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『カウント5、4、3、2、1━━━━発射ッ!!』


「発射ッ!」


 聞こえてきた隊長の声に、間髪入れずトリガーを引く。

 一瞬の空白の後に、重い反動が麻衣の全身を襲った。

 脚部装甲で足元が固定されていたため後ずさることが出来ず、上半身が折れてしまいそうだったが、背中や両肩にすぐさま力が加わった。

 見ると、優人や朱夏、木乃香が、反動に負けそうになっていた麻衣を支えていた。


「皆さん……ありがとうございます」


「いいって!これは麻衣にしか出来ないことだからね!」


 支える手を離さないまま、朱夏が明るく答える。

 優人や木乃香も、頷きそれに同意する。


 放たれた翡翠の砲撃は、狙い過たずアビスの集団へ着弾するとその中心に小さいながらも空隙を作り出すことに成功した。


『総員突撃ィッ!!空いた空間に飛び込み、押し広げろ!!』


 通信から隊長の叫びが聞こえ、頭上にいた装者たちが一斉に麻衣の開けた空隙に殺到していく。

 アビス達も、このままでは自分たちの本拠地に侵攻されるというのが分かっているのか、すぐさま空いた穴を塞ごうと動くが、装者達の動きの方が速かった。


『させるか!』


 誰かの声が通信に響くと同時に、穴に飛び込んだ翡翠の光がアビス達の黒を蹂躙する。

 そんな光景を、優人たちは少し後方から見ていた。

 すでに地上からは飛び上がっている。

 優人たちの役割はピラーの攻略。

 そこへ至るまでの道筋を作るのは、今戦っている装者達の役割だった。


「なんか、やっぱし落ち着かんね」


「そうだな。役割だってのは分かっているけど、みんなが戦ってるのに後ろで待っているだけってのは、歯痒いものがあるな」


「そうですね……でも、その分ピラーに入ったら頑張りましょう」


「そうだな」


 そんな会話を交わす間にも、精鋭達が道を切り開いていく。

 無数の剣劇が近づくアビスを切り裂き、並ぶ銃撃で更に穴が広げられていった。

 ピラーからは未だにアビスが出てきているが、それを物ともせずに進んでいく。

 小さかった穴は広げられ、ついに優人たちとピラーが一直線に繋がる。


『よし、道は開けた!攻略部隊━━行けッ!!』


「はい!」


 脇目もふらずに、広げられた穴を突き進んでいく。

 優人たちが進むのを防ごうとアビス達が動くが、近づく傍から周囲の装者達によって撃墜されていく。


『退路は任せろ……頼んだぞ、お前たち!』


 隊長の力強い後押しを受けながら、アビスの集団を抜ける。


「集団を抜けた!あとは……ッ!」


「させないよ!」


 集団から抜けたとはいえ、ピラーからは次々とアビスが排出されているため、新たに出てきたアビスが優人たちに襲い掛かる。

 それを、朱夏の連結刃が、麻衣の狙撃銃が、木乃香の薙刀が倒していく。

 優人も、3人に負けじと両手に持った突撃銃と刀で応戦する。


 その中で、突然の警告音が4人に新たな脅威の接近を伝えた。

見ると、ピラーから50近い数のアビスが出てくるところだった。


「おかわり、ってか……ここで足止めを食らっている時間はない。一気に決めるぞ!」


 優人の言葉に、返事を返しながら3人はそれぞれの武器を構える。


「麻衣、まずは先制攻撃だ!もう一度砲撃、行くぞ!」


「はい、兄さん!」


 優人は背部に懸架されていた長距離砲撃用大型ライフル“天羽々矢(あめのはばや)”を、麻衣は追加バレルを装着した狙撃銃を構える。


「朱夏と木乃香は撃ち漏らしを……木乃香、SDAいけるか?」


「もちろん!」


 力強く返答に一つ頷くと、トリガーへ指を掛ける。


「いくぞ……3、2、1、発射!」


 二条の光が、密集していたアビス達に突き刺さる。

 無数の結晶が砕け視界を塞ぐが、すぐに倒しきれなかったアビスが飛び出してきた。


「二人とも、頼んだぞ!」


「まっかせて!」


そう言って振るわれた朱夏の連結刃が、硬質な音を立てて伸びていく。

手元を巧みに操り、空を縦横無尽に駆け巡る刃が散開しようとしているアビスに喰らいついた。

時おり、反撃の紅い光線が朱夏に向かうが、翼から展開されたシールドピットによる鉄壁の護りを見せつけるだけだった。


「ごめん!ちょっと逃した!」


「問題あらへんよ━━いくで、SDA:思考加速ディープコンセントレーション!」


静かに告げられたその言葉と裏腹に、木乃香の機動は激しかった。

稲妻の様に、アビスの間を翡翠の光が駆け抜けたかと思うと、次の瞬間には両断されて砕けていた。

 あっという間に残されたアビスは倒され、優人たちを阻むものは何も居なくなる。


「行くぞ!」


 優人の声と共に4人は、眼前にそびえ立つ、人類が今まで到達したことのなかった場所に向かって、進んでいくのだった。


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