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竜舞う国 絶望的な未来

「おい、聞いたか、闘技場に緑の怪物が出て、会場の中、死体だらけだってよ!」

「マジかよ、じゃあ、急がないと金目のもの全部なくなるな!」


 死体あさりだろう。今夜は大勢死んだ。その中には商人や貴族もたくさんいた。


「早く、急げって!」

「早い者勝ちだ!」


 ゼノの横を通り過ぎた五人ほどの青年たちのグループが駆けて行く。地下で生まれたか、地上で居場所を亡くしたか。こんな夜遅くにそれも地下にいる彼らは普通ではない。


『なんだか、懐かしいな…』


 その様子を昔の自分と重ねてしまい、一瞬、彼らの中に自分とジャバラがいるような気がして、すれ違ったあとも振り返って眺めてしまっていた。


「知ってる人でもいたのか?」


「いえ、ここに知り合いなど、もういません」


「そうか、私の行きつけの店はすぐそこだ」


 ゼノは、黒いフルプレートの鎧を着ているウルメアの後姿を見つめる。

 後ろから殴りつけて気絶させ、どこかの宿にでも連れ込み、ベットに縛りつけ、黒い鎧を剥ぐ。その中には痺れるほど狂った魅力的な王女様がいて、彼女がもうやめてと懇願するまで痛めつけたあと、それでも暴力を振るって服従させる。そして、最後に愛を囁き、彼女と永遠に添い遂げる。

 歪んだゼノの夢。

 強者をなぶって痛めつけ崩壊させる。

 それは腕っぷしでも、権力でも、美貌でもなんでも構わない。何かの頂点を壊すことに快感を覚えるゼノは、そんな叶いっこない妄想を抱いていた。


『きっと、後ろから殴りかかった時点であの鱗で串刺しか…』


 背が高いゼノは、小さな身体の彼女を見下ろす。すると彼女は立ち止まった。


「さあ、ここだ」


「ここですか?」


 ウルメアが立ち止まったのは、地下街の外れにある廃墟同然の二階建ての木の家だった。人ひとりいない暗闇にその廃墟は建っていた。

 彼女が手に炎を灯し、いくぞと言って、ボロボロの木の扉を開けた。

 後をついて行くと、彼女はその廃墟となった木の家の地下へと続く階段を降りていった。

 廃墟の地下は真っ暗でゼノも手に炎を灯す。

 辺りには何もかもが腐り、カビ、汚れ、ネズミが数匹死んでいた。部屋というよりは荷物を置いておく倉庫のような場所だった。


「椅子と酒持ってくるからここで待ってて」


「あ、はい…」


 それだけ言うと、彼女は暗闇の奥に消えていった。


 十分後。


 ゼノは異変に気付いた。

 彼女に言われた通り、一歩も動かず、微動だにせずいると、彼女が消えた真っ暗な部屋の奥で何かがうごめく物音が聞こえた。ずるり、ずるりと何かが忍び寄る。と、同時に部屋の奥から背筋が凍るほどの圧が吹き込んでくるのを肌と魂の奥底で感じ取った。


 一気に血の気が引く。


 結局、殺されるのではないかと想像してしまう。


 しかし、現れたのは緑の私服姿をした可愛らしい王女様。と、束の間の楽園を見たが、残念ながら、その後ろで禍々しく揺れる無数の鱗の触手が地獄の様だった。

 その鱗の触手は、全て、彼女の背中から腰にかけた背後から生えて自在にうごめていた。まるで触手一本一本が独立した生き物みたいであり、ゼノはその鱗だらけの触手から目が離せなかった。


