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「はああああぁぁああぁッ!!」
感情の爆発と呼応するように、翡翠の光が広がる。
「これはッ!……ふ、ふふ、ふふふふ、やはり僕の考えに間違いは無かった!」
先ほどよりも激しい優人の剣戟を捌きながら、ダアトは歓喜の声を上げる。
ダアトの目には、あふれ出る晶力が加速度的に優人の存在を進化させていくのが見えていた。
本来であれば、急激な変化は結晶化症候群を引き起こし、あっという間に砕けてしまう。
それが一般的な装者であれば、だ。
「やはり、君の能力は素晴らしい!今までだったら、この時点で全て台無しだった」
「何をごちゃごちゃと!」
「関心しているんだよ」
途切れることのない猛攻に、ダアトの身体へ傷が増えていく。
しかし、それに構うことなくむしろ嬉々として優人とブレードをぶつける。
「痛みを感じたのも、血を流したのも、存在の危機を感じたのも初めてだ。僕にそんな感覚を抱かせた君の存在に、柄にもないけど興奮が隠せないよッ!」
ブレードを振るうと同時に、幾条もの光線が放たれる。
「今さらそんな攻撃が効くか!」
溢れる晶力で強固になったシールドが、優人を狙った光線を簡単に弾く。
「お前が、アビスを作り出さなければ!父さんや母さん、紅嶺崎さんが死ぬ必要は無かったんだ!」
「ぐ、う……!」
満身の力を込めて叩きつけられたブレードによって、吹き飛ばされたダアトが壁に叩きつけられる。
「ふふ、僕がアビスを作り出さなければ、待っているのは緩やかな滅亡だよ?それでも、君は僕が間違っていると、倒されるべき存在だと言うのかい?」
「━━当たり前だ」
「……ふっ、ふふふ。くくくははははははは!」
優人が答えると、堪え切れないとばかりに左手で顔を押さえつつ、ダアトは哄笑する。
「僕が居なくなったら、誰が人類を導く?!君たち人類は、導かれなければ何も出来ない存在じゃないか!」
絶やされることのなかった微笑が消え、現れたのは理解されぬ理念を抱えた存在の叫びだった。
「別に人類が憎いとかそんな事はない。むしろ大好きさ!だってそうだろう?僕は、君たちの祖先、そのまた祖先の、一番始まりから見てきたのだから」
「お前……」
ダアトの叫びに、優人の手が止まる。
「愛着だってあるさ!だから、上手く成長できるように、進化出来るように手助けしてきた。それでも!このままだと、全部が台無しになってしまうんだ」
その未来を見ているのだろう、ダアトの瞳が中空を映す。
「ギリギリまで粘ったさ……それでも、この方法が一番良かったんだ」
「……それこそ、ふざけるな、だ」
「まだ何かあるのかい?」
再び微笑の仮面を被ったダアトが聞き返す。
「今の言葉で、お前が何を考えていたのかは分かった。悪意を持ってこんな状況を作り出した訳じゃないってことも、納得するかは別として理解した。その上でもう一度言わせてもらうぞ━━━━ふざけるな!」
「な、にを……」
静かな声が、ダアトを叩く。
その言葉に、微笑の仮面が揺らいだ。
「俺たちがいつそれを望んだ。お前が何を見たかは分からない。それでも、一つはっきりと言えるのは、この状況はお前の勝手な押し付けじゃないか!」
「……黙れ……」
ダアトが声を震わせた。
被られていた微笑の仮面はもはやなく、苦悩と混乱が浮かんでいた。
「君たち人類だって同じだろう。子は親に導かれ、成長していくものだ。それを勝手な押し付けと言うのか!」
「それこそ間違いだ。確かに親が子供を導くけど、全てを決めたりはしない。もし全てを決めてしまえば━━子どもは親の操り人形になるじゃないか!」
「ッ!」
優人の言葉に、ダアトの表情が凍り付く。
「操り人形……だって?」
「そうだ!」
「は、ははは……そんな、まさか……」
動揺を隠せないダアトの姿を真っすぐ見つめながら、優人はブレードを担ぐように構える。
「お前にその自覚が無かったとしてもな、俺たちからしたらそうなんだよ。それとな━━」
一気に加速し、崩れた黒水晶の前に佇むダアトに突撃する。
「━━あんまり、人類を見くびるな」
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