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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
20/781

図書館

 


 *** *** ***



 自由時間になったあと、ビナは私服に着替え、この城壁内にある、パースの街で一番有名な図書館に向かおうとしていた。


 その図書館は古くからあり、戦争の際も完全に破壊されることなく残った歴史ある建物だった。それでも何回か、その図書館の建物は改修工事をかさねて今に至っている。


 各国から集まってくる本を貯めているため、本好きの聖地となっていた。


 この図書館は数少ない一般の人々にも開放されている図書館でもあった。


 しかしほとんどは貴族や学者などの身分の高い者がしめていた。残りはこの街の兵士や冒険者が少しいるといった感じだった。


 それは、庶民の識字率があまり高くないことも起因していたし、本の価値を理解していない部分もあった、さらに立地的な面でも庶民はあまりここの図書館には訪れなかった。


 しかし、それよりも庶民は地域の危険動物の対処法や食べれる植物の育て方のほうが大切で、野生で生きるということに関しては、庶民の方が貴族たちよりも頭が回った。


 ビナは本を読むのが好きなので、当然この街にきた際にはちょくちょく寄っていた。


 ビナが門兵に挨拶して、鉄格子の門の外に出て、図書館の方向に足を進める。


 景色は相変わらず、壁に囲まれているため、見えないが、空は、ぽつぽつと小さい雲があるだけで、相変わらず今日はいい天気だった。


 ビナが歩いていくと、目的の図書館が見えてきた。近づけば近づくほど大きい図書館なことがわかる。


 図書館の中に入ると、そこは静かで、人はいるがみんな物音に注意を払っており、複数人で来ている人たちも声を抑えながら、会話をしていた。


 そこは多くの静寂が作り出されている空間だった。


 その中を、音を立てないように、それでもそそくさとビナは、調べたがっていた歴史コナーに足を運んだ。


「えっと、国の歴史、レイド王国は…」


 ビナが棚を眺めていると上の方の棚に探していたそれっぽい本を見つけた。


 しかし絶望的に届かないその棚の高さに手を伸ばすが当然、絶対届かないので、あきらめて梯子を借りてこようとしたら。


「はい、どうぞ」


 そう言われながら、すっとその本がとられ、ビナに渡された。


 ビナが驚いて渡してくれた人の方を見ると、とても背の高いエルフの女性が立っていた。


 透き通った金色に少しくすんだ灰色が混ざった色の髪の毛に、エルフの特徴の長い耳を持っており、瞳の色は綺麗な緑色をしていた。


 そして、その背丈はハルやレイゼン卿よりも高く、2メートルを軽く超えていた。


 よく図書館で彼女のことを見かけたことはあったが、ビナは怖くて避けていた。


 でも、彼女の優しそうな表情から、ビナの心も安堵した。


「あ、ありがとうございます」


「いえいえ、ここに来るのは初めて?」


「いえ、何回か来たことはあります」


 ビナはこの人を避けていたことを少し後ろめたく感じてしまった。


「そう、ゆっくりしていってね、閉館時間は今日は六時までだから、それじゃあね」


 彼女がそう言い残し、その場を離れようとすると。


「あ、あの私、ビナ・アルファって言います、今日からここの近くに住むのでたくさん来ます」


 そう渡してもらった本をぎゅっと抱きしめて言った。


「ふふふ、私はフルミーナ・タンザナートここの図書館の館長よ、よろしくねビナちゃん」


 彼女は、一瞬きょとんとしてそのあと、とても愛おしそうに笑いながら、ビナにあいさつを返した。


「は、はい!」


 ビナは、彼女と別れ、人の少ない机を探し、なるべく端の方に座った。


 机の上で本を開くと、レイド王国の歴史がずらずらと書かれていた。


 そこに、パースの街はむかしセウス王国であったと書かれていた。


「やっぱり、ここはむかし、他の国だったのよね」


 更に読み進めていくと、セウス王国の城のスケッチもあった、現在の古城アイビーとは全く似ても似つかないお城だった。


「ふむふむ、セウス王国の時代のお城の名前がアイビー、今といっしょ?」


 次のページをめくる。


「今から、およそ三百年前の七王国の戦争時代の終わりにアイビーが完全破壊されたのか……ここの図書館はこのとき半壊か、やっぱりすごい、この図書館!」


 次のページをめくる。


「セウス王国のお城アイビーが完全破壊された後、レイド王国の領地になり、お城を復興、住民の希望で名前はアイビーのままに、そしてそのあと魔法学園としてお城が利用されるか…」


 そのあともビナはレイド王国の歴史を読み進めていった。


 ビナが時間がたつのを忘れて集中して読んでいると図書館のベルが鳴った。


 しかしビナは集中して本を読んでいたため、ずっとその場所にいた。


 そこに、フルミーナが来て、優しくビナに声をかけた。


「ごめんなさいね、ビナちゃん閉館の時間なの」


 ビナが本から顔を上げる。


「すみません、すぐに出ます!」


 慌てて、本をかたずけようとする。


「そのままでいいわ私が片づけておくから」


「ご、ごめんなさい」


「いいえ、それよりまた来て欲しいわ」


「もちろんです、あの友達とか連れてきていいですか?」


「大歓迎よ、いつでもいいからね」


「はい、また来ます」


 フルミーナに手を振り、別れを告げた後、図書館の外に出る。


 外は空や街が夕焼けでオレンジ色に染まっていた。


 ビナはその中を城まで歩いて帰った。














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