表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/96

-91-

「ふ、ふふ……真に人類の成長を、進化を阻んでいたのは僕だった、ということか……」


 身体を大きく横切る傷を受け地面に横たわるダアトが、そっと独白する。


「……少なくとも、お前が人類の進化を導いてくれていたから、俺たちはここまで豊かになれた。それだけは感謝している」


「僕のやってきたことも、無駄じゃなかったわけだ……優人くん、人類がいま手にしている力は切っ掛けに過ぎない」


 致命傷の影響か、身体が薄く透けてきているにも関わらず、ダアトは晴れやかな表情で言葉を紡ぐ。

 それを、優人が静かに聞いていた。


「それをどう使っていくかは、君たち次第だ。どうか、更なる高みへと至れることを……」


「ああ、あとは任せろ」


 その言葉に満足したかのように微笑むと、ダアトの姿は完全に霧散した。


「……終わった、の……?」


「そう、なんやないかな……」


 静まり返った広間に、木乃香達の声が響く。


「それじゃあ、あとはピラーのコアを破壊すれば!」


「ピラー攻略完了、という事ですね!」


 ダアトが居なくなっても、アビスが出てくる気配はない。

 明るい(・・・)視界で喜び合う木乃香達を見ながら、優人は笑みを浮かべる。


「いや、待てよ…………3人とも、この広場ってこんなに明るかった(・・・・・)っけ?」


「え……あ、そう言えば」


「確かに明るなってる気ぃする」


 優人の抱いた違和感が伝播する。

 ふと、視線を移した麻衣の表情が凍り付いた。


「に、兄さん……コアが!」


「なに?!」


 4人が気付いた事に反応するように、ズン!と重い音が響き渡り、周囲の黒水晶が鳴動し始める。


「な、何が起こってるの?!」


「ほないな事より、早うここから逃げな!下手したら、崩れるで!」


 木乃香の言葉に弾かれるように、慌ててCADを操作して出口を目指し始める。

 優人も3人に続いて出口を目指すが、唐突に身体が重くなる。

 視界が歪みはじめ、重い身体が熱を帯び始めた。


「一体何が起こってるんや?」


 遠ざかっていく広間を背にしながら、言い知れない不安が木乃香の胸をざわつかせた。

 その後ろで、優人が遅れている事に気付かずに。





 優人たちがダアトと戦闘を続けていた頃、ピラーの外でも激しい戦闘が続けられていた。

 紅と翡翠が空に入り混じり、装者達の悲鳴と怒号が響き渡っていた。


「攻略隊はまだなのか!?そろそろ戦線が崩壊するぞ!」


「活動限界の者は下がれ!少しでも次に繋げるんだ!」


「くそ!結晶化が……」


「もう、こうなったら……」


 装者達の一部が、悲壮な覚悟を決め始めた時だった。

 ふと、それまで乱射されていた紅がピタリと止まる。

 全てのアビスが、電源を急に抜き去られたかのようにその動きを止めていた。


「こ、れは……」


「や、やったのか……?」


 恐る恐る動きを見せないアビスを突くが、なんの反応も返さない。

 そんな反応は、今まで無かった事だ。


「やったんだ……攻略隊がやったんだ!」


 誰からともなく叫び声が上がり、それが広がっていく。

 長い戦いだった、苦しい戦いだった。

 それを乗り越えたという感覚が、装者たちを無性に叫ばせた。


「戦争が終わる!もう、アビスに怯えずに済む!」


 慕う上官を、入ったばかりだった後輩を、無数の戦友を見送ってきた装者たちが涙を流す。


「これで、私たちの役目も…………待て、ピラーが!」


 ふと、一人の装者がピラーの変化に気付いた。

 突き上げるような衝撃が伝わってきたかと思うと、空高くそびえ立っていたピラーが頂上から崩れ始めた。


「いや……崩れているんじゃない、あれは……形を変えているのか……?」


 そう呟いた装者の傍に居たアビスが、突如動き出した。


「こいつ!」


 咄嗟にブレードを構えたが、そんな装者には目もくれず形を変えるピラーへ一直線に向かっていく。

 それは、周囲で動きを止めていたアビス全てに言えることだった。

 今までであれば、装者が近くに居れば優先的に狙っていたアビスが、引き寄せられるかのようにピラーへと向かっていく。


「あ、あれは!」


 形を変えるピラーに周囲が呆然とする中、飛び出した3つ(・・)の光を部隊長が捉えた。


「お前たち、無事だったか!……いや、一人足りないようだが……?」


「え?!」


「うそ……兄さんがいません!」


 優人がいない事に気付いた麻衣たちが困惑の声を上げる後ろで、完全に姿を変えたピラーが轟音を立てながらその姿を見せた。


「なんて……大きいの……」


 絶望に染まった呟きが聞こえる。

 姿を変えたピラーは、大きな、とてつもなく大きな蛇の形をとっていた。

 変身が完了したことを示すように、両目に当たる部分に紅い光が宿り、身体の節々に広がっていく。


「ピラー攻略は、失敗していたのか……」


「いいえ、大元は優人が!」


「じゃあ、あれは何なんだ!」


 そう言って部隊長が指差した先では、首をたわませた蛇が産声を上げるかのように咆哮を上げていた。


「あ、あんなのとどうやって戦えばいいんだ……」


 要塞型がちっぽけに思える大きさは、それだけで装者たちの戦意を挫いた。

 ましてや、やっと戦闘が終わったと思ったところでの出現だったせいか、その絶望感は形容し難いものだった。


「━━ォオオオオオオォォォオオォオオォォオオオオオ!!」


 再び咆哮を上げた蛇は、大きく口を開くと紅い光を収束させ始める。


「まさか、この方向は!」


 蛇の向く方向、その先には装者たちの帰るべき場所、新東京市があった。


感想、ご意見、ポイント評価頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