「あぁ、気にするな、確かにこの触手はお前に苛立って出してしまったものだが、お前を殺しはしない、ほら、酒もって来たぞ、極上の竜酒だ飲め」


 引っかかることを言われ肝が冷えたが、彼女から竜酒を注がれた綺麗なグラスを差し出されると、ゆっくりと警戒しながら受け取った。


「頂きます…」


 彼女の背後からゆっくりと、その触手が這いよって来るのを感じたゼノは一気にもらった酒を胃に流し込んだ。ここはもう彼女の言葉を信じるしかなかった。


「いい飲みっぷりだな、ほら、注いでやる」


 闇の王女が不敵に笑う。王女様を演じているときの彼女の優しい笑顔とのギャップにゾクゾクした。


「ありがとうございます…」


 注がれ終ると彼女は竜酒を瓶に直接口をつけて飲み始めた。なみなみと入っていた竜酒は空になり、彼女は瓶を座っていた椅子の下に置く。すると彼女の後の闇から触手が新しい酒瓶を掴んで持ってきていた。


「酒はたくさんあるから心配するな、それより、本題に入ろう。お前のしようとしていることについてだ」


 彼女の手に灯っていた炎が消え、彼女の上半身だけが闇に飲まれる。彼女の表情が見えなくなると途端にゼノは不安になった。見えている部分は彼女のスカートからはみ出た綺麗な足と、無数の触手だけなのだから。


「まず最初に、どうしてお前は、彼を殺そうとしている?」


「ハル・シアード・レイのことですか?」


「そう」


 そのことに関してゼノの動機は色々あった。オートヘルの総帥マーガレットから直接依頼があったことや、オートヘルをドミナスという深淵の底にいるような闇の組織から目をそらさせること、ヴァレリーの意思を継いで白炎の名を上げること、とある小国が彼の首に賞金を駆けていることなど、ゼノがハル・シアード・レイを暗殺する理由など腐るほどあった。


 しかし、どの理由もゼノの本当の目的ではなかった。


 どれもゼノの心を動かすには足りない者ばかりだった。彼の本当の望みは…。


 ゼノがその時だけ可笑しくて無礼を承知で笑ってしまった。


「アハハハハハハハハ、いや、失礼しました。よく考えたら可笑しくて…」


「何が?」


「俺が彼を殺そうとしているのがですよ、よく考えれば分かります。相手をしようとしているのは、四大神獣の白虎を討伐した者です。まさに英雄、勝てるわけがない」


 ゼノはグラスに残った酒を飲み干す。


「じゃあ、なんでそんな無謀な計画を立てたの?」


「見たいからですかね、彼が崩れ落ちる瞬間を、絶望と悲しみに暮れるその時をこの目で」


 うっとりした表情で笑う。

 ハル・シアード・レイというみんなから賞賛され愛されている存在がすべてを失って情けなく命を懇願する姿をこの目で見届けたい願望があった。現在、この大陸で一番高みにおり、上から自分たちのような有象無象を見下しているであろう彼に悲劇を届けたかった。


「あぁ、だんだん、君が何をしたいのか分かって来たよ、そうか、君はそういう人間なんだね」


 ゼノは彼女を前にしてなんだか立場を悪くしたような気がしたが、こうなったらすべてをさらけ出すしかなかった。


「ウルメア様の前ですから正直に話しますが、俺は高みにいる人間を絶望の淵に蹴落とすのが好きなんです。そういう人間たちが悲しみの果てに転がり落ちていくのが大好物なんです。悲劇が好きなんです」


