていられて良かったと思ってます。あ、ここです着きました」


 広い食堂があったが、本当に食事をするだけの場所であり、テーブルと椅子だけが置かれているだけで、あとは食事を受け取るカウンターがあるだけで、余計な装飾は一切ない簡素な食堂だった。

 そして、メニューは一品しかなく、値段は無料だった。


 ハルたちは、カウンターで食事を受け取ると、適当な席についた。


 料理は野菜スープとパンだけだった。


「前はパンだけでした」


 サムがスープを飲みながら言った。


「ここに物資を送ってる国はどこなんですか?」


 エウスがサムに質問した。


「スフィア王国は、この王都陥落の件は極力公にしないで解決したいようで…」


「え?なんでこんな非常事態を隠すんですか?」


「スフィア王国にとって王都がほとんどすべてを占めているといっても間違いではないほど、王都エアロはスフィア王国にとって国の中心でした。そんな国の中心都市が陥落したとあれば、他国の侵略もあり得ない話ではなくなるので、情報を閉鎖しているみたいです」


「え、でも、それだと帝国国民のサムさんとしてはここに帝国の兵を送って、スフィア王国を根こそぎ手に入れるということもできるんですね?」


 エウスのその意見にみんなが顔をしかめているが、サムは冷静に返した。


「当然そういうこともできますよ、現に私にはそのように事を運ぶこともできます。アドル皇帝に直々に頼めばよいだけですから」


 そこでハルたちのテーブルは凍り付いたように静まり返った。


「でも、そんなことしませんよね?」


 ハルが心配のあまりサムに尋ねると、彼は笑って答えた。


「アハハハ、当たり前ですよ、だってここにはハルさんがいるじゃないですか。どんなに軍隊を送ってもハルさんの前じゃ、すでに死んでいるのと変わらないでしょうしね。白虎や黒龍といった神獣ですら、あなたを止められない。じゃあ、帝国ごときがどうやってハルさんのいるこのスフィア王国を落とせると思いますか?」


 それを聞いたエウスやギゼラ、ビナがそれもそうだとうなづいていた。


「私は運よくハルさんを覚えていられました。それは帝国の滅亡を防げたことと同義です。だから、私は侵略より協調を選びました。それに今の帝国は手を取り合うことをアドル皇帝を中心に国が動いていますから、まあ、帝国の侵略は、そもそもありえなかったというのが結果だったと思いますけどね」


 それから勢いに乗ったサムは、そのまま、本題へと移っていった。このスフィア王国で何が起きてどのような状況になっているのか、語るのであった。


「皆さんには、このスフィア王国で何が起こったのか聞いておいて欲しいんです。もしかしたら、これは皆さんの今後にも影響が及ぶかもしれないので…」


 彼はそういうと話始めた。

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