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竜舞う国 ゼノ・ノートリアス

「あんた覚悟はできてるんだろうな?」


「ハル・シアード・レイ…」


 白炎の現団長であるゼノ・ノートリアスの前にはレイドの英雄ハル・シアード・レイがいた。

 初めて対峙するその英雄の姿に、ゼノは息を呑んだ。

 王城をぐるりと一周できる〈輪廻の間〉全体に重苦しい雰囲気が立ち込めていた。

 一瞬でも気を抜けば意識を保っていられないほどにぶ厚い圧が英雄から吹き荒れていた。


『なんだよこれ…』


 ゼノはあまりの重圧にうつむき顔を伏せた。直視できないほどの敵意をハルから感じ取っていた。


「白炎って組織の人間か?」


「………」


 ゼノは沈黙を保つ。


「答えろ」


 返答へできず、震えが止まらなかった。まるで神の御前にいるかのような圧はすっかりゼノの身体を縛っていた。

 もはや息苦しいなどではなくただの彼の圧だけで呼吸が止まりそうだった。


「あんたがここにいる人たちを傷つけたんだろ?」


 英雄が一歩踏み出すと、それだけでゼノを押しつぶそうとする圧は勢いを増した。このまま意識を保たない方が楽になれそうだった。それぐらい恐怖と圧がゼノの身体にまとわりついていた。


