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支え 支えて 支えられ

 ハル、エウス、レイゼン卿の三人がパーティ会場の一階にいるみんなのもとに向かった。

 一階は、二階の重厚な雰囲気とは反対に賑やかで華やかな空間が広がっていた。ドレスと正装で着飾った人々が中央で踊り、その周りを丸いテーブルが囲っていた。一階は人も多いため立食パーティーという形を取っており、人々はその丸いテーブルを囲って、食後のお酒を楽しんでいた。

 ライキルなどの女性陣たちがいたのは、その会場の端のテーブルであり、そこで彼女たちもパーティーを楽しんでいた。

 三人がそこに顔を出すと、そこにいた顔見知りの女性たちが集まって来た。誰々がいたかというと、まず、表彰式で別れたライキル、キャミル、ガルナ、ニュア、リーナの四人。最後にレイゼン卿の家族の、アハテル、グレース、ハザーナの三人がそこにいた。

 彼女たちはみんなパーティー用の美しいドレスを着飾ってひとりひとりが宝石の様に美しかった。そんなキラキラと輝く彼女たちの輪に入って行くのは勇気があるものだったが、当然、彼女たちを知る者たちからすればそんなことはない。

 彼女たちがいる場所にハルたち三人が到着して、まず最初に起こったことが、みんな集まってきて怒涛のように喋りはじめたことだった。


「ハル、こっちに来るの少し遅かったんじゃないですか…寂しかったんですよ…」

「エウス、お父様たちと楽しみ過ぎだわ!私たちのこと忘れてたでしょ!?」


 ライキルとキャミルはこっちに来るのが遅かったことを口にし。


「ハル、顔が赤いぞ?酔ってるのか?」

「うわ、ハルさん、酔ってるんですか!?」

「ハル団長、君が酔うとは珍しいね」


 ガルナ、ニュア、リーナの三人は酔っているハルに気づいたり。


「あなた、酔っぱらってるんですか?肩まで借りて、ああ、すみません、エウスさん」

「お父様、しっかりしてよ、みっともないわ!」

「そうよ、お父様、だらしなーい!」


 アハテル、グレース、ハザーナは、自分の夫、父親であるレイゼン卿にお説教をしていたリと、それはもうみんなよどみなく喋っていた。



 そんなみんなでわいわい盛り上がっている中、ライキルもハルが酔っていることに気づいた。


「…ハル、もしかして、酔ってるんですか?」


「…そう、ちょっと、だけね…」


 おぼつかない口調でたどたどしくハルは言う。


「見たところちょっとには見えないんですけど…もしかして、竜酒でも飲みましたか?」


 思考が定まらず、足元もふらついていた。きっと顔も赤くなっていたからなのだろう、ライキルには簡単に見破られた。それに、ハルが酔うのは竜酒だけなのでそこらへんも彼女は把握済みで看破されていた。