 地位や名誉が高ければ高いほどゼノの好みに適った。王族、貴族、剣聖など、高みにいる彼らを頂から蹴落とすことがゼノの何よりの幸福だった。


「やっぱり、じゃあ、君は私も蹴落としたいのかな?」


 ゼノが息を呑む、顔が見えないため、表情が読めない彼女が怒っているのかどうか見えなかった。暗闇に奥底からゾッとする声だけが聞こえてくる。


「ええ、まあ、その…はい……」


「フフッ、そっか、君は正直だね」


 気が付けばゼノの足もとは鱗状の触手で埋め尽くされていた。

 そして、無数の触手が一気にゼノの足元から舞い上がり、身体中をその鋭い鱗の触手で縛りつけ拘束した。


「ウルメア様…これは…グッ!」


 体が触手に締め上げられる。触手の鋭い逆立った鱗が身体に食い込み、全身から血が流れる。

 耐えるしかない抵抗などできるはずがない。


「いい趣味してるね」


 ゼノは明かりを確保するため手に炎を灯していたが、彼女の触手を火傷させないため縛られたとき消していた。そのため、眼前の視界は真っ暗で何も見えなかった。


「なんでこんなに私が怒ってるか分かる?」


 真っ暗の中、麗しい声と痛みだけがゼノを包み込んでいた。


「ハァ、ハァ…」


 全身の痛みと流血により力が抜け、頭がボーっとし、質問の内容に思考を働かせることができなかった。


「ちょっときつかったかな?緩めてあげるから答えて見て」


 触手の拘束が緩まると、だいぶ楽になり、彼女の言葉に集中することができた。


「それは、ハル・シアード・レイを…」


 彼女のその質問の答えを想像するのは容易だった。だから、ゼノはその質問に答えたくなかった。答えてしまえば、自分がどうすればいいか分からなくなってしまうからだ。

 しかし、彼女を待たせてはいけない。


「殺されたくないからですか?」


 答えをはぐらかしわざと間違えた。彼女の言いたいことは分かっていた。それは、彼に好意を寄せているから、彼を愛しているからといった感じであることは間違えが無い。そのことをゼノはどうしても認めたくなかった。

 自分はずっと彼女が小さい頃から知っているのに、それをこんな短期間で彼女ほどの複雑な人間をどうやって虜にしたのか…。


「まあ、そういうことかな、答えはね…」


 そこから先は聞きたくなかった。


「ハルは私の夫だからでした!!」


 彼女の手に炎が灯り、部屋中が明るくなる。

 そこにはゼノには見せたことがなかった極上の笑顔があった。神などに心酔し信仰している狂信者が、神を目撃したときのような狂った笑顔だ。ただ、その笑顔を浮かべた彼女は全てが満たされているようだった。

 だから、その狂信者に歪んだ愛を見出していたゼノは嫉妬に狂うしかなかった。歪んでいてもゼノは彼女を愛し、惚れ込んでいたのだから、ゼノにとっては彼女がその神みたいな存在だったからだ。

 つまり、悔しかった。自分の神が他の人間に汚されているようで、気分が悪かった。


『おいおい、高みにいる者ってのは、なんでも下の人間から奪っていくのか?全く、どうすれば、俺たち下の人間は救われるんだ…』


 自分の愛していた神まで奪われる。やり場のないゼノがため込んでいた感情が暴走し始める。


「ウルメア様は、ハル・シアード・レイのことが好きなんですか?」


「うん、大大だーい好き、やっと会いに来てくれた人だからね!」


 よく見れば彼女の顔は赤く酔っぱらっていた。


「だったら、ここで俺を殺して置いたらどうですか?俺は彼を殺そうとしてるんですよ?」


「それもいいかなって思ってるけど、君は今とってもいい立場にいるから生かしてるの」


「と言いますよ?」


「君には、ハルの周りにいる人たちを皆殺しにして欲しいの、一人残らず」


 彼女の考えていることがゼノによく理解できた。

 ゼノがハル・シアード・レイの暗殺を考えていたのはずっと前からだった。レイド王国の剣聖が強すぎると大陸中で話題になり始めた頃、自分の欲求である、高みにいる人間を地獄落とすこと、そのリストに入ったのは。

 そして、それからだった、彼が四大神獣を討伐し、遥か高みに達しゼノが彼をターゲットに指定したのは。

 その時、ちょうどゼノは、白炎の名を上げることに熱中していたヴァレリーのもとで活動していたため、彼と一緒に資金調達のためにも、彼の暗殺計画は前々から少しずつ話を進めていた。

