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「いくぞッ!!」


 気合の声と共に、両手の突撃銃を撃ちながら優人が飛び出す。

 襲い掛かる弾幕を、ダアトは左手から作り出した紅いシールドで防ぎながら、右手で光線を放ってくる。


「そんな攻撃が効くとでも思っているのかい?」


「だったら……これならどうだ!」


 ランダムな機動でダアトの光線を避けると、突撃銃を放り投げ背中にマウントされている長距離砲撃用大型ライフル“天羽々矢(あめのはばや)”を左右の2丁とも構える。

 僅かなチャージ時間が過ぎ、ロックオン表示が出た瞬間にトリガー。

 本来は長距離を砲撃するための圧倒的なエネルギーが、目前のダアトを襲う。


「おっと、それはこれだけだと心許ないな」


 そう言ってダアトが両手を突きだすと、1枚だけだったシールドが5枚に増える。

 シールドが張られるのと着弾はほぼ同時。

 パリンッという音を立てながらシールドが割れていくが、ダアトの表情に焦りはない。


「うんうん、やっぱり彼女は優秀だね。僕が渡したデータでここまでの物を作るんだから」


 最後のシールドに砲撃が喰いついた瞬間、いとも簡単にソレは受け流された。

 砲撃を受け流されたことよりも、ダアトが呟いた言葉が優人に違和感を与える。


「……お前が渡したデータ?」


「うん、そうだよ…………あ、そうか。人類の間では、彼女が全てを開発したって事になっているんだっけ?」


 舞台俳優のように両手を広げながら、ダアトが言葉を続ける。


「君たちがアビスに対抗するために作り出したと言われているその武器、それは本当に君たちが作り出したものなのかな?」


「そんな……まさか……ッ!」


「ご明察。目の付け所は良かったんだけど、あまりにも開発が遅いから僕が助言したのさ」


 なんでもない事のように告げられた事実は、優人たちへ衝撃を与えるには十分すぎた。


「1から10まで教えたわけじゃないけど、それでも僕が伝えた技術である事には間違いないよ」


「何だって、そんなことを……」


 マッチポンプとも言えるダアトの行動に、疑問が脳裏を埋め尽くす。


「何故って、さっきから言っているじゃないか。人類の進化を導くため、だって」


 不思議そうに、本当に不思議そうにダアトが告げる。

 その瞬間、優人は改めて理解した。

 目の前の存在は言葉こそ通じるものの、その考えは、理念は、到底理解出来ないものであるという事に。


「俺たちを弄んでいるのか?」


「それこそ心外だなあ、これでも真剣に人類を進化させようとしているのに。アビスはあくまで、それに必要だってだけなんだよ」


「もっと他に、方法があったんじゃないのか?!」


 叫びながら、もはや重りでしかない“天羽々矢(あめのはばや)”を投棄し、残された晶力ブレードを展開して斬りかかる。


「これが一番効率が良かったんだよ」


 そう返しながらダアトもブレードを作り出し、優人の斬撃を受け止める。


「ふざけるな!」


 ブレードを握る手に力が籠る。


「お前のその勝手な考えの所為でどれだけの人が死んだと思ってる?!」


「それは必要な犠牲だったんだよ。進化には痛みが伴うものさ」


「だとしても!それが、犠牲になった人たちを斬り捨てていい理由になるもんか!」


 互いの主張をぶつけるように、激しい斬撃の応酬が繰り広げられる。


「君が、両親や育ての親といった存在を喪っている事は知っているけど、そんなこと(・・・・・)よりもっと大局を見てくれよ」


 ダアトの言葉と共にブレードが大きく打ち合わせられ、二人の間に距離が開いた。


「そんなこと……?」


「ん、今度はどうしたんだい?」


 俯いたままブレードを構えない優人の姿に、出来の悪い生徒を見るような視線をダアトが向ける。


「ああ、そうか。今まで俺は怒ってると思っていたけど……本当にキレると、意外に冷静になれるんだな」


 ぶつぶつと俯いたまま発せられる言葉は、ダアトに伝わることはないものの、その雰囲気が変わっていくのは感じられた。


「町のこととか、人類のこととか、色々と考えてたけど……ここからは私情一色だ」


 ブレードを握り直し、ダアトを睨みつける。


「お前は━━━━絶対に許さない」


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