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TS転生したけど、子供いた  作者: 赤途碧
TS転生したけど、子供いた
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メイク


 朝からの仕事が一段落して、お昼休憩に入る。


「おちるなに?」

「うん? オムライスだよ」

「やっちゃ!」

「サキちゃんオムライス好きだもんね。やったね〜」

「ちゅき~」


 この家で一緒に暮らし始めてからサキちゃんの好物を調べる為に、色々と料理を作って出してみたが、やっぱり子供が好きなメニューだと喜ぶ。


 ハンバーグ、カレー、シチュー、オムライスの時はピョンピョン跳ねてハシャいでる時もあるくらいだ。


 果物も好きみたいなので出しているが、何が1番好きなのか聞いてみたところ、サキちゃんはイチゴと答えた。


 理由は美味しいというのも勿論あるが、見た目がかわいいのが良いらしい。


 そういうところは、やっぱり女の子なんだなと思う。


「おいち!」

「美味しいね〜」


 テーブルの上に用意されたオムライスを一口食べて、とても良い笑顔になるサキちゃん。


 こんなに喜んでくれるなら、これからも料理を作っていこうと思えるってもんだ。


「ごちそうさまでした」

「ごちちょうちゃまでちた」


 オムライスを食べ終わり、台所で洗い物をしていると、サキちゃんがトテトテと近付いて来た。


 その手にはハート型のパレットを持っている。


「けちょうちて?」

「お化粧? うーん、わたしメイクできないんだよね」

「まえ、いちゅもちてたよ?」

「……」


 首を傾げながら不思議そうに「前は、いつも化粧してたよね?」と聞いてきたサキちゃんだが、それはミカさんであって、わたしじゃない。


(どうしよ……)


 何とか言い訳を作って逃げたいところだが、わたしが洗い物をした後は、次の仕事時間まで遊んでくれる事をサキちゃんは知っている。


 化粧といえば、渋谷から帰って来てネットで調べてわかったのが、オルチャンは韓国風でチャイボーグが中華風という事くらいだ。


(ならギャルメイクは日本風なのか? いや、今はそんな事を考えてる場合じゃないな)


「わかった。じゃあ、お化粧してあげるからパソコンの前に行こうか」

「あい!」


 とりあえずこのピンチを乗り越えようと、メイク動画を見ながらサキちゃんにお化粧する事にした。


 今の時代は何でもネットに載っているから、本当にありがたい。


「お、子供用のメイク動画があるな。これにしよう」

「かわゆくなりゅ?(かわいくなる?)」

「なるよ〜。サキちゃんはお化粧しなくても、元からかわいいけど……」

「でもちゅる〜」


 じゃあいいやと言ってくれれば有り難かったが「でも、お化粧する」と言われてしまっては、やらなければならないだろう。


「……わかった」


 学んだ化粧といえば、ユキさんにしてもらったギャルメイクくらいだが、まさかこんな小さなうちからサキちゃんをギャルにする訳にもいくまい。


「じゃあ始めるね」

「あい!」


 子供用のメイク動画を見ながら、わたしはサキちゃんに化粧をしていく。


 もしかしたらこんなに緊張するのは、この小さな天使と、初めて会った時以来かもしれない。 


「……」

「……」


 無言で化粧(メイク)をしていると、わたしが集中しているのが伝わったのか、サキちゃんも喋らなかった。


 そして段々と変わっていくウチの小さな天使の顔が、大分満足のいく出来になった。


 初めてした化粧にしては、結構完成度が高いのではないだろうか?


「……」

「……」

「よし、できたよ」

「かわゆくなっちゃ?」

「可愛くなったよ〜」

「やっちゃ!」


 サキちゃんによく見せてあげようと、パレットに付いている鏡ではなくクローゼットの側面にあるミラーまで抱っこして移動しようとしたところで、来客を知らせるドアベルが鳴った。


「誰だろう? ユキさんかな?」

 

 玄関の覗き穴から外を見てみると、チナツさんがいたのでドアを開けて迎え入れる。


「ミカ、サキちゃん、こんにちわ」

「ちぇんちぇ、こんにちゅわ」

「こんにちわチナツさん。どうしたの?」

「……ぶっ!」


 サキちゃんの顔を見た後、チナツさんは何故か吹き出しそうになったみたいで、慌てて口を塞いで背を向けていた。


「ちぇんちぇ?」

「ごめんなさい。なんでもないの。サキちゃん、そのお化粧は落とそうか?」

「どちて?」

「わたしが、もっと可愛くしてあげるから」

「ほんちょ?」

「うん、本当。だから、そのお化粧は一旦落とそ?」

「あい!」


 サキちゃんを抱っこしながら部屋へ戻ろうとすると、耳元でチナツさんに「なによ、あの濃すぎるお化粧は? どこの芸人よ?」と小声で言われてしまった。


「……やっぱりダメ?」

「……チークが濃すぎて、おたふくみたいになってるじゃない。アイシャドウも塗り過ぎだし、これじゃサキちゃんが可哀想だわ」

「……化粧は苦手なんだよ」

「……このままじゃサキちゃんが可哀想だし、わたしが教えてあげるわ」

「……ありがとう」

 

 サキちゃんには聞こえない様、小声で話してくれる気遣いには感謝するが、自分では満足のいく出来だっただけに、あれじゃダメと言われてしまったショックは大きい。


 でも結局、この後、チナツさんに化粧を教わる事になった。


 恥をかかせて、ごめんねサキちゃん。





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