表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/96

-87-

「…………ふざ、けんな」


「ん、なんだい?」


 小さな呟きが、薄暗い空間に響いた。


「ふざけんな、って言ったんだ!」


 怒りの籠った声が、ダアトに叩きつけられた。


「何でそんなに怒鳴るんだい?君は人類で初めて、次の次元へ進化する事になるんだよ、もっと喜んだら?」


 無自覚なダアトの言葉が、優人の荒れた胸中を逆撫でする。


「お前の……お前のそんな身勝手な目的の為に、父さんや母さん、紅嶺崎さんが死んだんだぞ?!」


「だから、それは仕方のない犠牲で……」


「仕方ない訳があるかッ!…………お前は、紅嶺崎さんたちの仇だ。ここで……倒すッ!」


 咆哮し、大刀を構える。

 木乃香たちもそれに続くように、各々の武装を構えた。


「全く、聞き分けの無い子供みたいな事を言うんだね。一応、言っておくけど、君たちに僕は倒せないよ……ああ、勘違いしないで欲しいんだけど、君たちの実力が劣っているとかそんな事じゃないよ」


 殺気を、武装を向けられているにも関わらず、ダアトの表情は変わらないどころか、哀れなものを見るような視線を優人たちに向けていた。


「僕は、君たちにはこうして姿を見せているけど、本来は人類の進化を促す概念の存在なんだ。つまり、実体なんてものは持ってないんだよ。この意味、分かるだろう?」


「そんなこと……素直に聞くとでも思っているのか!」


 踏み込んだ優人と木乃香が、タイミングを合わせて刀と薙刀を振るう。

 ダアトはそれを眺めるばかりで、防御の姿勢すら見せなかった。

 振り抜かれた刃が、ダアトの胴と袈裟に一筋の線を作る。


「なッ?!」


 鮮血が飛び散るかと思われたが、その考えは手元に伝わる霞を斬ったかのような感覚に否定された。


「だから言ったじゃないか、君たちに……いや、人類に僕は倒せないよ」


 陽炎のように斬られた箇所が揺らめくと、寄り合わさって無傷なダアトが姿を見せる。


「そう言われたからって……諦められるかあぁぁッッ!!」


 再びの斬撃。

 その合間を縫うように、朱夏の連結刃が、麻衣の銃撃がダアトの身体を貫く。


「だから……まあ、いいさ。少しの間くらい好きにするといい」


 顔を両断されているにも関わらず聞こえるダアトの言葉を振り払うように、優人たちの攻撃が苛烈さを増す。

 揺らめいて霞のような身体を、その一片も残さないという意思で攻撃を続けた。

 そんな状態が数分続き、疲労が溜まってきた優人たちの手が止まる。


「いい加減、気は済んだかい?」


 その間にも、散り散りになったダアトが集まり、先刻と変わらない姿を見せた。


「くそッ!麻衣、朱夏、木乃香、もう一度だ!」


 優人の言葉に、3人は疲労を訴える身体に活を入れて武装を構える。


「うーん、無駄だって言ってるんだけどなぁ。君には期待しているんだけどね」


 攻撃されながら、ぼやき声をあげるダアト。

 その間にも、ダアトの身体には優人たちの攻撃が叩きつけられていた。

 全く手ごたえの無い敵、いつまで続くか分からない戦闘に、木乃香たちの疲労はピークに達しようとしていた。

 そんな中で優人だけが、何かを求めるようにダアトへの攻撃を続けていた。


(もう少し……あともう少しで、何かに届きそうな気が……)


「あまり無理やりっていうのは良くないと思っていたんだけど、君たちには十分受け入れる時間を与えたから、そろそろ良いよね?」


 そう言うと、ダアトの投げやりだった態度が一変する。


「ここからは、僕の時間だよ」


 そう言って突き出された指先に、膨大なエネルギーが収束し始めた時だった。


「届いたッ!」


「な、にッ……!」


 攻撃を続けていた優人の一閃が、ダアトの頬に一筋の斬り傷を作った。


感想、ご意見、ポイント評価頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