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いつものみんな 

 ハルが屋上から出て東館の階段を下っていた。後ろからはライキルが一緒についてきていた。みんなで久しぶりの食事を取るため一階に向かっていた。


「私みんなを呼んできますね、場所はいつもの中庭でいいですか?」


「それでいいよ、俺はキッチンに行って料理を作ってもらうように頼んでくるよ」


「はい、お願いします」


 ハルが一階に着くとライキルに言っておかなければいけないことを言うために声をかけた。


「そうだ言っておかなきゃ」


「なんですか?」


「ガルナは…」


 ガチャ!


 ギイィ


 ハルがライキルに話そうとしたとき、ハルの後ろでドアが開く音がした。開かれたドアの部屋はハルの部屋のであった。

 そしてそこから出てきたのはガルナだった。寝癖のついた彼女は目をとろんとさせておぼつかない足取りでゆっくり歩いていた。


「な、なんでガルナがハルの部屋から出てくるんですか!?」


「そうそう、それを説明しておき…おっと!」


 ハルが説明しようとしたとき後ろからガルナが一気に駆けつけて抱きついてきた。


「ふたりともおはよういい朝だね!」


「ガルナ、今はもう夕方だよ」


「ええ?そうなの…?」


 ハルとガルナの距離はかなり近く、それを見ていたライキルが目を爛々と輝かせてふたりに迫った。


「どういうことなんですかハル?」


 ライキルを見ると怒っているというよりは今すぐにでもこの状況を把握したいという感じだった。

 そこでハルも別にただガルナが自分の部屋で昼寝していただけということだったので簡潔に説明することにした。と言うよりもそれ以外何も説明することがハルにはなかった。


「昼寝してたんだ」


「ひ、昼寝ですか、一緒に昼寝してたんですか!?」


 あまりに短く簡単に説明してしまったのでライキルに想像の余地を与えてしまった。


「いや、ちが…」


「ハルの気持ちよかった…」


 それはハルの部屋のふかふかのベットのことだったが、まだまどろみと現実を行き来していたガルナの言葉ではいろいろ欠けている部分があったし、この状況で寝心地の良さを言うのも的外れなのは間違いなかった。せめて自分が何をしていたかをガルナには言って欲しかったとハルは思うのだった。


 そしてガルナのその発言によってライキルの思考は乱れに乱れ、混乱していた。


「ハ、ハル、まさかガルナと…」


「ガルナ、早く目を覚めしてくれそしてしっかり説明してあげてくれ、ライキルがとんでもない誤解生み出してるぞ」


「え?」


 ガルナの目の前ではライキルが思考だけ別世界に飛んでしまったかように放心状態になっていた。


「ライキルよく考えるんだ俺は屋上にいただろ」


「でもハルはガルナが昼寝をしていたことを知っていました…それは一回ガルナの寝ている姿を見たってことですよね…きっとそこでハルは…」


 ライキルは膝から崩れ落ちていた。ふざけているのか本気なのかいまいち分からなかったが、彼女の表情から何やら本気で誤解して混乱している様に見えた。


「ライキル、しっかりしろ!違うってガルナがひとりで昼寝してただけだからね!」


 ハルもしゃがんでライキルの肩を掴み揺すって正気にもどそうとしていた。


「ハル、今度一緒に寝ようぜ…」


 背中のガルナが甘い声で囁いてきた。


「ガルナちょっと静かにしててね」


 ハルは優しい笑顔で優しく言ったがこれ以上かき乱さないで欲しいという願いがしっかりと込められていた。


「フフ、わかった…」


 ガルナもこの状況を楽しんで言っているのか、本気で言っているのか分からなかったが、その言葉でハルは一瞬心が揺らいでしまった。


『全く、ガルナはそう言うことを無責任に言う…じゃなくて今はライキルを!』


 ハルが肩を揺すって説明しているとライキルがやっと目を合わせてくれた。


「ライキル…戻って来てくれた?」


「ずるいです…」


「え?」


「いつもガルナばっかり、ハルにべたべたしてずるいです!!」


 そんなことは無いとハルは思いたかったが確かにガルナには甘いところが自分にはあった気がしたし、思い返すと何回か抱きしめ合ったシーンが頭の中に浮かんできてハルの顔は少し赤くなった。


 ドサッ!


 ライキルがハルの胸に飛び込んで来た。後ろにはガルナ、前にはライキルに抱きしめられていた。ふたりからはそれぞれ別々の香水のいい匂いがした。どちらも男を惹きつけるような甘い匂いだった。

 そんないい匂いのふたりに挟まれた状況でも、ハルはさっきの大事なことを忘れてはいなかった。


『ふたりともいい匂いだな、きっといい香水使ってるんだろうな……って違う、食事だよ、そうだ食事!』


「ちょっと待って、はやくしないと日が暮れるよ!ほら、ライキルみんなで食事するんじゃなかったの?ねえ、ガルナもお腹減ったでしょ?」


 ハルは食事のことを持ち出してふたりをどけようとしたが、どっちも離れてくれる様子がなかった。と言うよりハルの言葉ではもう動いてくれる気配がなかった。


 そのように夕暮れの通路で三人が騒いでいるとエントランスの方から誰かが歩いてくる足音が聞こえた。


「何してんだこんなところで…?」


 歩いて来たのはハルの親友のエウスだった。

 ハルはこの状況を打開してもらうべく助けを求めた。


「あ、エウスいいところに来てくれた、助けてくれこのふたりに離れるように…」


「おお、相変わらずハル様はモテモテだこと、頑張れよ」


 エウスは全く状況が飲み込めなかったが、いつも通りの光景にどこか安心した。それは四大神獣の討伐で色々あった後もハルは各国の要人たちとの面会で休む暇がなく疲れているのではないかとエウスは思っていた。しかし、目の前の様子を見ると彼は元気そうで何よりだった。そして、なんだかめんどくさそうだったので、エウスはそのままこの場を立ち去ろうとしていた。


「いや、待てい!」


「グエ!!」


 ハルは、横を通り過ぎようとしたエウスの首に素早く腕を回して、彼を捉えた。


「やめろ、俺を巻き込むな、どうせハルお前が何かしたんだろ、この色男め!」


「まあ、話しぐらい聞いていけエウス君」


「エウス、邪魔ですどっか行ってください…」


 巻き込まれたエウスにライキルから理不尽な言葉が襲いかかった。


「いや、俺だって邪魔したくなかったよ!?ほら、ハル、愛しのライキルちゃんのお願いだぞ放せぇい!!」


 エウスはハルの腕力に抵抗しようとしたがビクともしなかった。

 四人になっても通路で騒いでいるとそこに東館の奥から再び誰かが歩いて来た。


「あれ、みんなそろって何してるんですか?」


 そこで声をかけてきたのはビナだった。彼女は全身から汗を流しており、さっきまで体を動かしていたことが一目で分かった。


「ハル団長、面会は終わったんですか?」


 ビナはみんなにまとわりつかれているハルに普通に話しかけた。


「ああ、今日ちょうど一段落ついたんだ、だから今からみんなで食事をしようと思って探してたんだ」


 ごちゃごちゃしているなかハルが答えた。


「本当ですか!?やった、ハル団長とお食事だ!」


「そうだったのか!?いいな!久しぶりだな」


 エウスがハルに捉えられているなか、賛同して頷いていた。


「それじゃあみんなで食事にしましょう!!」


 ビナが笑顔でみんなに言った。











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