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「ダアト……?」
「そう。直接会うのは初めてだね、ティファレント……いや、君は僕が名前を呼ぶのに値する。上坂優人くん」
ポカンと、自身を見つめる優人たちの姿にダアトは愉快そうな笑みを浮かべる。
「なんで、俺の名前を……」
「そりゃあ、ずっと見てきたからね。君が産まれる時、成長する過程、両親を亡くした時、学園での生活、その全てを僕は知っているよ。まあ、君だけではないのだけどね」
静かにそう言いながら、ダアトは優人たちへと歩を進める。
散歩をするかのような、気負う事のない軽やかな雰囲気だ。
対照的に、優人たちは得体の知れない存在を目の前に、身体を緊張に固くさせていた。
「あんたの目的は何なん?」
普段と違い、緊張の色を混ぜた声色で木乃香が言葉を発した。
「君は……ああ、最近ティファレントに目覚めた娘だね。さっきも言ったけど、人類を導くためだよ」
「それじゃあ分からんさかい、聞いてるんやけど?」
「ああ、そうだったのか。じゃあ、もっと簡単に言うけど、君たちが此処に来るのを待っていたんだよ」
そんなダアトの言葉に、優人たちは内心、不信感を覚えた。
優人たちがいる場所は、全人類の敵であるアビスの本拠地だからだ。
待っていた、という言葉からそれなりの時間をこの場所で過ごしている筈だが、アビスに襲われた様子もない。
そもそも、武装すらしていないようにも見える。
そんな存在が、自分たちに友好的であると信じられるだろうか?
優人たちの考えは、否だった。
ならば、その正体で有り得そうなのは━━
(……アビスの親玉か?)
そんな胸中を察したのか、ダアトが苦笑を浮かべる。
「……そんなに不審そうにしなくてもいいじゃないか」
ダアトとしても、こんな状況では不信感を持たれるであろうことは理解していた。
理解はしていても、それでわざわざ予定を変えるような考えは持っていなかったが。
「とりあえず、落ち着いて話を聞いてもらうために君たちの誤解を解いておこうかな」
優人たちから少し離れた場所、近接武器でも一歩の踏み込みが必要な距離で歩みを止めたダアトが、警戒を解こうとして優しい口調で話す。
「恐らく、君たちは僕の事をアビスの司令か何かと思っているのだろうけど……」
「違うのか?」
「完全に不正解……とは言えないが、正解でもない。確かに、アビスは僕が作り出し君たちの都市へ差し向けたが、僕にとってアビスは部下とかそんな物じゃなく、ただの目的を果たすための道具なんだよ」
警戒は解かないものの、静かに耳を傾ける姿にダアトは満足すると、言葉を続ける。
「それで、その目的だけど……人類を導く、つまり次のステージへ進化させることなんだよ」
何でもないことのように告げられた突拍子もないダアトの目的に、優人たちが動揺する。
そんな姿を見つつも、関係ないとばかりにダアトは言葉を続ける。
「そもそも、人類は過去何度も進化のタイミングを与えられていながら、その度にそれを無為にしてきた」
穏やかだったダアトの声色に、苛立ちが僅かに混ざる。
「僕は、人類創生からその進化を導いてきた。進化を続けなければ、人類は停滞し、待っているのは自然の淘汰による滅亡だ」
言葉を失う優人たちを余所に、言葉に力が籠り始める。
「今までの進化は遺伝的や技術的な進化ばかりだった。いや、むしろそこに進化の余白があった。でも、今は違う。君たち人類は、次元的に進化を迫られる時期に来ているんだよ」
そう言ったダアトは、麻衣たちの姿が見えていないかの様に優人へ視線を向ける。
視線を向けられた優人は、目の前の存在が何を言っているのか、何故自分が見られているのか分からず、疑問を抱くばかりだった。
「何を言っているか分からないって顔をしているね。まあ、それは仕方のないことだ。とりあえず、分かりやすく一番初めから説明しようか」
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