スマホ初心者
「サキちゃん、チナツさんとユキがプレゼント持って来てくれたって」
「ぷれじぇんちょ?」
「うん、プレゼント」
オンボロアパートに遊びに来る時に、チナツさんとユキがオモチャのスマホをデパートで買って来てくれた。
サキちゃんの好きなピンク色で、待ち受けには真ん中に桃髪、右に金髪、左に青髪と日曜日の朝に放送している魔法少女達が並んでいる。
アプリも色々と入っているが、カメラや電話などのアイコンをタッチしても、音楽が流れるだけという子供用スマホだ。
「ほら、サキちゃん。ユキお姉ちゃんからプレゼントだよ〜」
「ちょっと、わたしもお金を出したんだから、2人からでしょ」
「ごめん〜。じゃあ、わたしとチナツさんからのプレゼントだよ〜」
「ありあと!」
オモチャのスマホだが、受け取ったサキちゃんは嬉しそうだ。
「電話ちゅる!」
「え? それ音が鳴るだけじゃ……」
「ミカが電話に出てあげなよ〜」
「そうね。あなたが遊んであげなさいな」
「えっ? あ、うん……」
なんかユキとチナツさんに押し切られて、サキちゃんと電話ごっこをする事になったので、右手に本物のスマホを持つ。
お茶を2人に出そうと思ったが、黒ギャルが勝手に動いているので、わたしが行動する必要は無さそうだ。
「もちもち〜」
サキちゃんがアイコンを押したのか、オモチャのスマホから音楽が流れて止まった後、ウチの小さな天使が喋りかけてきた。
「もしもし? どなたですか〜?」
「サキ! 3ちゃい!」
「自己紹介ありがとうございます。今日はどうしましたか?」
いきなり名前と年齢を教えられたから、なんか営業電話みたいに敬語で接してしまった。
まあサキちゃんも満足そうだし、このまま続ける事にしよう。
「きょおはだいじな、おはなちありゅ」
「今日は大事なお話があるのですね? わたしにですか?」
「ちょう!(そう!)」
「はい、それはなんでしょうか?」
「けーきたべちゃい!」
「え? ケーキが食べたいの?」
「あい!」
サキちゃんからの大事な話って、ケーキが食べたいという欲望丸出しの用件だったよ。
でもこれって、買って来て欲しいって事だよね?
家でケーキを作ったりはしていないし、普段は外食か専門店で購入するかをして食べてるし。
(今度、手作りもできるって事を教えないとな)
なのでサキちゃんは、ケーキは買って来る物だと思っている。
しかしスマホ初心者の子供に、出前を頼まれるとは予想外だった。
わたしはデリバリーサービスをする職には就いていないんだが、ウチの小さな天使からの注文であれば仕方がない。
よし、配達しようじゃないか。
目の前にいるサキちゃんも、物凄く期待した顔をしてるしね。
「わたしチョコレートケーキ〜」
「フルーツタルトが食べたいわね」
ここぞとばかりにリクエストをしてくるユキとチナツさんだが、今日はプレゼントを持って来てくれたし、少しくらいはワガママを聞いてあげようじゃないか。
うん、それがいい。
さて、最近出来た近所のケーキ屋へ、財布を持って向かう事にしよう。
「……え? ちょっとミカ、なんでわたしの襟首掴むの〜?」
「いってらっしゃい。サキちゃんの面倒は任せて」
「チナツさん、よろしくね」
「いってらっちゃい!」
ケーキを買って来てくれるとわかったからか、サキちゃんは満面の笑顔で送りだしてくれた。
それに保育士という事もあるが、こういう時に心配なく、ウチの小さな天使の面倒を任せられるチナツさんの存在はありがたい。
「ねえミカ、引きずらないでよ〜」
「荷物持ちが必要だから……」
「サキちゃん助けて〜」
「そふちょ、ばいばい!」
「サキちゃんまで、酷いよ〜」
「ほら、行くぞ」
どうやらサキちゃんの中では、ユキが帰って来ない事になってる様だ。
「わたしもケーキ食べるから〜。戻ってくるからね〜」
「そふちょ、ばいばい!」
サキちゃんは満面の笑顔で手を振ってるけど、別にユキの事が嫌いな訳じゃないよ? 帰ると思い込んじゃってるから、お別れの挨拶をしてるだけなんだぞ?
だからそんな悲しそうな顔をするな、黒ギャルよ。
最初はジャンルを変更し文体も変えて新連載を始める予定でしたが、色々考えてるうちに新規読者さんの獲得には新しく始めた方がいいのでしょうが、でもそれって前々から読んでくれてる読者さん達には失礼なんじゃないかな? って思ったんですよね。
なのでタイトルを少し変えてキーワードを足し、ジャンルとあらすじも変更して、こちらで2章として「TS転生したけど、結婚した」を連載していこうと思います。
感想、ブクマ、評価、誤字報告ありがとうございます。