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室内を熱気が包む中、その光景を満足げに見つめながら隣の二三四博士へ場所を譲る。
「富士ピラー攻略計画、通称F計画の発令が決まったところで、私から諸君に伝える事がある」
二三四博士の言葉に、溢れる熱気はそのまま視線が集中する。
「現状、流石に消耗が激しいため諸君のCADの調整を第一に行う。これは開発・整備部門総出で行うため3日もあれば終了するだろう。また、現在開発中だった試作型第3世代CAD4機だが、完成の目途が立った。既に1機は完成し、先の対要塞型戦で運用されている。残りの3機だが、担当装者は後ほど発表となる」
博士の言葉に、装者達の視線は優人へ向けられた。正確には、優人が左腕に着けた黒いCADに向けて、だが。
先の戦闘で今までとは一線を画す性能を見せつけた第3世代CADの追加参戦発表に、室内の熱が更に上がる。
「全ての準備が整うまでの1週間、諸君はしっかりと英気を養ってほしい。私からは以上だ」
「それでは、本日は解散!別命あるまで待機せよ」
司令の言葉に、一斉に返礼した装者達が近くの人と熱く話しながら部屋を出ていく。それに続いて優人達も部屋を出ようとした時、優人の端末が振動しメッセージの受信を知らせた。
『後ほど、私の研究室に来てくれ。その時は必ず、麻衣くん、朱夏くん、木乃香くんを連れてくること』
メッセージは、今も司令と言葉を交わしている二三四博士からで、優人が視線を向けるとそれに気づいた博士が頷く。それに頷き返した優人は、3人に声を掛けると部屋を後にした。
「優人くん、良く来てくれた。麻衣くんたちも、楽にしてくれたまえ」
F計画発令から少しして、二三四博士の研究室に集まった優人たちは博士手ずからの歓迎を受けていた。
「いえ……それにしても、何かあったんですか?わざわざ俺たちを集めるなんて」
「なに、ちょっと発表には早いんだが、当事者たちくらいには伝えておこうと思ってね。少し待っていてくれ」
疑問を口にした優人へ、いたずらげな光を瞳に宿しながら部屋を出る博士。博士の姿が完全に見えなくなると、予想以上に大人しくしていた朱夏と木乃香が優人へ詰め寄った。
「ちょっと!君島博士に会いに行くなんて聞いてないよ?!」
「朱夏ちゃんの言う通りや!しかも、なんでウチ達の名前まで知ってるん?!」
そんな光景を、麻衣は遠巻きに少し疲れた表情を浮かべながら見ていた。
「待って待って!二人とも落ち着いてよ……俺だって、呼ばれたから連れてきただけで用件だって知らないんだから」
「じゃ、じゃあ、優人は何であんなに親しそうに博士と話してたの?知り合いだったの?!」
「俺がって言うか、俺と麻衣の保護者が知り合いだったんだよ」
「保護者?」
「紅嶺崎さんだよ」
優人の言葉に、朱夏がしまったと顔をしかめた。大切な人を亡くした時の辛さを知っているからこそ、優人が今も抱いているであろう悲しみを想像出来てしまった。
「ごめんね……無神経だった……」
「大丈夫だよ。折り合いは……まあ、つけられてるから」
朱夏と神妙な顔をしている木乃香の二人に、そう言って笑いかける優人。いつの間にか傍に来ていた麻衣も、優人の言葉に追随するように頷いていた。
「二人がそう言うなら……」
「そろそろいいかな?」
そんなやり取りをしていると、コンコンという音と共に3個のCADを持った博士が部屋の前に立っていた。
「も、もちろんです!」
朱夏が背筋を正しながら答える。そんな姿に、博士は苦笑いをしながら手にしていたCADをテーブルに置いた。3個のCADはそれぞれ微妙に意匠が違く、色も赤、緑、紫とカラフルだ。
「さあ、そんな離れた所に居ないで、座ってくれ。今日呼んだのは、君たちに関わりのある事だからね」
その言葉に、おずおずと席に着く朱夏と木乃香。優人と麻衣もそれに続いて席に着いた。
「さて、回りくどい事は嫌いな性質なので、早速本題に入るとしよう。君たちの前にあるCAD、これは先ほどの会議で言った試作型第3世代CADだ」
「え……もう完成しとったんですか?」
「ああ。と言っても、基本設定すらまだの出来立ても良いところだがね」
「それをどうして……?」
朱夏たちが疑問の声を上げる中、優人だけが博士の考えに思い至った。
「麻衣たちに任せるつもりですか……?」
「ふむ、流石に話が早いな。そうだ、君たちにこのCADを任せたいと考えている」
「え、えええ?!」
何てこと無いように発せられた内容に、朱夏の大きな驚きの声が室内に響いた。
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