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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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二大魔法

 フォルテは左手を横に振り炎魔法を放った。

 何もなかった空間に突如灼熱の炎が現れた。

 さらにそれが扇状に広がり、ハルの逃げ道をなくした。

 巨大な炎の波がハルに迫った。


 この試合を見ていたみんなが、そのあまりにも突然放たれた大きな爆炎に驚き、その場を離れた。


「熱い!いきなりすぎないか!?」


 エウス含め、見ていたみんなが場所をかえるために移動を始めた。


「ふむ、近すぎたようだな」


 デイラスが持っていたハンカチで、額をぬぐいながらその場を離れる。


「すみません、うちの剣聖が」


 帝国のエルガー騎士団の副団長ルルクが謝罪しながら移動していた。

 みんな仲良く離れるなか、ライキルだけがその場にいた。

 辺りにすごい風が吹き荒れる。


「おい、ライキル巻き込まれるぞ!」


「………」


 ライキルがエウスの声で振り向き、やっと駆けてきた。

 ライキルがみんなのもとまでたどり着いた瞬間、先ほどまであった大量の炎が一気に上に軌道が変わり、霧散していった。


 みんなが振り向くとハルが木の剣振り上げたあとの姿があった。


 それを見たフォルテは左手の上に小さな炎の塊を作り出す。

 その炎の塊の温度はあまりにも高く、周りの温度がどんどん上がっていく。


 通常、炎魔法には水魔法で対抗する。炎魔法の威力をためられる前に、邪魔をしたり、水の壁を作り、威力を中和するのが戦いのセオリーとなっていた。

 元来から魔法は炎は攻撃手段として、水は防御の手段として扱われてきた。

 魔法は訓練すれば誰もが簡単に扱える、そのため魔法を扱う者なら、誰もが最初に覚える、この二つの炎と水の魔法のことを二大魔法などと呼んだ。


 フォルテはその炎の威力を練り上げていく、体にマナを流しそれを魔法に変換し、そして出力し炎の火力を上げていく。

 彼は、自身を水魔法で守りつつ、手のひらの炎に集中した。


 そしてフォルテがそれをハルの方に向けた瞬間にその小さな炎の塊は急激大きくなり、周囲に灼熱の熱風を放ちながらハルに向かって突っ込んでいく。


 それを見ていた両国の精鋭騎士たちはとっさに水魔法で水の壁やドーム状の水の膜を張り熱風を防いでいた。


 エウス、ビナ、ルルク、ベルドナが水魔法で大きな水の壁を作り、みんなはそれを盾にするように、水の壁の後ろに移動した。


 熱風はどんどん強くなった。


「想像以上の威力です、フォルテ様のあそこまでの魔法初めて見ました」


 ベルドナが懸命に水の壁を作り出しながら言った。


「ベルドナ気を緩めるな、壁に穴空くぞ」


 ルルクが魔法に集中しながら言った。



 その巨大な火球を向けられたハルは、木の剣を片手で縦に振る。

 それと同時に凄まじい風圧が巨大な火球を簡単にフォルテの方に押し返した。


 フォルテは一瞬で、遠くで見ている四人の水の壁よりもはるかに大きな水の壁を作りこれを防ぐ。


 辺りに大量の湯気が立ち上り、水が降り注ぎ、虹ができた。

 周囲の熱風が止み、見ていた全員が水魔法を解除する。


「見学するほうも大変だなこりゃあ…」


「エウス隊長、どうしてハル団長は魔法を使わないんですか?」


 呟いていたエウスにアストルが質問した。


「ああ、そうか、知らないと思うが、ハルは天性魔法以外の魔法は使えないんだ」


「ええ!!本当ですか!?」


「本当だよ、あいつは二大魔法すら使えないんだ」


 そのエウスの言葉に、アストルも驚いていたが、ウィリアムも隣で目を丸くしていた。


「それにハルが、自分の天性魔法だけ使わない約束でもしているんだろう、あれがあると勝負じゃなくなるしな」


 二人は後半のエウスの言った言葉を聞き逃しながらも、目の前のハルとフォルテの試合に目線を戻した。


 次にフォルテは、フランベルジュを構えその場から消えた。

 アストルやウィリアムにはそう見えたのであった。

 二人には全くフォルテが移動した姿が見えなかった。

 遠くにいたフォルテがすでにハルに切りかかっていた。


 フォルテがハルに素早く横切りを繰り出す、その速さはガルナと戦っていた比ではなく魔法を駆使して剣の速度を跳ね上げていることがわかる。

 しかしその斬撃も簡単にかわされ、ハルが逆手に持ち直した木の剣で、フォルテの水平方向に振られた剣の面の部分を木の剣の先で小突かれ、フォルテの剣の軌道が変わり、地面に突き刺さってしまった。


 しかしその瞬間フォルテの剣の先から大量の風が吹き出し、剣が抜け、その風の勢いで後方に移動しハルとの距離もとった。


『やはり、ハルに正面から剣を交えるのは無謀か、すぐあの木の剣で鎧ごと粉砕される未来しか見ないな』


 フォルテがそう考えこんでいると。


 次の瞬間立っていられないほどの風が吹いてフォルテは体勢を崩しながら後ろに吹っ飛ばされてしまった。


「がはぁ」


 飛ばされたあと、フォルテは地面に胸を強く打ち付け、一瞬呼吸ができなくなった。

 すぐに体勢を立て直しハルの方を見るとハルは一歩も動いていなかった。


『今のは、あの木の剣での風圧だろうな、やはり化け物より化け物よ、あれをやるしかないな…』


 フォルテが剣を地面に突き立て、両手で剣のグリップを握り、体全身に意識を集中させた。


「皆さん、そろそろ来るかもしれません、フォルテ剣聖の天性魔法が」


 ルルクがみんなに向けて注意をうながそうとした瞬間……。



















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