最低な宣言
黒髪で毛先だけ白く、灰色の瞳をしている男の子が疫病神のやっくん。
先程まで呆然としていたけど、今は落ち着きを取り戻したらしく、自己紹介をされた。
なお、ジュースを渡すことには成功している。
そして色違いの金髪毛先が貧乏神のびーちゃん。
彼女の方は悲鳴をあげた後、何故だかアワアワしていて未だに「逃げなきゃ、逃げなきゃ…」とか呟いている。
何があったんだろう?
「びーちゃんは聖女に苦手意識があるので、ミカさんが恐ろしいのかと…」
貧乏神の慌てっぷりに少し戸惑っていると、やっくんが言った。
「聖女? あの物語とかに出てくるやつ?」
「そうです」
「間違いじゃない? わたし、別に何の力もないよ?」
「物語などでは様々な力を持っていたりしますし、そういう人も別の世界にはいるんですけどね。必ずしも特別な能力を持っているというわけでもありませんよ」
「じゃあどういう?」
「まあ元々、聖女というのは特別な力を行使する者ではなく気高い女性のことを指します」
「それも間違いのような…」
別に気高くないし、高貴な生まれでもない。
「あー、覚えてないんでしたね。まあそれは別にいいです。それに、今だって何の力もないってわけじゃないんですよ」
「わたしに、なにか特別な能力が…!」
「はい、運が良すぎるんです」
「…え? ショボくない?」
なんかこう、漫画の主人公みたいに癒やす力とかそういうのがあるのかと思った。
聖女って言われたら、何故か回復役のイメージとかあるし。
「結構重要なことなんですよ。僕とびーちゃんはミカさんの運気を下げにやって来てるんですから」
「最低だ!」
え、疫病神と貧乏神が手を組んでわたしの運気を下げに来てるの?
それって、最強すぎない?
……ん?
「あれ? でもジュース当たったりしたしツイてるよ?」
そう、自販機で飲み物を購入した後に再度当たったり、おまけに飲み込まれた千円札まで戻ってきたのだ。
お札が投入口から戻ってくる様子を見て、やっくんとびーちゃんは目を丸くしていた。
「そうなんですよね。ミカさん、言いにくいんですが…」
グビグビ。
急に音が聞こえてきた方を向くと、意識を取り戻したのか、びーちゃんが缶コーヒーを一気飲みしていた。
「ふうー、なによこれ? ブラックじゃない」
一応聞いた時に、その商品を指差してたよ?
でも意識なかったのかもしれない。
すごい呆然としてたし、なんか慌ててたから。
そしてびーちゃんは意を決したかのように、わたしを睨み言った。
「あんた、このままじゃ死ぬわよ!」
その言葉を聞いたやっくんが、うんうんとうなずいている。
こうして、わたしは厄貧コンビに最低な宣言をされた。




