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特等エリアへ

 ハルたちがホテル、ブルーブレスを出る時に、館の使用人が馬車を貸してくれた。家族ぐるみを想定のつくりであったのかちょうど六人乗りの大きな馬車であった。

 馬車が走り出すとしばらく大きな他の館たちを通り過ぎて行った。一等エリアはやはり高級ホテルの集まりであり、二等エリアから離れるほど主な移動手段は馬車や馬であった。そのためハルたちが馬車で一等エリアの奥に進んで行くほどに徒歩で歩いている人たちは見かけなくなっていた。

 ハルが馬車の中から窓の外を見ていると、館の群を抜けたのか何もない広い場所に出た。そこはただ石畳の地面が広がっているだけであり、建物も何も一切建てられていない場所だった。


「ここら辺、何も建ってないんですね」


 ハルが覗いていた窓を隣にいたライキルも覗き込んで来た。


「ここから先が特等エリアだから分かりやすくしたんじゃないか?」


 エウスが二人が覗いていた窓と同じ窓を覗いて彼自身の意見を述べていた。

 ハルたちの乗る馬車が進む先には、レイドやアスラの王たちが滞在する特等エリアがあり、誰にでもわかりやすくここから先は特別な場所ですよと示しているといった感じだった。


「こっちにも何もなーい」


「ほんとです、さっきまでたくさん建物が建ってたのに」


 ガルナとビアが、ハルたちとは反対の窓を眺めて言った。

 周辺に何もない見晴らしのいい石畳の広場に、ポツンとハルたちが乗った馬車だけが走っていた。

 その広場には隠れる場所が一切なかった。遠くから炎魔法などの火球が飛んで来ようものなら、馬車は燃えるしかなかった。

 つまり、そのだだっ広い石畳の広場は、ひとつの防衛手段と言って良かった。

 しばらく石畳の広場を進んで行くと、五メートルほどの壁が見えて来た。馬車の窓から見えるその壁はどこまでも横に広がっており、その終わりが見えなかった。そんな防壁があることでその内側が特等エリアであることは容易に想像できた。

 広大なその敷地内の広さは、王族を護衛する二国の軍隊が全てこの特等エリアに入っているとなると納得のいく敷地の広さと言えた。

 馬車が一回大きな音をたてると静止した。そして、御者がハルたちのいる馬車の扉を開けて顔を出した。


「すみません、門番の方が呼んでおります、どなたか降りてきていただけませんか?」


 御者が馬車の中にいた全員の顔を見渡して言った。


「俺とハルが出るよ、みんなはここで待っていてくれ、ハル来てくれお前がいなきゃ始まらない」


「わかった」


 ハルとエウスが馬車から降りると、そこにはレイド王国の鎧とアスラ帝国の鎧を来た門番が立っていた。門の両脇にはちょっとした窓が取り付けてあり、その窓はガラスではなく代わりに鉄の格子がはめられていた。


「どちらの方でしょうか?」


 アスラの門番が尋ねると、隣にいたレイドの門番がとっさに反応した。


「あなた様はハル・シアード・レイ様ですね!」


「はい、ダリアス王との面会に伺ったのですが」


 ハルがここにきた理由を伝えるとすぐにレイドの門番は隣にあった鉄格子の窓から人を呼んだ。

 レイドの門番がいた方の鉄格子の窓から人が姿を現した。


「こちらに来て顔を見せていただけますか?」


 鉄格子の窓から係りの人が姿を現してハルに言った。

 ハルが鉄格子の窓の前に立つとその係りの人は深く頷いた。


「シアード様お会いできて光栄です。すぐに開門しますのでお待ちください」


 ハルはふたりの門番と係りの人に礼を言うと馬車に戻った。


「さすがは元剣聖様、顔パスだな、しかも馬車の積み荷も確認されないとはな信頼されてるんだな」


 馬車に戻る途中でエウスが言った。


「そうだね、ありがたいよ」


 それから門が開かれ特等エリアである敷地内に馬車は入っていった。

 敷地内はとても広くまず最初に目に入って来たのは、大きな縦長の長方形の建物がふたつありどうやらそこは軍事施設の様だった。

 そのふたつの建物は、互いを繋ぐ渡り廊下が三階についており、ハルたちの馬車はその下をくぐってさらに奥に進んで行った。


 その縦長の長方形の建物を過ぎていくと、少し坂を上ったところにふたつの立派な館がそこでもふたつそびえ立っているのが見えた。

 道は途中からふたつに分かれてどちらの館に進むか選ばされる形となった。

 ふたつの館にはそれぞれ龍と獅子の大きな紋章がそれぞれの館についており、どちらがレイド王国の館か識別することができた。

 ハルたちの馬車は右の道に曲がって、無事に獅子の紋章があるレイド王国の王族が住む館に到着した。


「さあ、みんな降りるぞ」


 エウスが一番に馬車から降りて行った。


「なんだか緊張してきました」


 次にエウスの隣にいたビナが馬車から飛び降りた。

 次にハルが先に降りて、残ったライキル、ガルナに手を貸してふたりを降ろした。


「ありがとうございます、ハル」


「あんがとう、ハル」


「どういたしまして」


 ハルはふたりに笑顔で応えた。


 それから五人はここまで馬車を出してくれた御者に礼を言うと馬車はブルーブレスに戻って行った。

 ハルが目の前の四階建ての白を基調とした館を見上げた。その館は石造りの建物で細部までこだわって作られていた。

 短期間で土魔法を利用して大量の建物を建てるとなると簡素な出来になってしまうが、ここだけは王族が泊まるだけあるのか、他の館とは全く出来が違った。


「さてと、それでは会いに行きますか」


 レイド王国の立派な館の前にいた五人が、エウスの掛け声とともに館の扉に歩いて行こうとしたときだった。


 バン!!!


 館の扉が勢いよく開かれるのだった。










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