「今日は…おめでたい日だから…えっと、少しだけ……」


 十本以上開けて飲んでいるのでちっとも少しではなかったが、心配させないためにとっさに嘘をついてしまう。


「へえー、そうでしたか…」


 しかし、そんな嘘もライキルには見透かされていた。ハルが酔うに至るためには竜酒のボトルが一本や二本では全く足りないことを彼女は知っていた。

 見つめてくるライキルの純粋な瞳に耐えきれず、ハルが目をそらしたその瞬間。彼女の口角がにやりと不敵に笑ったような気がした…。


「でも、少量でも竜酒は強いお酒ですからね。ほら、ハル、酔ってるじゃないですか?だから私の肩を貸しますから掴まってください」


 ハルが視線をライキルに戻すと、見えた気がした不敵な笑顔はそこにはなく、ニコニコとした笑顔の彼女がいて両腕を広げて待っていた。


「でも…」


「いつも、私がハルに支えられていたんです。こういう時ぐらいは私に頼ってくださいよ!ね?」


 ものすごい眩しい笑顔で迎えてくれるライキル。だが、そんな彼女から何か圧のようなものを感じた。その謎の圧がハルの選択から拒否という言葉を潰してしまう。


「…じゃあ……」


 そう、ハルの返答がまだ終わらないうちに、ライキルはハルの腕を強引に取って肩を貸してくれた。


「はい、今日は私がハルを介抱してあげますから、安心してください!」


「…ああ…ごめん、それと、ありがとう…」


 申し訳ないという気持ちがあった。それと同じくらい今のハルは彼女に感謝をしていた。なぜならこういう時、真っ先にやって来て自分を支えてくれるからだ。そのことに関してはハルは感謝してもしきれなかった。


「いえ、いいんですよ、いつでもこうやって私を頼ってください!」


 彼女の穏やかな優しい声、そして、しっかりと肉のついた健康な鍛えられた腕がしっかりとハルの身体を支える。それらの包容力にすっかり安心したハルの瞼はだんだんと下がっていく。意識が途切れる寸前にあったのはライキルの素敵な笑顔だった…。


 のだが…。


『くぅ、これは大チャンスです!酔っているハルを介抱する振りをして好き放題できますね!見たところ竜酒を十はいきましたね、そしたら、次の日起きたらどうせ記憶もないでしょうからね!ぐへへへ』


 聖母のような笑顔のライキルの内心は真っ黒で汚れていた。


「ライキル…」


 そんなげすい考えを巡らせていたライキルに、ニュアが疑り深い目でジッと見つめてきていた。


「うわあ、なんですかニュア!?」


「いえ、何やら私のライキルが邪悪な考えをしていそうな顔をしていたので…」


「な、なんですかそれ、い、意味が分かりませんよ、私はちっともそんなこと考えてません!」


 ライキルはそんなことは知らないといったぐあいに目を背けるが、ニュアはそんなことでは引き下がらない。


「本当ですか?もしかして、このまま、酔ってるハルさんに好き放題しようとか思ってたんじゃないですか?」


「…………」


 ライキルの全身から嫌な汗が流れ始め、沈黙して固まってしまった。その態度がニュアにとってはもう答えのようなものだった。


「ああ、やっぱり!だめです、それは私が許しませんよ、ライキルは私のものです!ほら、ハルさんしっかりしてください、このままだとライキルに食われますよ!」


 ニュアがハルの身体を掴んで揺すり始めた。彼女の目的はあくまでハルではなく、ライキルというなんとも彼女らしい理由であったのだ。


 そんな具合に暴走し始めた二人は、当然ながら酒が入っており正常な判断をするには欠けていた。


「ちょっと、ニュア、揺らさないでください、ハルが目覚めてしまいますから!」


「いいんです、これはハルさんを守り、ライキルも悪の道に落ちないようにするため必要なことなんです!」


 そこでしびれを切らしたライキルはニュアにつかみかかった。


「ニュア、離れてください、こうなったら実力行使に出ます!」


「かかって来てください、ライキルのためだったら私、ライキルでも容赦しませんよ!」


 そうして二人の壮絶な取っ組み合いが始まったのであった。


「おいおい、二人とも、何してるんだ…こんなところでほらやめな」


 リーナがやれやれといった感じで二人の仲介に入り、場を治めにいく。



 ライキルの腕から離れたハルは器用にその場に立って眠っていた。しかし、それも数秒であり、ふとした時に身体が傾いて地面に倒れ込みそうになる。


「おっと、おい、ハル、大丈夫か?」


 そこをガルナが片手で見事にキャッチして支えてくれた。


「ん?」


 数秒の間意識が無かったハルが、身体に落下感を覚えて目を開けるといつの間にかライキルがガルナに変わっているという不思議な現象が起きていた。


「あれ、ライキルが…ガルナになってる?」


「アハハハハ、なに、変なことを言ってるんだいハル!ライキルちゃんならあっちでニュアちゃんと喧嘩中だぜ!」


 ハルがガルナの背中から後ろを覗き込むと、そこには喧嘩というよりはライキルにニュアがべっとりと抱きついてそれを引き剥がそうともがくライキルとリーナの姿しか確認できなかった。

