TS転生したけど、子供いた
ここはどこだ? 俺は……確か会社帰りにトラックに轢かれて……うん? 何か声が聞こえるな。
朦朧とした意識の中、真っ白な空間に倒れながら、耳を澄ます。
これは、女性と老人の声だろうか?
「だからあ、わたしはもういいって言ってんじゃん! もう疲れたの!」
「しかし、お主は死んだ訳でもないし、元には戻れるんだぞ?」
「しつこいジジイだな! もういいんだってば! あ、そこに丁度いいの寝転がってんじゃん。わたしの代わりにアレ戻せば?」
「はあ〜、お主がそう言うなら、もう何も言うまい」
女性が言ったアレとは俺の事だろうか? そんなことを考えていると、お爺さんが近付いて来る。
「おい、お主は生きたいか?」
「え? そりゃあ死にたくはないですよ」
「ならばよい。その願い叶えてやろう」
お爺さんがそう言って手をかざすと、白かった空間は光に包まれ、俺は思わず瞼を閉じた。
「え? ちょっ、ま、眩しい!」
そう叫び、光が落ち着いてから再び瞼を開くと、俺は知らない部屋の中で布団に入って寝ていた。
少し凝り固まった身体を解すように伸びをし、声を漏らす。
「う〜ん」
なんだろう? 今、聞こえてきた甲高い声は? まるで女性みたいだ。
「ふあ〜あ」
(え? あれ? アクビも俺の声じゃない!? なんか身体もいつもと違う様な?)
頭を下げて身体を見てみると、胸には本来は無い筈である2つの実が付いていた。
(大きいな……いや、違う。そんな場合じゃない! もしかして俺はトラックに轢かれた時に死んだのか? さっきの会話を思い出してみると、確かに自分の肉体に戻すとは言っていなかったが……)
「いや、せめて男の身体にしろよ!」
怒りに任せて叫んだ時、俺とは少し距離を取ったところにいたらしき小さな身体がビクッ! と動くのが見えた。
視線をやると、2〜3歳くらいの女の子が、こちらの様子を不安気に窺っている。
6畳くらいの狭いアパートらしき建物の中に居るのは、その子と俺の2人だけ。
これはもしかして、というか……そういう事なんだろう。
「女になった上に、子供いた……」