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TS転生したけど、子供いた  作者: 赤途碧
TS転生したけど、子供いた
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うちの娘が可愛すぎる

ちょっと暗い話があります。

なるべくほのぼのした感じでいきたいのですがストーリーの都合上なので許してください。


 お昼を食べ終わった後、再びサキちゃんは寝てしまったので、起こさないよう静かに部屋の中を漁りまくった。


 泥棒みたいで気が引けるが、今やミカさんの身体には俺が入っているのだから、色々と上手くやっていく為にも「プライバシーの侵害だ!」などとは言わないでもらいたいものだ。


「なにか身分確認ができる免許証とか、保険証とか無いのか?」


 部屋の中にあるのは有名ブランドの服やバッグ、それに幾つかの化粧品などと、俺が使いそうに無い物ばかりで溢れている。


「あった!」


 身元がハッキリする物を暫く探してみると、タンスの1番上にある引き出しの中から、原付きの免許証と保険証、それに戸籍謄本(こせきとうほん)が服の下に隠れていた。


「これ期限過ぎてるじゃん。免許更新くらい行っとけよ……」


 その後も色々と調べていると、今や俺の身体となっている主の名前は『()(がみ)()()』で、サキちゃんの漢字も『咲』と書くのを初めて知った。


 後、ミカさんの年齢は20歳(ハタチ)みたいだ。


「2人とも若いな」


 サキちゃんは3歳になったばかりらしい。


 昔の俺が三十代だったということは、なんとなく覚えている。

 

 それに比べると2人とも若すぎて、どっちも子供のように感じてしまうが、サキちゃんを育てていたのなら大人としての責任は圧倒的にミカさんの方が大きいのではないだろうか?


 まあ親になった経験が無いので、俺が言うのもなんだが……。

 

 その後も他に何かないか? と、部屋内を探していたら、スマホの中にある未送信メールボックスに日記みたいなものを発見した。


 そこに書かれていた文章を読んでみる。


「……ふぅ」


 未送信メールボックスには、サキちゃんの父親がミカさんのお兄さんで、つい最近、車同士の接触事故が原因で3月の初めに亡くなったという出来事が書かれていた。


「やるせないな……」


 サキちゃんの母親は交通事故の時、一緒に乗っていた我が子の盾になり、救急車で病院に運ばれたが助からずに息を引き取った。


「父親の方は即死か」


 そして、その母親に守られたサキちゃんだけが生き残ったみたいだ。

 まだ小さいというのに、いきなり両親を失うなど、なんて辛い現実だろう。


「うっ……」


 気付けば俺は、メールを読みながら涙を流していた。


 因みにお兄さんとミカさんの両親は、サキちゃんの引き取りを嫌がったらしい。


 亡くなってしまった母親の両親も、この世を早くに去っているらしく、親を失った後に行く場所がミカさんのところしか残されていなかったみたいだ。


「家族仲が悪いのか? こんなの辛すぎるだろ……」


 読んでいたメールの内容から察するに、野上兄妹の仲は良好だったが両親との折り合いは悪く、ほぼ絶縁状態みたいだった。


「もう、これ以上はやめておこう」


 日記を読んでいる途中で心が折れた俺は、持っていたスマホを畳に置いた後、眠っているサキちゃんの寝顔へと視線をやる。


 まだ小さな身体でスヤスヤと寝ている姿が、とても愛らしい。


 こんな幼いうちから辛い目に遭ってきたのだから、これから先は絶対幸せにしてあげたい。


 これから先、この子は俺が守っていくんだ! と、心に固く誓う。


「よし! 気分転換に、お風呂入ろう! 後は夕飯の用意もしなきゃな!」


 暗くなった気持ちを一新する為に、大きな声を出して気合いを入れる。


 まあ発したら耳に届いてくる女性声には、未だに慣れていないのだが……。


「うみゅ……」

「あ、ごめん。起こしちゃったかな?」

「う〜う」


 今まで起こさない様、物音を立てていなかったのに、自らやらかしてしまった。


 だけど小さな身体で伸びをしている姿が、とても可愛らしく、なんか見ててほっこりしてくる。


(子供は天使とかいう言葉は本当なのかもしれないな)


 まだ眠かったのか、サキちゃんは起きることもなく、そのまま夕方まで眠り続けた。


 俺は黙って布団の上で寝ながら「うみゅ」とか「うー」とか言いながら、寝返りしたりする小さな姿を見て思う。


「あれ? うちの子が可愛いすぎる」と。


 夜、起きてきたサキちゃんと一緒にお風呂へ入る。


 普通のTS転生なら色々と調べる為にキャッキャッ、ウフフな展開になるのかもしれないが、目の前に子供がいる俺に、そんな余裕など無い。


 女性は髪の毛が長くて洗うのが面倒だなという感想を抱いたくらいだ。


 入浴を済まし2人で牛乳を飲んだ後、夜は夕方に作っておいたハンバーグとポタージュスープを温め、それにパンとサラダを加えて食べる。


 今回は苦手な物もなかったのか、サキちゃんも幸せそうな笑顔だった。


 夕飯を済ませて食器を洗い、夜も更けた頃、布団を敷いて中に入る。


 今日だけで色々とありすぎたが、何とか一日を無事に終えることができそうだ。


 まだミカさんの近くで眠るのは怖いのか、サキちゃんの寝場所は少し離れているが、これから徐々に近付いて来てくれればいいなと思う。


「サキちゃん、おやすみ」

「おやちみ」


 挨拶をし終えてから電気を消し、そのまま俺達は眠りについた。




昨日、日間ヒューマンドラマランキングで1位になりました。

応援ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミカさん、兄の娘を頑張って育てようとしたんですよね? 自分が受けたことの無い愛情の注ぎ方が上手くわからない、生活力が低い、 とかでサキちゃんの心が開けずにストレスたまって今の惨状に…
[気になる点] >それにサキちゃんの母方の両親も早くに、この世を去っているらしく、親を失った後に行く場所がミカさんのところしか無かったみたいだ。 母親の両親? 母方の祖父母? >因みにお兄さんとミ…
[一言] すごく面白いです!
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