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TS転生したけど、子供いた  作者: 赤途碧
TS転生したけど、結婚した
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ミカの中の人


 引き続きユキさん視点となります。



「わ、(死に)別れたくなかったよ〜」


 わたしが大声を上げると、周りの客や店員達が会話が聞こえてくる。


『え? こんなところで別れ話?』

『思わぬ場所で再会しての復縁迫りってところ?』

『どっちも遊んでそ〜』


「ミカ、大好きだよ〜!」

「ちょ、ちょっと」


『男の方、ミカっていうの? 女みたいな名前だね』

『ファッションビルで愛の告白とか、凄いな』

『ここで彼女の想いに答えなきゃ男じゃないでしょ』


「ユキ、さっきから言葉の選択が絶妙な誤解を招きすぎだから!? ほら、行くよ!」


 手を引っ張られ、また店内などで大泣きされては堪らないと、わたしは代々木公園まで連れて行かれる。


 そしてそこで慰められた後、1度死んだミカがハルという男性になった事情を聞いた。


(ふう。物音を立てないようにしなきゃ)


 アパートの押入れの中、わたしは再び息を潜める。


「で、俺達、いつ結婚する?」


(だからハルは唐突すぎるんだよ!)


「ブフォッー!!」


(うん、そりゃ今のミカも、お茶吹いちゃうよね)


「汚えな! またかよ!? お前は何回、同じ事を繰り返すんだよ!?」


(いや、あんたが悪いでしょ)


 渋谷で元ミカと出会ってから、何度か遊び、今ではハルと呼ぶようになった。


 ついこの間まで女性だった親友は、一人称の俺という言葉もすっかり板に付き、まるで元から男性だったのではないかと思えるくらい口調に違和感がない。


 そしてそれはハルの前に座っているであろう、今のミカにも言えることだった。


(もうすっかり女性だよね。神様、この2人の性別、最初から間違えてたんじゃないの?)


 今日、このアパートに来たのは偶然だった。


 ハルが天界の話をミカにすると言うので、わたしが居るとややこしくなるかも? とか考え、帰ろうとした時に彼女がやって来たので、思わず押入れに隠れてしまった。


 別に後ろめたいことなんてないんだけど、わたしと違って今のミカは純粋だ。


(いい人なんだよなあ)

 

 彼女に変な心配を掛けたくない。

 今のミカだって大切な友達だ。


(隠れてたって方がショックかな? 後で説明した方がいい? ああ、どうしよ〜)


「急に結婚とか無理だから!」


(ごめんミカ、ハルが好きなのならしてあげて? 彼の魂は穢れてるの。天界だけの処理じゃ間に合わないんだよ。あなたと結ばれてサキちゃんの側に行かない限り綺麗にはならないんだよお〜)


「なら、俺とは結婚しないってことだな?」


(ちょっとハル、そんな簡単に諦めないでよ! あなたの魂は後悔が物凄いから穢れが酷いんでしょ!? だから普通の人より寿命も短いって説明しなさいよ〜)


「……まあ、そうなるのかな? 急に言われても、ちょっと考えられないっていうか」


(ダメだよミカ!? このままハルが死んだら、彼は来世で不幸な人生を送ることが決定しちゃうんだよ〜。だなら魂の穢れを落としてあげて!)


「……そうか、なら覚悟を決めておけ」

「え? なんの?」

「サキと別れる覚悟を」

「な、なんで?」

「わかってるんだろ? あんたは長く生きられない……俺もだけどな」


(空気が重いよ〜。あれ? なんか、すすり泣きしてる?)


「ハル、もう今日は帰るよ」

「そうか。わかった」

「じゃあ、またね」

「ああ」


 ミカがアパートから出て行き、わたしも押入れから部屋に移る。


「ねえハル、今の泣き声ってミカ?」

「……そう」

「……行かなきゃ」

「やめとけ」

「でも、今のミカが涙を流したのなんて初めてだよ! きっとまだ泣いてる! 話だけでも聞いてあげないと!」

「やめろ!」

「……なんで?」

「きっと混乱してる。今は何も言えないだろうし、どう話をしていいのかもわからない筈だ。だから1人にしてやれ」

「……泣いてるの?」

「……お茶だよ」


 ハルは目元をタオルで隠していたけど、その瞳から一筋の涙が零れてるのがわかった。


(なにがお茶よ。姿が変わっても中身は本当に手の掛かる親友のままね)


 わたしはハルに近付き、タオルを取り上げる。

 そして目が合った瞬間、その頬を引っ叩いた。


「なにすんだ!?」

「ハル、ううん。今はミカと呼ばせてもらうわ!」

「ハァ?」

「ねえミカ、あんた、それでいいの? あの人と結婚できなくてもいいの?」

「本人にするつもりがないんだから、どうしようもないだろ!」

「へえ、諦めるの? なら、あんたは一体、何の為に現世へ戻って来たのよ!?」

「それは説明しただろ! 魂の穢れや来世の人生を……」

「嘘よ。ううん、その話は本当でしょね。でも、わたしの知ってるミカなら、そんな事は気にしないよ」

「……」

「魂とか来世とか、そんなのはどうでいい人間でしょ?」

「……何が言いたい?」


 わたしは大きく息を吸って吐く。


「前世から好きだったんでしょ? 今のミカの中の人が」


 もうこうなったら、絶対に2人をくっ付けて幸せにしてやる。


 知ってるミカ? 政治家の子供っていうのは策略家なんだよ。





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[一言] ユキさん頑張れ!
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