もしかして
わたしと手を繋がずハルの足元にピッタリと、くっ付いているサキちゃん。
なんでだろう? もしかして、2人は昔に会った事でもあるんだろうか?
それだと、わたしがミカさんになる前の話だろうから、知らないのは当然だけど、何故かサキちゃんを見下ろして固まってるハルの様子から察するに違う気がする。
これは事実確認が必要だ。
「サキちゃん、そのお兄ちゃんのこと知ってるの?」
「ちらな〜い」
うん、知らなかった。
「ならなんで、くっ付いてるの?」
「おきゃお!」
「お顔?」
「あい!」
う〜ん、どういうことなんだろう?
もしかして、もしかすると……いやいや……でも、わたしの推測は、多分当たってるんだろうなあ。
あまり知りたくはないけれど、これは聞いてみなければならないか。
「サキちゃん、そのお兄ちゃんのどこが好き?」
「おきゃお〜」
やっばり顔かよ! うちの子、とんだ面食いだったよ!
要はサキちゃんとハルは知り合いでも何でもなく、ただ目の前に立っている男が格好いいから、我が子は優秀秘書の両脚を抱き締めているという訳だ。
「ハル……」
わたしはサキちゃんに抱きつかれている人物へ顔を向けて声を掛けるが、その表情はきっと抜け落ちていることだろう。
何故なら、少し不愉快だからだ。
サキちゃんと最初に会った時、わたしでさえ仲良くなるまでに時間が掛かったというのに、ハルは顔が良いというだけの理由で気に入られている。
こんなの許せるだろうか? いや、許せる訳がない。
元来、わたしの器は小さいのだ。
前世の事は覚えてないから、本当は知らんけど、そういう風に今はしておこう。
「ハル」
「何だよ?」
「子供、苦手なの?」
「……そういう訳じゃない」
違うのか。
保育園児達が通った時も大人しかったし、サキちゃんに抱きつかれても固まってるから、ハルは子供が苦手なんだと思ってた。
だけど、どうやらそれは、わたしの考え違いらしい。
オーケー、理解した。
つまり、ハルはサキちゃんの旦那さんになる可能性があるってことだ。
なら、わたしはサキちゃんのママとして、彼には真剣な質問をせねばなるまい。
「つかぬことをお聞きしますが、ハルの両親の年収は?」
「はぁ?」
「将来は、何になるつもり?」
「なに言ってんだ?」
「わたしより、あなたの方がサキちゃんを幸せにできるとでも?」
「落ち着け」
「お前に娘はやらん!」
「……よ」
「はあ? なんて言ったの? 聞こえないよ!」
なんか精神的に燃え上がってしまったが、今更、後には引けない。
まだサキちゃんは子供だが、成長したらハルの、お嫁さんになる可能性は十分にあるのだ。
だからハルがサキちゃんを幸せにしてくれる人物かどうか、わたしは見極めなければならない。
「さあ、質問に答えなさい!」
「調子に乗るなよ!」
「なにそれ? わたしは保護者としてサキちゃんを見守る義務があるんだから、質問するのは当然の権利でしょ」
そう、我が子が幸せな人生を過ごすかどうかの瀬戸際である。
なので、こちらに大義がある筈だ。
「……うるせえ。大体、元は、わたしの身体だろうが!」
はい? 今、なんと?
元は自分の身体という話だから、そう考えると、わたしが思い当たる人物は1人だけだ。
それはつまり、肉体をくれた人となる。
「え〜と……もしかして……ミカさん?」
ハルの正体は読者さんの予想通りミカさんです。
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