 ただ、ゼノはそこでひとつ思った。


『こんなのは理不尽だ…』


 ゼノの人生でこんなにも、屈辱と劣等感を抱かされたのは初めてだった。


『何が英雄だ、こんな化け物みんなで祭り上げて、どう考えたってこの英雄様を殺す方が人類にとって有益だろ…』


 地下や裏社会といった闇の世界で力をつけ、それなりの実力や地位を手に入れて、ゼノの人生は常に裏社会と共にあった。

 だから、ゼノは表社会で何も考えずに生きている奴らを見下していた。

 闇にいる自分たちの方が、人間としての価値も実力も上だと信じていた。

 誰も裏社会で生きている自分たちには逆らえないと。

 それだけ、裏社会で生きるということは過酷なのだが、そこで生き残っているゼノからすれば表の人々を見下す価値観を形成されていったのも当然のことではあった。


 だが、そんな過酷な状況で生きてきたゼノが、いざ、表社会の代表ともいえるハルの前に立つと手も足も出ないどころか、怖くて身動き一つ取れないという事態に陥っていった。


 人を殺したことも無い、たかが獣を狩っているだけの英雄に、自分が屈するのが悔しく、何より、惨めだった。

 どこかでゼノはハルという人間を軽んじ下に見ていた。英雄と持てはやされている彼をこの手で地獄に引きずり落してやりたかった。


『クソ、なんで、こんな…ありえねぇ……クソ…クソ!クソ!!』


 だが、震えは全身に広がり、ゼノは立っているのも困難になった。


 そこでゼノの目の前にハルが歩いて来ると、完全に恐怖で身を縮めうずくまってしまった。

 それはまるでいじけた子供の様にゼノは全力で目の前の恐怖そのものみたいな化け物から逃れようとしていた。


 その姿はゼノも自分で滑稽だと思ってしまうほどには、見るに堪えない情けない姿だった。

 それはこれから戦い合う二人とは到底思えなかった。


「なあ、黙ってないで何か言ってくれよ?」


 ゼノの頭上にはまさに恐怖があり、その向こうには、全生物が忌避する絶対的な死が姿を現していた。

 ゼノはただうずくまってその死が去るか、その死の一部になるか、待つだけで他の選択肢は一切なかった。


「もういい、あんたは眠っていてくれ…」


 ハルが手を伸ばす。


 そこでゼノは思った。


『俺は、戦わずして負けるのか…こんな、こんな表でのうのうと生きてきた男に、毎日命かけて生きてきた俺が…俺たちが…』


 絶望的な恐怖が体中を包み込む中、ゼノの奥底では確かな未来風景が広がっていた。

 その未来風景にはいつまでも裏社会で暗躍し続ける自分がいた。

 多くの国を裏から支配し、今まで自分を見下してきた王族や貴族たちに復讐している未来があった。

 そして、そこには白炎のイルネッタ、リップ、スマ、ギリユ、ゴベドラ、みんながおり、ウルメアの姿もあった。

 自分の隣でウルメアがただ静かに微笑みながら信頼してくれる未来を想像する。

 そこでウルメアは自分の妻として隣にいた。

 王族の地位を捨て、共に裏社会で生きるよきパートナーとしの彼女の姿があった。

 そんな未来が目の前にいるたったひとりの英雄に破壊されようとしていた。


『俺には夢がある。叶えたい夢が…』


 ゼノの身体に不思議と力が湧いて来た。

 この時にはもう気が狂っていたのかもしれない。

 けれど、そうじゃない核心はあった。

 このみなぎる力の源がたったひとりの女性のことを思う気持であるとゼノも分かっていた。

 自分はこんな柄ではないがそれでもひとりの人間である以上ゼノにも純粋に人を愛する心があった。

 だから、必死の抵抗を恐怖に立ち向かう勇気を、自分の大切な人を守れる力をゼノは望む。


『こんな奴に奪われる未来なんてない方がいい…こんな正義の化け物が存在する未来なんて俺が破壊してやる…』


 ゼノはゆっくりと立ち上がり、英雄のいや、化け物の目を正面から見据えた。


『俺は変わるよ、未来のためならいくらでもな!』




 その時だった。


 ゼノが見ていた景色が一瞬にして変わったのは。


 そこは真っ暗な世界が広がっており、遠くに鈍い光が輝いていた。


「なんだ…?」


 静寂と闇と希望の光がゼノの目の前に広がっていた。


「これは?何が起きてる?」


 状況が飲み込めないまま、真っ暗闇の中にただ、ただ、ゼノが佇んでいると、遠くで輝いていた光が強く光り出した。


 その光はどんどん輝きを増して、いつしかゼノを飲み込んでいった。


