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TS転生したけど、子供いた  作者: 赤途碧
SS サキちゃんと一緒
34/117

大切な経験

何となく思いついたので載せます。


「ふぅ、美味しい」

 

 住んでるボロアパートの中で、コロンビア産の豆で淹れたコーヒーを飲む。


 ローテーブルの上に置かれた黒い液体にはミルクも砂糖も入っていないが、結構甘味があって美味しい。


 店員さんにもコーヒーの淹れ方を教わったが、かなり長く説明されて全ては覚えられなかった。


「でも豆が良いやつだと、素人が淹れても、こんなに美味しいんだな」

「おいちい?」

「美味しいよ」

「にょむ(飲む)」

「うーん、サキちゃんには、まだちょっと早いかな? 苦いよ?」

 

 喋りかけてきたサキちゃんは白いウサギパーカーを着ながら、小さなクマのぬいぐるみと一緒に、茶色いランドリーボックスの中に入っている。


 どうも最近は、その場所に居るのが、お気に入りの様だ。


「ひちょくち」

「まあ、一口だけならいいか」

 

 木製のランドリーボックスはデパートの買い物カゴと同じ高さくらいだが、横幅は少し伸びていて長方形になっている。


 編み目もしっかりとしているから、余程の事が無ければ壊れはしないだろう。


 だけどサキちゃんが躓いたりしたら危ないので、カゴに出し入れするのは、わたしが抱っこをしながら行っている。


「じゃあおいで」


 両腕を伸ばして抱っこ待ちの態勢になったサキちゃんを宙に上げた後、膝の上に座らせる。


「カップは熱いから触っちゃダメだよ」

「あい!」


 子供というのは、いくら熱いからと言っても経験しなければ理解しない。


 サキちゃんも1度ファミレスの鉄板を触ってしまい、大泣きした事がある。


 幸い大事には至らなかったが、もっときちんと言い聞かせるべきだったなと、親としての力量の無さを痛感した出来事だった。


 だけど、あれからサキちゃんも熱いというのを理解したし、それから気をつける様にもなったので悪い事ばかりではないだろう。


 子は親に育てられ、またその逆もあるという、大切な経験だ。


 わたしはカップを持ち、コーヒーをサキちゃんの口元へと運ぶ。


 そしてウチの小さな天使が、黒い液体を飲むと、眉間に皺が寄った。


「にぎゃい……」

「だから苦いって言ったじゃん」

「にゃんでにょんでるの?(なんで飲んでるの?)」

「え? 美味しいからだよ」

「おいちくにゃいよ?」


 確かにサキちゃんからしたら、コーヒーは苦いだけで美味しくないのに、なんで飲でるのか? という疑問が湧くのは当然の事なのかもしれない。


 既に不味い物となっている以上、いくら甘味があって〜、とか説明しても理解はできないだろう。 


「……大人になると美味しいんだよ」

「にゃんで?」

「何でだろ? わかんない〜」

「へんにゃの〜」

「変だね〜」


 実際は子供の時と味覚が変わるからだろうが、それはこれからサキちゃんがしていく大事な経験だ。


 その時を親として、わたしは楽しみに待っていよう。


「サキちゃん、夜ご飯は何がいい?」

「みーちょぼーりゅ!」

「ミートボールか。サキちゃん好きだもんね」

「あい!」

「もしかして苦いかもよ?」

「おいちいもん!」


 そうだね、それをサキちゃんは知ってるからね。


 わたしがウチの小さな天使に頬ずりをすると、プニプニとした柔らかい感触が返ってくる。


「うみゅ〜」


 ああ、かわいいなあ。


 こんなに幸せな気持ちにさせてくれるティータイムなら、毎日しても悪くない。


 今日はコーヒーを淹れてよかった。


「にゃに〜?(なに〜?)」

「なんでもないよ〜」


 そう言いながらも、わたしはサキちゃんに頬ずりをし続けた。





まだ何日からとは断言できませんが、5月より「TS転生したけど、子供いた」の続編である「TS転生したけど、結婚した」が始まります。

最初に考えていたのは1度完結させていたところで終わりでしたが、続きを思いついたので書く事にしました。

主人公と相手がメインでコメディー調の恋愛になる予定なので、ジャンルは現実/恋愛となります。

勿論、サキちゃんとのほのぼの回もありますし、そんなに恋愛! という感じでもないので読みやすいかと思います。

なので、よければそちらの方もよろしくお願いします。

連載が始まったら、こちらでもう1度SSを載せる予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サキちゃん、可愛すぎる
[一言] うーん…しゅき…ありがとう…ありがとう…
[一言] 可愛い
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