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「そもそも、次元的、つまりは魂の位階を上げるのは簡単な事じゃない。だから、僕は人類を選別することにしたんだ。方法は簡単……あるものを世界にばら撒いた」


 考える時間を与えるかのように、ダアトが言葉を切った。

 その思惑通りか、ダアトが世界にばら撒いたものの正体に気付く。


「お察しの通り、それが晶気だよ」


 優人たちの脳裏に、何度もテレビで放送された“始まりの夜”の光景が浮かんだ。


「晶気は元々、アインから生じたアイン・ソフ・オウルの一部……と言っても分からないか、要は人類が持っていなかった不思議パワーって事だよ。全てはアインより生まれ、アインに近しいほど魂の位階が高いとされているんだ。そこに至るためにちょっと強引だけど、アインの力の一部である晶気を人類に取り込ませることで、強制的にその魂の位階を一つ上げた」


 優人たちが理解出来るようにか、ゆっくりと丁寧に話を続けるダアト。

 ここが教室であれば専門的な授業で済んだのだが、生憎と敵陣の奥深くだ。

 いつアビスに襲撃されるか分からないため、優人たちは話を聞きながらも警戒を怠ることが出来なかった。


「そして、魂の位階を更に上げるためには更に晶気を取り込む必要があるんだけど、ただ単純に取り込んだだけでは人類の身は耐えられない。君たちも見たことはあるんじゃないかな、人の身体が結晶化する現象を」


 ダアトの言った現象は、結晶化症候群という名前で人類には知られていた。


「あれは、体内の晶気を受け止めきれずになってしまう現象でね、単純に晶気を取り込んだだけではああ(・・)なってしまう。それを乗り越えるのに必要だったのが、君たち人類が強く持っている意思の力だ。動物も植物も意思を持っているが、人間はそれが顕著だ。その強い意思の力で晶気に適応することで、人類の魂は次の位階へ昇華する。それが、君らのように能力を持った者たちだよ」


 そう言って、優人と木乃香を指さす。

 ダアトの言う通り、優人と木乃香はSDAという能力を発現している。

 SDAの発現は、大量の晶気を取り込んだ装者が何らかの切っ掛けで感情を爆発させることが条件だと考えられていた。


「ただ、意思の力と言っても普通の生活の中でそれを高められる者はとても限られている。では、どんな時なら意思の力を高めやすいか?」


 ダアトが人類にアビスを差し向けていることから、その答えは一つだった。


「それは、生き残りをかけた生存戦争の時だよ。最も根源的な生への執着を刺激することで、とても効率的に魂の位階を上げることが出来た。その分、居なくなったのも多いけど、進化に痛みは付きものだからね」


 悪びれもせずに言い放つダアト。

 ここにきて優人たちは、目の前の存在にとって自分の目的以外の事はどうでも良い事なのだと理解させられた。


「まあ……やりすぎて、もう少しで頂へ至りそうだったのを、居なくしちゃったこともあったけど……その教訓を生かしてここまでこれた」


 そう言ってダアトは、優人へと意味あり気な視線を向けた。


「あとは、このピラーのコアを取り込んで、君がその頂へ至るだけだ」


 それも束の間、舞台俳優の様に両手を広げたダアトは、紅いスポットライトに照らされながら、そうすることが当然といった口調で、優人に向かって言い放った。


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