 それらの光景は一瞬の出来事のように思え、気が付けばゼノは輪廻の間に戻って来ていた。


「あれ、俺は一体…?」


 身体のあちこちを触りながらここが現実か確かめるが、そこでゼノは自信の内側から得体のしれない力が溢れるのを感じていた。

 万能感に包まれ、目の前にいるハルにも動じることが無くなっていた。


「もういい、あんたは眠っていてくれ…」


 その時、ハルが再び伸ばした手から嫌な気配を察知したゼノは、一気に自分の天性魔法を解放した。

 ゼノの天性魔法は【赤雷】自身の身体から発せられる赤い雷を自由自在に操ることができた。

 ゼノの赤雷は生物の身体に流すと皮膚や肉を切り裂き、ゼノの傍に居る限りは対象の傷がふさがらなくなる特性があった。

 その赤雷をゼノは全方向に広がる様に全身全霊で解き放った。


 放った赤雷は半円状で波状的に何度も輪廻の間を駆け巡った。


「なんだこれ…」


 ゼノは自分で放った天性魔法の威力に驚いた。

 いつもよりも何倍もの威力と範囲の赤雷が駆け巡ったのだ。その赤雷に触れた柱や壁や床は黒焦げになり、輪廻の間をズタズタに破壊する。


『いける、なんだかわからないがこれなら、英雄も焼き殺し切れるかもしれない…』


 ゼノはさらに天性魔法で自分の身に赤雷を纏わせると加速した。赤雷を身体に流すと通常の倍以上の反応速度と肉体の運動能力が獲得できるゼノ得意の身体能力向上の技だった。

 そして、今の強化された特別な赤雷を身に纏わせると、いつもの感覚よりも数倍早く動くことができた。


『マジかよ、速すぎて反応が追い付かない…』


 自分の早すぎる移動速度について行けず壁に激突する。ただ、ゼノが纏っていた赤雷が痛みを軽減してくれていた。


「ハハッ、英雄さんよ、どういうわけか俺でもあんたとやり合えそうだ!」


 ゼノが壁から出てきながら得意げに笑う。なんだかとても気分が良かった。


「………」


「なんだよ、今度はあんたの方がだんまりか?」


 しかし、そのようにゼノが余裕を見せていると、目の前にいたはずのハルの姿が消えていた。

 あまりの突然の出来事にゼノは首をかしげるが。

 瞬間、真後ろから殺気を感じ取ったゼノは、すぐにその場から移動した。

 ハルが背後を取っていたようで、突き出された拳はちょうどゼノの心臓の位置だったが間一髪で回避できていた。


「ふう、あぶねぇ…おいおい、まさか殺す気だったのかい?ハルさんよぉ?」


「………」


 挑発にも乗って来ずにだんまりを決め込んでしまったハルにゼノは少し気がそがれた。


「なんだよ、調子狂うな…」


 そこで再びハルの姿を見失うと、とにかくゼノはその場からすぐに離れた。


「マジで殺しに来てるな…いろいろ試したいことはあったが…」


 赤雷の恩恵で素早く移動し終えたゼノに冷や汗が流れる。ハルはゼノがいた場所におり、同じように心臓を一突きしようとしていた。

 完全にこちらを殺しに来ているハルに、ゼノも覚悟を決めることにした。


「まあいい、これは殺し合いだ、どちらかが死ぬまでだ…」


 今のゼノには全然負ける気がしなかった。


「俺の本気を見せてやるよ」


 今度はゼノから仕掛けに入った。赤雷を纏って輪廻の間を駆け出し加速し始めた。


 円形状の構造の輪廻の間を、何周も何周も走り回って加速する。


 その間ハルはただジッとこちらがすることを眺めて様子をうかがっていた。

 しかし、それが悪手であることに彼は気づいてはいないようだった。

 彼が突っ立っている間、ゼノは加速し続ける。


 最初はハルも目でこちらを追っていたが、何周か加速し終わると完全にこちらの姿を目で追いきれなくなったのか、焦った様子で身構えていた。

 だが、もう遅かった。

 加速しきったゼノがハルと衝突するタイミングで赤雷を一気に解放した。

 これは切り札のようなもので加速しながら赤雷を溜め、最後に相手の目の前で解き放つことで確実に相手を死に追いやる大技だった。


 束になった濃密でぶ厚い赤雷を纏ったゼノが、ハルと衝突した。


 轟音と共に輪廻の間の壁という壁、周辺の天井が余すことなく吹き飛んだ。

 輪廻の間は半壊状態になり、空から日の光が気持ちよく降り注ぐ。


 ゼノは赤雷に守られ無傷で瓦礫の中から起き上がった。


「とんでもない威力になってやがったな…」


 自分でも予想を大幅に超えた威力に戸惑いを隠せずにいた。


「ほんと、英雄様には感謝だな…この威力ならあいつらのことも巻き込んじまってたからな…」


