今日も平和
ソフトクリームを食べた後、再び色々と買い物をしてから、少しのんびりしようと代々木公園へと移動した。
54万平方メートルもの敷地を有している園内には芝生広場に池や噴水、その他にもイベントスペースやスポーツ施設などがある。
東京ドームで言うと、11個分の広さがあるらしい。
駅近くは人の移動が多くて、せかせかとしている印象だが、ここは都会の中に有る公園だというのに、のんびりとした雰囲気だ。
そしてそんな園内にある芝生の上に座りながら、わたしはユキさんに化粧されていた。
「ちょっと、ミカ。動かないでよ〜」
「あ、ごめん」
「もう!」
目の前にいる黒ギャルが「せっかく服を買ったんだから、スッピンのままじゃダメ!」とか言い出して、勝手に人の顔へと化粧をし始めた。
「うみゅ〜」
サキちゃんは芝生の上で気持ちよさそうに、お昼寝中だ。
子供服が売ってるお店で、ウサギ耳が付いている白いパーカーがあったので購入して着せてみたが、似合いすぎててかわいい。
「よし、できたよ〜」
化粧が終わると、ユキさんは持っていた二つ折りの黒いパレットを開き、出来上がりを鏡で見せてくれた。
(……こ、これは!)
鏡に写ったミカさんの顔を見て抱いた感想は(わたし綺麗!)……なんかではなくて(元が美人でも化粧をすると変わるもんなんだな)というものだった。
「なんか少し変な感じはするな……」
元々ミカさんは茶色い瞳をしているのに、ユキさんが「ギャルは目が重要だから!」と、ブラウンのカラコンを買う事になり、すぐに付けさせられた。
瞳に異物が狭ってくるのが怖かったけど、装着してみたら以外と痛くは無かった。
もしかしたらミカさんが元々カラコンをしていて、この身体がコンタクトレンズの刺激に慣れていたのかもしれない。
違和感と言えば上下に接着させた、付けまつげくらいだろうか?
アイラインだかアイメイクなのかわからないが、元々ミカさんがしている自然な二重を更に広げられ、やたらと瞳が大きく見える様に強調している。
「そのリップ、かわいいでしょ〜」
「……そうだね」
リップはピンクを薄く塗ったらしく、強調した目を大きく見せると同時に、かわいらしい印象を与える様に計算されている。
それとアイシャドウと言うらしいが、目頭と目尻には多色を使ったらしい。
でもパッと見ると、薄ピンクみたいな感じだろうか?
「で、オルチャンとチャイボーグとかもいいんだけどさ〜、で、だと思うから〜、アイライナーで涙袋を〜、それでアイプチが〜」
誰か、この黒ギャルの暗号を解いて説明してくれ。
言葉の意味が全く理解できないし、なんか外国人と話をしている気分になってくる。
いや、まだ英語の方が、何を言われてるかわかるだけマシだろう。
「やっぱりギャルは目が命だよ! ミカも、そう思うでしょ?」
「え、あ、……うん、そうだね」
適当に相槌を打って、寝転がってるサキちゃんを見る。
さっきまで仰向けに寝ていたのに「うみゅ〜」と言いながら、うつ伏せへとなった姿は本物のウサギみたいだ。
(そういえば玩具のハート形パレットに子供用のメイク道具が入ってたけど、サキちゃんがしてるところを見た事ないな)
化粧なんて覚える必要性を感じていなかったが、もしかしたら学んだ方がいいのかもしれない。
池から上がる噴水を見ながら、帰ったら動画やネット情報を見てメイクの研究をしなきゃいけないなと、わたしは思った。
「うみゅ〜!」
「お、サキちゃん起きた?」
「おあよ〜」
「サキちゃん、おはよ〜」
「だり?(誰?)」
「ひどい! ユキお姉ちゃんだよ〜。ソフトクリーム奢ってあげたじゃ〜ん」
「そふちょ!」
そう叫び、サキちゃんはユキさんを指差した。
どうやらウチの小さな天使の中で、黒ギャル=ソフトクリームをくれる人という方程式が出来上がったようだ。
「少し遊んだら、夜ご飯食べて帰ろうか、そふちょ」
緑が多くて池もあって長閑で、今、都会にいるとは思えないなとか考えながら、少しユキさんをからかってみた。
「ちょっとミカ、何よ、そのあだ名は?」
「そふちょ!」
「サキちゃん違うよ? ユキお姉ちゃんだよ?」
「「そふちょ!」」
「2人とも酷いよ〜」
この後、少し公園で遊び、夜にはハンバーグを食べて練馬へと戻った。
今日も平和で良い日だ。
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