 仲がいいなと思いながらハルはガルナに向き直り、ひとつ質問した。


「…そう言えば、今日は酔ってないんだね、飲んでないの?」


「ん?ああ、やっぱり、ハルがいなきゃ酒が進まないからずっと待ってたんだ。でも、この調子だともう無理だな…」


 ふらふらになっているハルを見てガルナは残念そうにけれど優しく微笑む。その彼女の笑顔を見て、忙しかったとはいえ、これは悪いことをしたとハルは思った。


「…ごめん、ガルナ…」


「よいよい!その代わりにまた私と一緒に飲んでもらうぞ!」


 彼女のとびきりの笑顔が眩しく輝く。


「約束だからな…」


 そして、切り替わるどこか切ない表情に、それは彼女にとって自分と飲むことが楽しみだったのだなと思い知らされるものだった。


「…はい……」


 ハルは素直に返事をした。

 酔っているからなのか、今のガルナは頼もしく、愛らしく、無敵に見えた。誰でも惚れてしまいそうな今の彼女にハルは、なんだかそれはずるいなぁと感じてしまった。

 だから、そんなガルナに上から覗き込まれた今のハルは無条件で彼女の赤い瞳に吸い込まれそうになる。それに酔っているハルが、今の彼女の魅力に抵抗する手段は何一つなかった。


「どうした、ハル顔が真っ赤だぞ?」


「え、ああ、な、な、なんでもない、なんでもないんですよ…ガルナさん、アハハハ…」


「そうか、ならいいんだ」


「…………」


 ハルは支えられながら、ライキルとニュアの取っ組み合いの喧嘩が治まるまで、ガルナと一緒に眺めていた。


「あ、そうだ、今日のハル、とってもかっこよかったぞ!」


「……………」


 不意に放たれた言葉にひたすら沈黙したあとハルは小さく返答した。


「…あ、ありがとう……」


『今それを言うのはずるい……』


 参ってしまったハルは目を閉じる。もうどうにでもしてくれといったように投げやりに彼女の腕の中で眠ることを決めた。様々な思いがめぐる中、自分の情けなさだけが残っていた。



 ***



 そんなハルたちの騒動の横では、エウスとキャミルが、レイゼン卿の家族と談笑していた。

 ただ、ライキルとニュアの取っ組み合いが始まると、ハザーナがそっちの方に行ってしまい、グレースも後を追ってしまった。


「面白そうなことやってる、私も混ぜてぇ!」


「あ、ちょっと、ハザーナ、待ちなさいって!」


 二人が行ってしまうと、レイゼン卿が酔っていたが申し訳なさそうに謝罪した。


「申し訳ありませんキャミル様、娘たちが慌ただしくて…」


 王族の前だとどんな時でも礼儀を欠かさない彼は貴族としてさすがだった。


「いえ、いいんですわ、レイゼン卿。私、彼らのように無邪気で自由な子たちの方が好きですから」


 キャミルが見つめる方では、みんなが楽しそうにはしゃいでいた。


「そう言っていただけると嬉しい限りなのですが、それとは他に重ねて謝りたいのです。今日、エウスさんやハルさんたちとの時間をキャミル様から奪ってしまったことを、お二人とキャミル様が過ごせるのはこの祭の間だけとお聞きしました…」


「ああ、それならいいわ、後で、エウスにきっちり償ってもらうから」


 キャミルが何食わぬ顔でそう言うと、エウスは爽やかな笑顔から一変え?と疑問を口にしていた。


「いえ、あれは私がつい二人の話を長引かせて…」


 慌てて弁解しようとするが、途中でキャミルに遮られてしまうが、それでよかった。


「なんて冗談よ、分かってたわ。それにレイゼン卿あなたも私たちとは今ここででしか会えないでしょ?」


「ええ、ですが、私は会いに行こうとすれば…」


「フフッ、だからいいのよ、冗談だっていったじゃない。私、今日、二人が忙しいのはもちろん知ってたわ。ただ、そこで、お尋ねしたいのだけれどレイゼン卿から見て二人はどうでしたか?皆さんと上手くやれてましたか?」


