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TS転生したけど、子供いた  作者: 赤途碧
TS転生したけど、子供産んだ
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『三角食べ』と『ばっかり食べ』


 ハル、わたし、サキちゃんは夕飯の席に付き、声を揃える。


「「「いただきます(いたらきまちゅ)」」」


 メニューは白米、豆腐とワカメの味噌汁、サバの煮付け、ほうれん草のお浸しという和食だ。


「そうだミカ、新婚旅行なんだけど行きたいところとかあるか?」

「うん? 特に希望はないかな? ハルに任せるよ」


 投げやりな返答に聞こえるけど、別に新婚旅行に興味がない訳ではない。

 

 この3人……いや、まだ産まれてきてはいないけれど、お腹の子も含めて4人で出掛けたら、何処に行ったって楽しいと思う。


「そうか。じゃあフランスなんてどうだろう?」

「フランス? なんで?」

「アジア近辺だと、サキが辛い物に突撃して行く未来しか見えん……」

「ああ……」


 確かにサキちゃんが赤くて辛い食べ物でも見つければ、その飲食店に向かって全力で走っていっちゃいそうだ。


「それにミカはパンが好きだろ?」

「……うん」


 お米も好きだけど、この身体になってから何故かパンが好きだ。

 なので、うちでの朝食は和食よりも洋食の方が多い。

 

 それをハルに気付かれていたのには弱冠の恥ずかしさを覚えるけど、よく妻のことを見ていると考えれば嬉しがるところでもあるんだろうか?


「パンも本場だし、ルーブル美術館、エッフェル塔に凱旋門、それからセーヌ川と観光名所だって多いし行ったら楽しいんじゃないか?」


 フランスっていうと街並みもお洒落で自然も多いイメージだし、遊ぶ場所も多そうでサキちゃんも退屈しなさそうだ。


(敢えて日本食を食べてみて味の違いを比べてみても面白いかな)


 それにフランス人もアニメを見たりマンガを読んだりするみたいだし、なんならフランス語で書かれている漫画を購入してみてもいいかもしれない。


 考えれば考えるほど楽しそうだ。


「うん、いいねフランス。新婚旅行はそこにしよう!」

「決まりだな。体調は女神連中がいればどうにかなるだろうし……って、そういえばソーちゃんは?」

「今日はスミレさんの家に行ってるよ」

「そうか。じゃあこの件は後で俺から話しておくとしよう」

「よろしく」


 新婚旅行の件を話し合いながら、わたし達は夕飯を食べ進める。

 パクパク、パクパク。


「……ところでハルさ」

「なんだ?」

「なんで同じのばっかりしか食べないの?」


 さっきからハルを見ていると、白米だけを口にし続け、それが終わればサバの煮付けに箸をつける。

 また食べていた物が無くなれば次に移るという感じで、全く三角食べをしていなかった。


「ハルって、そんな食べ方してたっけ?」


 因みに三角食べとけは主食、主菜、副菜、汁物を順繰り均等に食していく食べ方である。


 バランスよく食べれば噛む回数も増えて満腹中枢が刺激され肥満防止にもなるし、比較的栄養バランスを取りやすいというメリットがある。


 なので、わたしは三角食べをしている。

 

「ああ、新入社員達に教えてもらったんだよ。最近の子達はこうらしいぞ」

「そうなの?」

「俺も最初は変な食べ方だとは思ったんだけどさ、試しもしないで否定するのも違うかなと思って真似してみたんだよ」

「へぇ」

「いや、これがさ……美味しいんだよ。しっかり味が感じられて三角食べをするより全然美味いよ」

「見てると違和感凄いけどね」

「テレビかなんかで専門家が言ってたけど、今は味が完成されてるから口内調味をする必要がないんだってさ。だからこういう食べ方する人達が増えてるらしいぞ?」


 なるほど。


 その結果、うちにも三角食べをしない人間が1人誕生したってことか。


「ママ、おみちょちるおかわり(お味噌お代り)」

「……サキちゃん、パパの真似しなくていいんだよ?」

「おいちい!(美味しい)」


 静かだと思ったら、サキちゃんはハルの真似をして同じ食材ばかりを口にしていた。

 しかも美味しいと言ったことからして、この食べ方を気に入ったのだろう。


 ここは三角食べをするよう、母親として注意するべきだろうか? それとも好きに食べていいよと肯定するべきなのか?

 

 どっちの方がいいのか迷っていると、ハルがニヤニヤとしながら口を開く。


「混ざった味を苦痛って感じる子もいるから、今は三角食べを教えない学校も増えてるらしいぞ」


 くっ、ハルめ。

 

 自分が何か言われないよう、教育現場とサキちゃんを巻き込みやがった。


「……」


 わたしは無言で立ち上がり、新しいお味噌汁をサキちゃんから受け取ったお椀に注ぐ。


(どちらかの食べ方じゃなければいけないって訳でもないし、別に何も言わなくてもいいかな?)


 きっと、そういう時代なのだ。

 

 やっぱり三角食べが必要だとなれば、また未来で復活するのだろう。


「はいサキちゃん、お味噌汁だよ」

「ありあと〜(ありがとう)」

「わたしもやってみるかな」

「そうそう。最初から否定はよくないぞ」

「別にしてないよ」


 せっかくなので、わたしも『三角食べ』と『ばっかり食べ』の両方を試してみる。


「これは……」

「どうだ?」

「『ばっかり食べ』は『三角食べ』に比べると物足りなさがある」

「ふむ」

「でも逆に『三角食べ』は『ばっかり食べ』に比べると雑味がある気がする」

「なるほど」

「どっちにも良さと悪さがある!」

「つまり?」

「好みの問題なんじゃない?」


 わたしの言葉を聞いたハルがホッと息を吐いていたけれど、もしかして怒られるとでも考えていたのだろうか?

 そういえば今まで何か理屈っぽかったな。

 つまりどうにかして、わたしから『ばっかり食べ』の許可を得ようとしていた訳か。


 なんだ、かわいいところがあるじゃないか。


 いや、待てよ? こうなるとフランスの話も、わたしの機嫌を良くしようする作戦だった可能性も出てくるぞ?


 うーん、混乱してきた。


(ハルってば、たかだか食べ方1つで企みが過ぎるよ……)


「ママ、おみちょちるおかわり」

「サキちゃん『ばっかり食べ』は『それだけ』を食べる続けるのとは違うんだよ? ちゃんと他のも食べようね?」


 流石に注意した。





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