ミカさんの被害者
メインストーリーが3〜4話続きます。
ほのぼのした話を求めてた方達、ごめんさない。
お昼にミートソースを食べた日の夕方、暇な時間ができたから、夜ご飯の準備をしておこうとしたら、玄関から『ピンポン〜♪』とチャイムの音が鳴った。
(えっ、誰だろう?)
新聞勧誘や訪問販売なら断わればいいが、もしミカさんの友達などであれば、その人の前で上手くミカさんを演じる事なんてできる気がしない。
(やばい、やばい! ど、どうすれば?)
俺が焦っていると、今度は家のドアをコンコンとノックする音が聞こえてきた。
「ノガミさん、いませんか? いますよね? 明り点いてますし、テレビかパソコンかの音も多少聞こえてきますし……ねえ、いますよね?」
(こっわ……。でも声が女性だな。やっぱりミカさんの知り合いか?)
もしかしてユキさんかな? とも考えたが、スマホのアプリトークでやり取りした時に受けた印象とは大分違うし、彼女ならミカさんに対して敬語を使わないだろう。
俺が黙って何も言わずにいると、さっきまで優しくノックされていたドアを叩く力が強くなりドン! ドン! という音が響いた。
借金の取り立てとは、こんな感じなんだろうか? とか考えていると、今度はドアノブがガチャガチャと回り始める。
「どちら様で?」
このままではアパートのドアが壊れると思ったのと、勝手に家の中へ侵入しようとした行動に少し怒りを感じながら、俺は不機嫌な声を出した。
「真森です。真森千夏。覚えてますか?」
いや、知らないけど。
でも、覚えてるかどうか聞いてくるって事は、やっぱりミカさんの知り合いっぽい。
正直、色々とボロが出そうだから余り話したくはないが、このまま放っといたらドアが破壊されそうだ。
「はぁ……」
観念して溜息を吐きながらドアを開くと、そこには……誰もいなかった。
「あれ? いたずらか?」
「こっちです」
少し下から声が聞こえてきたので、そっちに目をやると、ボブカットの黒髪に赤いメガネを掛けた女の子? がいた。
格好は上がグレイの長袖、下が白のサイドラインが一本入った黒いジャージ、それから水色のエプロンをしている。
たぶん、身長は140くらいだろうか? そして何がとは言わないが多分Aだ。
「見下さないでください」
「……」
「無言で腰を下げて目を合わそうとしないでください。バカにしてるんですか?」
どうしろっちゅーねん。
いやまあ、身長が多少低いとはいえ、姿は見えていたし、正直、ワザとしていたところはある。
アパートのドアを乱暴に扱うから、俺も少し怒っていたのだ。
「ちぇんちぇ?」
「ああ、サキちゃん! 大丈夫だった!? この人に何もされてない!?」
「ちょっ、おい、勝手に上がるなよ!」
「なんですか、その男みたいな言葉遣いは? それに家に入られたら困る事でもあるんですか? ああ、メイクしてないと人前に出られない人種ですもんね。これだからギャルって嫌いなんですよ」
「いや、そういう話をしてるんじゃなくて、マナーの問題だろうが!」
というか、ギャルへの偏見が酷いし、なんか俺に対しての当たりが強い。
「あ、あれ? ノガミさん、もしかして今、わたしに言ったんですか?」
「いや、そりゃそうでしょうよ」
「いくら園で色々と注意しても「黙れ」の一言や、わたしの胸元を見て鼻で笑っていたあなたが……? そういえばさっきもどちら様で? とか聞かれたような?……」
(うん、これあれだ。どうもミカさんの被害者っぽい。しかもなんか震えてるし)
俺が入っている身体の、元、持ち主は、一体どれだけ常識が無かったんだろうか?
部屋の中では頭を抱えて心の中で『ミカさーん!』と叫ぶ俺と、未だに「こ、こ、このギャルに、じょ、じょ、常識があるなんて……」と震えてるチナツさん。
そしてそんな2人を見ながら、首を傾げているサキちゃんの3人がいた。
サキちゃん人気が高すぎて、もうメインストーリーがサキちゃんとのほっこり話になりつつあるので、ほのぼの以外が出たら今日はサブスト(サブストーリー)かとでも思っといてください。