 ハルと対峙する前にゼノの周辺から人がひとりもいなくなっていたのは彼が移動させたからだとあのスピードの動きをみたら確信ができた。


「化け物だよな…まったく、あ…」


 そして、ゼノが周囲を見渡していると遠くの瓦礫の中で倒れているハルの姿を見つけた。


 彼は血だらけで瓦礫に挟まれ埋もれていた。その下からは大量の血が滲めでていた。


「………」


 小さく息をするハルをゼノは見下ろす。


「ハァ…こんなもんなのか…」


 あっけなくついた決着にゼノはため息をついた。


「お前の実力はこんなもんなのか?よくこれで英雄なんて呼ばれるようになったな…」


 ゼノが瓦礫に挟まり動けないハルの頭を踏みつける。


「なあ、知ってたか?あんたあのウルメア・ナーガード・シフィアムから好意を寄せられてたんだぜ?」


「………」


「いいよな、英雄様は王女様だって簡単に虜にしちまう魅力があって」


 ゼノはそこで踏みつける足に力をより強く込めた。


「なぁ?なんであんたは英雄なのにこんな俺に負けてんだ?」


 瓦礫に埋もれているハルが踏みつけるゼノの足をどかそうと潰れていない右手で掴みかかった。しかし、大ケガで力が入らないのか、彼の掴む手に力は入っていなかった。


「そんなんで俺たちからお前の大切にしてる奴らを守れると思ったのかよ…甘すぎるぜ?」


「………」


「なんか言ったらどうだ?これはさっきお前が言ってたことだぜ?」


「…ゆ、る…して……」


「はぁ?」


「ほかの…みんな…のことは…許してください…」


 瓦礫の山に舞う粉塵と心地の良い日差しの中、落ちて来た天井の瓦礫に潰されて目の前で死にかけているこの哀れな英雄に虫唾が走った。


「なんだよ、許すわけないだろ…お前が死んだあときっちり他の奴らも殺すに決まってるだろ…」


「俺はどうなっても…いい、だか…ら……どう…か、彼ら…は……」


 すがるようにかすれた声でハルが訴える。

 だが、ゼノはそこで優しく諭すような声で告げた。


「やっぱり、あんたは英雄だよ、最後まで人のためを思ってやがる。だけどな、残念ながら俺は、裏の世界で生きてきた人間だから、お前のその甘い願いを叶えてやるわけにはいかないんだ。分かるか?復讐って言葉。裏社会で生きるなら一番それに気を付けなくちゃいけない、だから、お前が大切にしていた奴らはみんな殺さなきゃいけないんだ…わりぃな…」


 そこで顔を上げて絶望の表情を浮かべるハルを見たゼノの気分は高揚していた。


『そうだ、お前のその顔が見たかった。絶望に染まるその顔がよ…』


 そこでゼノは背後に誰かがいることを感じ取った。


 振り向くとそこにはウルメア・ナーガード・シフィアムがいた。


「ゼノ、あんた何やってるの…そこにいるのはハルよね?」


「ああ、ウルメア様、決着は今ついたところです、彼は今からもう死にます…」


「何言ってるの…死ぬって誰がそんなこと許した!?」


 怒りで震え今にも得意の触手を出そうとするウルメアだったが、ゼノが赤雷を纏ってあっという間に背後に回り彼女の首を後ろから掴んだ。


 それは一瞬の出来事だった。


「彼を殺すことに許可は俺自身が下した判断です」


「!?」


「動かないでください、動くと俺の赤雷があなたの首を焼き切りますよ?」


「お前、こんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」


「そんなことより、さあ、ウルメア様この剣で彼の首を落としてください」


 ゼノはウルメアの首を離すと、腰の剣を彼女に渡した。


「お前…」


「抵抗してもいいですが?痛い目見ますよ?今の俺は特別でしてね…あ、試してみますか?」


 笑顔のゼノにウルメアが持っていた剣で斬りかかろうとした時だった。

 そこでゼノがウルメアの脚に赤雷を放った。


「ぐっ…」


 目にもとまらぬ速さで赤雷がウルメアの脚を貫き、彼女は片膝をついた。


「どうですか?これでも俺に逆らいますか?」


「………この低俗が…」


「さあ、剣を彼に」


 ゼノが楽しそうにウルメアをハルの元に誘導する。


「ちなみに彼に白魔法を使ってもダメですからね?というより、このケガじゃ並みの白魔法じゃ助からないと思いますが…それよりも彼を早く楽にしてあげた方がよろしいかと、それにウルメア様もけじめがつくと思います。これからは俺の傍に居てもらいますよ?」