 皆さんとは二階に集まっていたお偉いさんたちのことだった。


「ああ、それはもちろん、お二人はお若いですが礼儀もしっかりしており、素晴らしかったですよ」


「ふーん、そっか、なら、いいかな」


 キャミルが、隣にいるエウスの顔を見ると得意げに鼻を高くしていたので、彼の尻を叩いてやった。


「いてぇ、何するんですか、王女様!?アルストロメリア夫妻の前なんですよ!?」


「いいのよ、私、王女様だから」


「そんなの暴政ですよ!」


「そんな暴政でもエウス。あなただけは救ってあげる」


「ううん…そう言われると、また、返しずらいなぁ」


 二人がそんなやり取りをしているとアルストロメリア夫妻が微笑ましそうな表情で二人を眺めていた。


「おっと、これは失礼いたしましたキャミル様、エウスさん。お二人はとても仲がよろしいのですね?」


 レイゼン卿が二人を見て尋ねた。


「ええ、キャミル様には仲良くさせてもらっています」


「そうね、エウスとは私が仲良くしてあげてるわ」


 エウスとキャミルが、お互いに視線をぶつけ合いながら悪意を持って言い合うと、レイゼン卿夫妻はそんな二人を見て今度は笑っていた。


「エウスさん、以前、砦にいらっしゃったときより、とても明るくなりましたね。そして、なんだかたくましくなりました。あれからいろいろあったのですね?」


 砦にいたときとは見違えて変わっているエウスを見てアハテルは嬉しそうに言った。


「そうですか?まあ、でも、確かにいろいろありましたね…」


 そこで思い出す旅の始まり、ビスラ砦で最初に過ごした宴の時間を。


「…ですが、アハテルさんが最初に俺の目を覚まさせてくれた気がします。あのビスラ砦でみんなで宴をしたあのときの言葉。最後まで何が起こるか分からないって教えてくれたあの時から俺の視界は広がった気がします」


「そうでしたか!お力になったのなら、私も嬉しい限りですわ!」


「ええ、不安だらけの旅で、最初に出会えたのが、アルストロメリア家の皆さんで本当に良かったです」


 エウスは改めてそうしみじみと思うのだった。




 それから、アルストロメリア夫妻が気をきかせたのかエウスとキャミルを二人っきりにして、彼らはみんなのところに行った。


 二人だけになるとキャミルが口を開いた。


「ねえ、エウス」


「なんだ?」


「エウスは私と離れて寂しくなかった?」


「…………」


 エウスがキャミルを目で捉えようとしたとき、彼女は言った。


「その目は使わないで答えて欲しいな、私の今の気持ち知って欲しくないから…」


「…そうか、でも、俺の目なんて使わなくても、そう質問されるとどう思ってるか簡単に分かるぞ」


 会場が騒がしいなか、二人のいる場所だけ温度が低く、静かな気がした。まるで、隔離された世界でそこはただ、ただ、静寂を求めているかのようだった。


「じゃあ、今、私がどんな感情を抱いているか当ててみてよ?」


 キャミルがそう問いかけるとエウスはすぐに答えた。


「嫉妬、憧れってところかな?」


 そう言うと、しばらく短い沈黙が二人の間に流れた。けれど、その静寂は居心地の悪いものでは決してなく、相手の言葉を待つとき、そして、相手にどんな言葉を掛けるか、深く考えている大切な間だった。二人の想いは二人の中で完璧であり完成されていた。だから例えどんなにひどい言葉で片方が片方を突き放したとしても、お互いの関係が揺らぐことが無い。むしろ、そんなことを言ってしまう相手を心配してしまうほどなのだ。