 しかし、そこでドミナスの人間の動きが活発になって来ると話は変わって来た。ヴァレリーの目はかつての孫同然の教え子たちを狙う、ドミナスの刺客に興味が移っていき、ハル・シアード・レイの暗殺の話しは影を潜めていった。

 ヴァレリーの死を知ったのは、まだレイド王国のパースの街に潜ませていた諜報員が送ってくれた手紙からだった。

 パースの街で、吹き飛んだニューブラットという酒場の近くで焼死体が見つかったと報告があった。身体の隅々まで焼き尽くされた奇妙な死体が発見されたと。そこでヴァレリーが死んだことは理解した。そもそも、今回当たった尋常じゃなかった殺気を放っていたドミナスの人間と接触した時点で命が無いことは、その当時悟っていたのだが、手紙を受け取ってゼノは改めて良い師を失ったと感じていた。

 その騒動が起こった後ゼノがこのシフィアム王国に来たのは、待機させていた白炎のメンバーと合流するためだった。ヴァレリーの死の報告で去っていった者も多いが、それも仕方ないことだと思っていた。

 それから、白炎の今後の方針を数日かけてダラダラとみんなで語り合っている時だった。シフィアム王国にハル・シアード・レイが滞在していることを知ったのは。

 それは、王城に忍び込ませているオートヘルの諜報員からのメッセージだった。

 それからだった、ゼノの欲が刺激され忘れかけていた彼を貶める計画に火がついたのは、四大神獣討伐作戦前に観光まがいのことをして浮かれている彼を地獄に叩き落とすと決めた。

 心の底から絶望する彼の顔を想像するとゼノは可笑しくたまらなかった。きっと、自分なんかでは到底敵わないから、彼らに付き添っている身内を一人づつ殺して彼の心を破壊してやると。

 崩壊した悲惨な彼の表情が見たかった。


 しかし、実際はどうだろうか?


 自分が愛していた進行にまで達していた女神をいつの間にか崩壊させられ、絶望と屈辱の底に叩き付けられているのは自分ではないか?


『許せねえ…俺の女を怪我しやがって…』


 ゼノの前には、魅力的でおぞましい棘など無い幸せそうに笑う彼女がいた。ゼノが憧れ崇拝した彼女は闇に君臨する徹底的な悪だった。

 まさに今夜の彼女の暴れっぷりがそうだった。慈悲が無く、残虐で、血に飢えた完璧な女傑。


 きっと、ハルの周りにいる人間を全員殺して、彼とウルメアが結ばれれば、ゼノの理想の彼女は戻ってこない。

 逆にここでウルメアを裏切って、王家やハルたちに彼女の正体を密告すれば、彼女は捉えられ処刑されることは決まっていた。いや、彼女の場合、捕まらずに暴走するだろうから、その場で英雄の登場によって打ち首にされるのが落ちだ。