「誰がお前なんかと…」


 そこでゼノがもう一度彼女の同じ脚に赤雷を放った。


「がぁあああ、お前!」


「さあ、早くしないと、彼力尽きちゃいますよ?愛した男の最後のとどめはあなたが刺すべきです」


 優しく微笑むゼノだったが、ウルメアは酷く嫌そうで悔しそうに歯を食いしばっていた。

 どう考えても今後の関係に亀裂が入ることは確かだった。

 ただ、それでも、ゼノは構わなかった。やっと彼女が手に入ったのだ。長年思いを寄せて来た彼女のが自分だけを見てくれることになったのだ。

 そして、これはもはや彼女がハルを諦める儀式のようなものなのだ。


 決別すべき繋がりなのだ。


 ウルメアが足を引きずりながら、瓦礫に挟まれているハルの首に剣を振り下ろした。


「お前を一生恨むからな…」


 返り血を浴びながらウルメアは一言呟いた。


「ありがとうございます、ウルメア様。これからはずっと一緒に居ましょう、俺が守ってあげます」


ゼノにとっての幸せな時間がやって来る。


ただ、そこから先の風景にゼノが進むことは決してなかった。



なぜなら…。




 *** *** ***




 眠っている赤い髪の男の横をハルが通り過ぎていく。その男はハルが天性魔法で気絶させていた。

 圧に屈した時点で、ハルにとって彼は敵ではなかった。

 その程度の実力でハルとの間に対人戦闘など起こるはずがなかった。


『ガルナを殺そうとしたこいつ、殺しておくか?』


 ハルの脳裏に当たり前のように人殺しの選択肢が上がって来る。


 ただ、ハルは彼をそのままで、異様な雰囲気を放ち続ける王城の間がある場所に足を進めた。


『きっと、あいつが白炎って組織の人間だと思うから殺しておいてもよかったか…でも、そんなことより…』


 王座の間から漏れ出す不気味な気配がずっと気になっていた。


「一度俺の天性魔法で、王座の間を見ておくか?」


 その時だった。


 ハルが進む方向の奥から、何重にも重なった斬撃が飛んできたのは。

 その斬撃は、縦長にぴんと張られた糸のような線で、それが何重にも重なり輪廻の間いっぱいに巨大な壁のように広がって迫ってきていた。

 通路にある石柱をかたっぱしからバラバラに切り刻みながら、ものすごい勢いでハルへと襲いかかってきた。


 だが、ハルはその迫りくる斬撃の壁の前でしたことといえば、片手を前に押し出すだけだった。

 そこに焦りもなくただ、それをするだけでいいといった感じの所作だった。


 ただ、ハルが押し出した手のひらの動きは目のも留まらぬ速さであり、押し出された空間からたちまち衝撃波が広がり、迫って来ていた斬撃の壁を粉々に打ち砕いた。


「カルラさん?」


 両翼を羽ばたかせ、手には刀を握り、こちらに風魔法で移動しくるシフィアム王国の剣聖カルラの姿があった。


『さっきの斬撃はカルラさんの技だよな…』


 どうやらカルラの様子はおかしいようで、彼は殺気を放ちながら、こちらに接近していた。


『なにかあったのかな…』


 ハルとカルラの戦いが始まった。が、決着は一瞬で着いた。


「破線 五十」


 大技の魔法の高負荷に耐えられなかったのだろう。カルラの全身から血が噴き出した。それでも彼は剣を振るい、魔法を発動させていた。

 五十本もの斬撃がハルに襲いかかるが、ハルが片手を一度振り払うと五十本の斬撃は跡形もなく薙ぎ払われ、ただ、ボロボロのカルラだけが残っていた。


 ハルは容赦なく彼を掴んで地面に叩きつけ気絶させた。


「カルラさん、ここでおとなしくてしていてください。あとで話し聞きますから…」


 カルラを通路の端に寄せて寝かせた。


 そして、ハルは何事もなかったかのように王座の間に足を進めた。



 王座の間の扉の前まで来たハルはそこでいったん立ち止まった。


 中から凄まじい邪悪な気配が漏れだしていた。


 扉の前にいるだけで、一般人なら意識を持っていかれてもおかしくはない、量の圧だった。


 ハルが大きな扉を開ける。




 後悔募る後戻りできない悲しい戦いが始まる。


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