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元剣聖ハル・シアード・レイの神獣討伐記  作者: 夜て
神獣白虎編
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宴 開始

 ビナが目の前に並ぶ、ごちそうに早速、手を伸ばそうとしたとき、その手をライキルにやんわり止められた。


 ビナは首をかしげながら、『なんで?』と思いながら、みんなの方を見ると起立しており、レイゼン卿の隣には、三人の美人がいた。


「紹介しよう、彼女が我が妻のアハテル・アルストロメリアだ、こっちは娘たちの、次女のグレース、一番下のハザーナだ」


 アハテルは女性にしてはかなりの高身長だった。高身長のレイゼン卿とはお似合いだと誰もが感じるほどの身長差だった。


 着ている白いドレスは、肩まで切りそろえられた金髪の髪と小麦がかった肌を、よりいっそう映えさせ、美しく見せた。


 グレースはレイゼン卿と同じく、長い黒髪を後ろで一本にまとめており、すっきり整った小顔にとてもよく似合っていた。


スラっと長い背にも、アハテルと同じような、白いドレスを身にまとっており、グレースからはとても大人びた印象を受ける。


 ハザーナは、まだ幼さを残しており、肩までの黒髪をアハテル同様切りそろえており、その愛らしさが増していた。


 動きやすそうな服装はアハテルとグレースとは違った雰囲気を醸し出していた。それは騎士にあこがれる少女のような女の子だった。


 レイゼン卿の紹介する順に、彼女たちは、お辞儀をしていった。


 ハルたちも自己紹介をする。


「初めまして、私はハル・シアード・レイと申します」


「まあ、じゃあ、あなたがあの有名な剣聖なのですね」


 ハルは微笑しながら、軽く頷いた。


 次にエウスが自己紹介をする。


「初めまして、エウス・ルオです」


 挨拶とともに見せるエウスの完璧な笑顔は、貴族特有の見えない警戒心のようなものを、完全にほどいてしまう。


 特にエウスは女性に対してかなり自信を持った接し方ができた。


 それは、特にこういうパーティーのような場所で力を発揮することが多い。


 上流階級の人たちとの交流する際の、礼儀を心得ていなかった頃のエウスを知る、ハルとライキルはたまにこのことでエウスをからかうが、二人もこのエウスの人を惹きつけたり、他者への心遣いには、純粋に尊敬していた。


 たまにエウスの人の心を見抜くのが鋭すぎて怖いときもあった二人だったが。


「彼はエリー商会の会長なんだ」


 レイゼン卿は、今さっき知った情報を、得意げに披露する。


「本当ですか!?エウス様はエリー商会の!?」


「はい、奥様、王都で少しばかり商売をさせてもらっています」


 ライキルの顔は、小さな苦虫をつぶしたような表情で、横目にエウスを見る。それはエウスの『少しばかり』どころではない商売を広げるえぐさを知っていたからだった。


 実際、謙遜のつもりで言ったのはライキルもわかっていたが、たまに顔に出てしまうときがあった。


「エリー商会から出ている香水は家族で愛用させてもらってるわ」


「ありがとうございます」


「さあ、次のそちらの方は?」


『ハッ』と我に返ったライキルは、すました顔に戻り、丁寧にあいさつをした。


「ライキル・ストライクです」


「とってもきれいな金髪だわ、顔もチャーミングね」


「すみません、旅の最中なので身だしなみがひどくて」


 ライキルが行軍で体を綺麗にできなかった、ゆえにそこを気にしていた。


「そんなことないわ、あなたとってもかっこいいわ」


 そういったのは、アハテルにとても似ているグレースだった。


「お風呂貸してあげるから、あがったらその髪とがせてもらえません?」


「それは助かります、それと私の髪で良ければご自由に」


「やった、ありがとう!」


 グレースは嬉しそうにライキルを眺める。


「彼女メイド志望なんだけど、うちの主人がもう少しここに、いてくれって、言ってきかないのよ」


「おいおい、そんなこと言うなよ、アハテルよ」


「本当のことじゃない」


「むう、まあそうだが」


 レイゼン卿の外見と似合わない寂しい性格はこの場のみんなを和ませる。


「さあ、最後の彼女を紹介してもらおう」


 そういうとビナはあからさまに緊張していた。


 ビナはエウスとは全くの逆といていいほど、貴族などの上流階級の人たちとかかわるのが苦手だった。エウスでもハルに打ち解けさせるのに時間がかかったほどだった。


 それを知っていたハルとエウスは、優しく見守り、エウスは『大丈夫、みんな待ってくれるぞ』などと、ビナにフォローを入れる。


 ライキルはビナの手を握り、小声で『大丈夫ですよ、あなたの思う不安は、この人たちにはないですよ』と言う。


「ビナです」


 小声で名前だけを名乗り、顔を下に向けて、手で顔を仰いでいた。


 最後に、ハルがビナのことを紹介する。


「彼女は剣術の達人です。この中で私の次に実力がある立派な騎士です」


「おお、そうだったのか、ハザーナは十歳だが、同じくらいの子がすごいな、やはり王都にたまには行ってみないと騎士団がどうなっているのかわからんな」


 レイゼン卿がそう感心していると、ビナは恥ずかしながらも答えた。


「私は今年で、十八歳になります、レイゼン卿」


 レイゼン卿はビックリしつつも焦って訂正した。


「いや、すまないな、我が家系は皆でかくてな」


「いえ、とんでもございません、私の背丈が……」


 ビナが『背丈が』の続きを話そうとした直後、ハザーナが前のめりに、ビナにせまり、会話にわって入った。


「あなたすごいわ!その身長で騎士だなんて、ぜひ私を弟子にしてください!」


 ビナは突然の会話の乱入にビックリした。


「これこれ、ハザーナ、はしたないぞ」


「人様を外見で判断したお父様には言われたくありませんわ!」


「ぐっ」


 アハテルはそのやり取りを微笑ましく眺めている。


 エウスは、レイゼン卿が妻や娘たちにかなわないんだなと、応援したくなるようなまなざしを送りつつも、自分もこうなるのではないかと、どこか未来予知的なものを、目のあたりにしている気分だった。


 レイゼン卿は気を取り直して、皆を席に座らせた。


「さあ、自己紹介も終わったことだ、我々も食事を始めようじゃないか」


 そばで控えていた使用人たちに伝える。


「すまない、みんなに飲み物をそそいでくれ」


「はい、かしこまりました」


 使用人たちがそれぞれ飲み物を注いでいく。十六歳以下のハザーナだけ、果物をつぶして冷やした、甘いジュースが用意され、そのほかのみんなには、王国の北方で作られている国産の赤ワインが注がれた。


 レイゼン卿がグラスを持つと、ハルたちもグラスを持ち上げた。


「それでは、この騎士団の旅の無事を願って、カンパーイ!!!」


「カンパーイ!!!」


 ハルたちは楽しそうにグラスを掲げる。


 宴が始まった。







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