 そんなつまらない未来ゼノが望むものではない。

 だが、彼女の望みはハルという男と結ばれること。


『どうすれば…』


 何をどうやっても救われない自分がいた。


「ねえ、聞いてる?」


「………」


 ゼノはそこで彼女の言葉を初めて無視して考え込んだ。


「ねえ、聞いてるの?」


 拘束されていた触手が一気に締まり逆立った鱗が全身に食い込む。

 大量の血が自分の身体から滴り落ちるなか、目の前で頬を膨らませて怒っている愛らしい王女様を見つめた。


「ハハッ…」


『結局、俺には高望みだったってわけか?まあ、そうだよな…』


 幼い頃から物騒な地下や汚い下町で駆けまわってい自分と、きっと裕福な家庭で幸せいっぱいに愛を込められて育った英雄様とでは、人間として何かが決定的に違うのだろう。

 真っ当に生きることを許されなかった自分と、真っ当に育てられたであろう英雄様。


『騎士になって俺も正式に王城に入ってれば、目の前の女性から本当の笑顔を向けられる日が来たのかな?』


 痛みはもう無かった。ゼノの中で自分というくだらなさが際立ち、あるひとつの目的のための存在に集約していった。


『ゼノ・ノートリアスは復讐者です。この世の全ての上から見下ろすだけの人間を地獄に引きずり込む悪魔です。神殺し。俺は彼ら全ての天敵です』


 気が付けば絞め殺そうとしてくる彼女にゼノは微笑んでいた。


「ここで死んでおく?」


「ウルメア、俺はやるよ、あなたが満足する結果に必ず導くよ」


「………」


 態度の変わりように呆気にとられたウルメアは、触手の拘束を再び緩めた。


「そう、良かった。私も協力するから、報告はこまめにね。それとあなたはここに残って、後でここに赤龍から使者を送るから、その人と連絡を取り合ってね」


「かしこまりました」


「あ、そうだ、いい返事が聞けたので、はい」


 触手の拘束が解かれ、血だらけのゼノの胸にウルメアは左手で優しく触れた。すると、彼女の手から白い輝きがほとばしり、ゼノの全身の傷口が一瞬で塞がった。

 疲労も一気に押し寄せたが、ここで倒れるわけにはいかなかった。


「ウルメア様…ありがとうございます…」


「いいの、上手くいくように祈ってるわ、フフッ」


 地面に広がっていた触手が一気に彼女の背中に吸収され、鱗の触手だらけの空間は、もとの廃墟の小汚い地下室に戻っていた。


 それから、ウルメアが再び闇の奥に消えて戻って来ると、闇に溶け込む黒騎士の姿に戻っていた。


「じゃあ、私、帰って使者呼んでくるから」


「すみません、わざわざ」


「いいの、それより、白の反動で眠らないでよ?」


「ええ、大丈夫です…」


 すでに意識がボーっとしていたが、彼女にそう言われたのであればゼノが眠るころはないだろう。

 そして、ボーっとする意識のなかで、ゼノはふと過去にこの地下を駆けまわっていたことを思い出し、彼女にひとつ質問した。


「そういえば、ウルメア様どうして、今夜、あの闘技場で観客たちまで殺す大量の虐殺を?」


 ウルメアが出口の階段を上るのをやめて、立ち止まった。


「もういらないから今日で終わらそうと思っただけ」


「そうですか、できれば残していただけるとありがたいのですが…その、俺の故郷みたいな場所でもあるので、この地下は…」


「…そう、まあ、別にいいけど、ただ、きっとシフィアムの裏部隊が近々、この地下の街ごと全部終わらせに来るよ」


「それは本当ですか…」


「これでも私、ナーガード家の人間だからね、情報は集まって来る。四大神獣黒龍討伐の裏で密かにやるってね」


 ウルメアが明かりをゼノに向け、彼の顔を見ながら言った。


 もし、彼女の言ったことが本当ならば、地下の者たちは全員死ぬかもしれない。シフィアムの裏部隊がどのような形で構成されているか、その正体は未だにはっきりしておらず不明だが、彼の徹底した作戦遂行能力は、これまでに彼らが行ってきたであろう実績を知っている者ならば理解できた。まさに自分たちと同じように、残酷で犠牲をもろともしない連中だ。

 国に属しているかいないかの違いで、正義という偽りを建前に、殺戮を正当化する偽善者たちとゼノは認識していた。


「だから、今日、私は街を半壊させて、地下には凶悪な化け物がいるって抑止を示したかったんだけど、まあ、もうどうでもいいの、あなたが私の願いを叶えてくれそうだから…フフフッ、私はもう彼以外どうでもいいの」


 彼女はとびっきりの笑顔を見せると階段を上がって行ってしまった。彼女の言い方から少しは地下に情があったことが分かった気がしたが、それももう英雄様に夢中になって潰えていると思うと悲しくなった。


 そして、一人になったゼノは、暗闇の中、様々な不安を抱えたままうたた寝をした。


 その現実と夢と現の狭間で、ひとつだけ想うことがあった。


『この国に地獄の白炎(ごうか)を顕現させてやる…』


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