嬉しいな
「……あの、ソフィアさん?」
「インストール完了。魂の情報同調率……7%を確認。旧石器、縄文、弥生、古墳時代のメモリー補完完了しました。
続けて飛鳥時代〜鎌倉時代までによる野上美花の人生をダウンロードします」
今、何をされているかと言うと、車両の中の向かい合った席でソフィアさんが浮いてる本を次々と念動力みたいな感じで自分の手に引き寄せては、わたしの頭の中に突っ込んでいる。
なんというか、ゲーム機やらパソコンになった気分だ。
面白いのは魂情報を入れている最中は昔の記憶が見れるけど、頭の中から役目を終えた本が出てきた時には忘れている。
きっと全てを覚えていたら頭の容量が持たないとかいうことなのかもしれないね。
あとソフィアさんの瞳の中に何%やら時代やらも表示されているが、このモードになってから無機質で機械人形みたいだ。
「聞きたいことが多かったのに、『じゃあ始めます』で、急にこれだもん。もう訳解んないよ」
『まあ俺が大きくなったらミカ姉と結婚してやるよ』
「なんか小さいハル出てきた!」
一部に需要がありそうなキャラだったね。
ある意味では特殊なところのとか言わないけど。
『もう争いなんてたくさんだよ』
ん? これわたし?
『ミカママ、拾ってくれてありがとう』
『いつでも帰っておいで、ここはソーちゃんの家なんだから』
「今度はソーちゃんだ」
背景や周りを見るに平安時代か。
どうやら、この時のわたしは中級貴族の娘だったらしい。
でも裏で農民の真似事をしながら畑を耕し、孤児院経営みたいなこともしていたと。
よく親とか周りにバレなかったな。
いや、お手伝いさんが結構いたし他の人達も気付いていたけど、自由にやらせてくれてた感じか。
それか関わるのが面倒かのどっちかかな。
うん、後者な気がする。
「しかし、神界で反逆されて地上に落ちてきてたソーちゃんを拾って育ててたら、追いかけてきた邪神が放った呪いがわたしに当たり、20歳には死ぬようになってしまったと……」
途端、ソーちゃんの感情が身体中に溢れる。
(ミカママいたー! わたしだよ! でも男になってるなんて……そりゃ天界作っても一向に現れなかったわけだ。これ地上で魂が彷徨ってたな。あれ? 30まで生きてる? もしかして呪いが届いてない? これ入れ替えちゃえば……というか、本当の肉体こっちじゃん。なんでこの人達、入れ替わってるの? ああああー、喋りたい。でも今おじいちゃんの格好だし言ったところでわかんないよね。でも安心して! 邪神の奴はボコボコにして顔もわからないようにしてやったから!……会えてよかった)
ソーちゃん、初めて会った時って本当はこんな感情だったんだ。
こんなに会いたいと思ってくれてたなんて嬉しいな。
「あ、間違って創造神様の感情を送ってしまいました。失敗、失敗」
なにしてんねん。
ミスって人格破壊とか精神崩壊とかないよね?
「創造神様は疫病神や貧乏神を頼ったみたいですが、わたしは違います! あんな奴に借りを作ってたまるか! ではいきますよー」
よっぽど、やっくんのことが嫌いなんだね
まあわたしも何度も呪い殺されたとこを現在進行形で見ているから良いイメージないけど。
でも女神連中に疫病神の顔を認識させられないようにしたのソーちゃんの当てつけっぽいな。
こないだ会った時にびーちゃんが「やっくんは改心して仕事を頑張ってるの! そこだけはちゃんと創造神様に伝えといてね!」とか言ってたけど、評価してほしいってことかな?
神様関係も複雑なんだね。
てか邪神も改心するんだ。
まあ疫病神になっちゃったけど。
「よし、きたー! ミカさん、この白い本の上に右手を置いてください」
ペタッ。
「次、左手」
ペタッ。
カッ!
また光か。
この短い間に光に慣れてしまった。
目を瞑る必要がない優しい輝きなのは嬉しいけど。
『魂の同調率100%。生まれ変わり数、死亡数、神友3柱、共に規定を満たしています。聖女修行を終了しますか?』
「運を下げるよりも上げてしまえ。離れられるくらいなら定着させてしまえ。これをやる為に何日も徹夜して調べたんです。厄貧コンビに出番なんてあげません」
ソフィアさんが差し出した真っ白な本が、わたしの頭の中に入ってくる。
『……。……。……本人確認が終了しました』
今更だけど、そういえばこの本、喋ってる。
『幸運の女神、発動します』
誤字報告ありがとうございます。
そういえばリアクションとか増えたんですね。
そちらを押してくれた方々もありがとうございます。
プライベートで問題がなければ駆け足ですが、あと数話で終わる予定です。




