恐ろしい事実
空中で行われているソーちゃんとソフィアさんの格闘を止められもしないので、わたしは椅子に座り丸テーブルを挟んで対面にいるユキと向き合う。
『ママって人間じゃなかったんだね〜。ずっと若い姿のままだから近所じゃ美魔女とか言われてたけど、納得したよ〜』
ユキが空中を眺めながら呑気な声を上げる。
「その美魔女なママさん、ボコボコにされてるけど……」
前宙して踵落としを喰らわしたソーちゃんが、何故か落ちている途中のソフィアさんより先に下に現れ、そのまま前宙踵落としを三連続で当てるという不思議な現象を2人で見守る。
(あっ、地面に落ちた)
『まあ人間じゃないんだし、ちょっとやそっとで死なないんならいいんじゃないの〜?』
「うつ伏せでピクピクしてるけど……」
というか『人類じゃない』=『頑丈』みたいな考え方おかしくないかな?
ソーちゃんも「いい運動になったわ」とか言って額の拭う素振りしてるけど、汗一つ掻いてないよね?
うつ伏せ状態から立ち上がったソフィアさんが「そ、創造神様、お、お強くなられましたね……」と声を出す。
膝ガクガクしてるけど大丈夫かな?
喉にもダメージきてない?
目の焦点も合ってないじゃん。
あ、倒れた。
ダメだ、これ。
いつの間にか、わたしの隣に立っているソーちゃんの方へ行こうとしていたのか、近くまで寄って来ていたソフィアさんが気を失う瞬間に立ち上がってユキと2人で支える。
『おっ、この身体でもママの身体は持てたよ〜』
ケーキは食べれなかったのに女神の身体は持てるんだ? やっぱり人間じゃないとかユキがハーフだからとかが関係あるのかな?
まあそれは置いといて、ソフィアさんもソーちゃんのことを『創造神様』と呼んでいたし、途中からは戯れ合いだったんだろう。
何もここまでダメージが蓄積するほどケンカ? しなくてもいいとは思うけど、わたし達がユキを殺害したという誤解が解けていたらいいな。
ソフィアさん庭に仰向けで寝かせようとした瞬間、彼女が目を覚まし、勢いよく顔を向けられる。
そして、そのまま視線を投げられること数秒。
顔が近い。
沈黙が気まずい。
ジッと見ないで。
「まあ、まあまあまあ! この魂……ということは……創造神様、やっとご友人を見つけられたんですね!」
はい?
何の話? とか思ってソーちゃんの方を見ると、ユキ(霊体?)の頭を片手で掴み、立たした肉体に飛びながら戻してる最中だった。
植えるな、稲じゃないんだから。
その姿に少し引いていると、スミレさんが「お待たせしました〜」と言って現れた。
ダ女神はキョロキョロと周りを2度3度と眺めると「えっと、状況は?」と言ってきたけど、それはこっちが聞きたい。
(あっ……)
そして、わたしは恐ろしい事実に気付いてしまった。
ここ、うち以外に人間おらんやん。