「ほんとに目使ってないの?」


「使ってないよ、キャミルのことだ、もう、使わなくたってわかる」


「なんかそれはそれで気持ち悪いかも…」


「ちょっと言葉きつくありませんか?」


 悪戯っぽく笑い誤魔化すキャミル。そんなことでは許されませんよと顔をしかめるエウス。だけど二人は最終的に顔を合わせると笑い合ってしまう。


「ていうかやっぱり、エウスだけ分かってるのはずるいよ、反則だよ、卑怯だよ」


「てことはやっぱり当たってたってこと?」


「まあ、当たってたけど、でも、嫉妬じゃない、憧れよ。アハテルさんすごいいい人で、さすがはアルストロメリア家に若くして嫁ぐだけあるなって、それに肝が据わってて私もああなりたいって思った。そして、エウスを尻に敷きたいって思った」


「別に尻に敷く必要はないと思うし、エウスさんもそれは望んでないと思うぞ。ていうかレイゼン卿はべつにアハテルさんに尻に敷かれてないからな?」


「エウスのバカ、そういう意味でいったわけじゃないんだけど?」


 知っていた。キャミルの真意を、けれどエウスにその彼女の真意である願いを今、叶えてあげることはできなかった。今の自分ではできるわけがなかった。


「…ハハッ、分かってるよ!」


 いつもの笑顔で軽く笑った。だけど、その笑顔にはきっとどこかに不備があったのだ。自分でも気づけないほどの些細な変化。それを逆にキャミルは見落とさなかった。だから、今度はエウスが暴かれる番だった。


「あ、エウス、もしかして、今、本気で落ち込んだ…?」


「!?」


 気づかれてしまったこともそうだが、それより自分の不甲斐なさに落ち込んだ。けれどこの落ち込む理由でエウスは後悔だけはしたことがなかった。

 それでも今日の表彰式を迎えて、自分の小ささを再確認させられた気がしたから、さっきのキャミルの真意を読み取った時、胸にきたのであった。


「すごいな、なんでわかったんだ?」


「エウスのことはなんでもわかるよ、ずっと、君だけを見てきたからね!」


「…なんかそれは、気持ち悪いな」


「エウスの言葉トゲトゲで痛いんだけど」


 むっとふくれた顔でキャミルはエウスを見つめる。いつもなら互いに目を合わせて笑ってくれそうな場面ではあったが、今の彼は違った。どこか切ない表情の彼の気持ちは沈んだままだった。また少し沈黙が流れたあとエウスが尋ねた。


「…どれくらい待ってくれる?」


 そう尋ねられたキャミルは、なんだそんなことかと思うが、彼の立場に立ってちゃんと考えるとそれがどれだけ大変で険しい道のりかが理解できた。だから、慰めるように包み込むように優しく答えてあげた。


「いつまでも、待つよ…何年、何十年もずっと待ってる…」


 キャミルはそっと彼の手を握った。


「…そっか……」


 エウスも握られた手を一瞬握り返すがすぐに離した。


「ありがとう、キャミル」


「いいって最初に救われたのは私の方だし、そのお返しぐらいさせてよね。私の人生全てで…」


「ハハッ、王女様が俺に全部はもったいなさすぎるぜ」


「少し、重たかったかしら?」


「まあ、めちゃくちゃ重かったな」


 そこで二人はなんてことないいつもの笑顔で笑い合いあった。けれど、エウスはふと現実に戻って考えてしまう。


『ずっと待つってのは無理だろうな…』


 エウスが眺める先にはみんながいた。まだライキルとニュアが暴れていてリーナが押さえていた。それを眺めるハザーナが飛び込んで行くのをグレースが押さえつけていた。ハルはガルナの腕の中で爆睡しており、アルストロメリア夫妻はそんな光景を夫婦仲良く見守っていた。


 そんな愉快な場所にエウスも混ざりたくて歩みを進めると、当然キャミルもついて来る。


「あ、そうだ、答えそびれてた」


 エウスが振り向いて、キャミルの方を向いた。


「俺もキャミルに会えない間ずっと寂しかったよ」

























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